運命の出会いは牢屋から〜搾って逃げて捕まって〜

南野うり

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 スカートを捲ろうとした看守の指が太腿を掠めた瞬間、女は艶めかしい声を上げた。
 この場に似つかわしくない甘ったるい声に、看守の手がピタリと止まる。
 その隙きをつき、女が看守にしがみついて強引に唇を奪った。

「?!」
「は、は、あ、熱いの……お腹が、んっ」

 白銅色はくどういろの目を見開く看守に、今度は深く口付ける。固まって動かない男の舌に舌を絡め、唾液を流し込む。彼がそれを飲み下したのを確認し、彼女は唇を離した。

「……虫の毒にやられたか」

 看守の言葉に、女は内心ほくそ笑む。虫のせいと思わせられれば、たった今飲まされた物が何かを悟られずに済むからだ。

「医者か薬師を呼んでくる。待っていろ」
「あっ」

 逃げられるかと焦った女だが、杞憂だった。立ち上がった看守は、牢を出ると鍵を閉め階段の方へ身体を向ける。いや、向けようとしたが出来なかった。
 見る見るうちに彼の頬は上気し、汗が滲み始める。

「ぐっ……どういう、事だ……感染、するのか?」

 力の抜けていく身体を支えるため牢の格子を握り締めるが、抵抗も虚しくズルズルと崩折れ、その場に膝をついてしまった。

「看守さんも、辛いの? はぁ、私も、なの……」

 女は、我ながら迫真の演技だと思った。彼女は格子の隙間から手を伸ばし、看守の男の不自然に盛り上がった中心部を撫で上げる。

「うっ、ぐ……やめろ」
「だって、我慢できないのっ……おねがい……」

 ファスナーのつまみ部分を細い指でつつくと、看守の分身がビクリと動き、勝手につまみが下がってきた。
 追い打ちをかけるように女が膨らみに頬を寄せ、布の上から赤い舌を這わせる。

「っあぁ……」

 更に質量を増した中身が、ついにファスナーを全開にさせ、ブルンッと飛び出す。
 背は高く、それなりに身体に厚みはあるものの看守にしては細身な男だが、出てきたものはなかなかに立派であった。
 女は水色の目を大きく見開く。一瞬にして顔を朱に染めた彼女は、ごくりと生唾を飲み込んだ。肩で切り揃えた薄茶の髪を耳にかけ、おずおずと舌を伸ばす。

「ンッ……は……」

 初めてではないが、慣れてもいない。経験の少なさを物語る舌使いだ。しかし、強制的に性的興奮が高まった状態の男は、そんなぎこちない愛撫にも簡単に反応し、声を漏らす。
 次から次に透明な液体が湧き出る先端の窪みに、女が舌先を押し付けた途端、白濁した悦楽の印が勢いよく噴射した。

「あ゛……ぐ、ぅ……っっ」

 低く呻きながら、男は幾度かに分けて精を吐き出す。口を開いていた女は、喉に叩きつけられた粘液にむせて咳き込んだ。口内が、青い匂いで満たされる。

「げほっ、ゴホッゴホッ……」
「っ……はっ……はぁ……大丈夫、か?」
「だいじょぶ……はぁ、でも、まだ全然だね……私も苦しいの……触って?」

 気遣う看守に、彼女の胸が僅かに甘く疼く。堪らず女は彼の手を取り、スカートの中へ導いた。

「ぁ……は……」

 男の指が触れたそこは、既に布の上からでもハッキリ分かるほどに熱い。彼女自身は発汗作用のある薬以外飲んでいないが、無愛想な看守の乱れる姿に、つい本当に感じてしまったのだ。
 今も、別に自分の身体を触らせる必要はないにも関わらず、我慢出来ずに男に触らせている。

「はぁ……ん、もっと……」


 女はそのまま格子越しに、看守が精魂尽き果て気を失うまで容赦なく搾り取った。
 横たわる看守の腰から鍵の束を取る。彼女は記憶を頼りに、鍵を選んで牢から出る事に成功した。

「……出し過ぎで死なないよね? 水くらい飲ませとくか」

 ピクリとも動かない男が流石に心配になった彼女は、奪還した自分の鞄から水筒を取り出し、少し考えてから自らの口に含む。そして眠る男の薄く開いた唇に、口付ける。
 水を流し込み、男の喉が動くのを確認した彼女は、飲み込みきれずに口の端から漏れた水をペロリと舐め取る。

「はぁ……それにしても、すっっごい相性良かったな……素敵だった……もう会う事もないでしょうけど」

 女は寂しげに目を細めて男の唇を指でなぞる。

「名残惜しいけど行かなきゃ。ごめんね? 看守さん……」
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