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獲物は反撃を開始する
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「敵に応戦もしたんだって? ……そんな危ない事して傷だらけになって……なんて馬鹿なの、君は……っ」
「き、傷は掠り傷だし、マスターと一緒に治癒してもらったから」
「そう言う問題じゃ無い、一歩間違えば死ぬかもしれなかったんだよ」
言われて思い出す。あの恐ろしい感覚を。死ぬかもしれなかった事では無い。人を殺めたかもしれない恐怖に身体が震え出したのだ。少年だったアルも、きっと怖かったに違い無い。
震える早苗に気付いたようで、抱き締める腕に力が込められる。暫くして腕の力が緩み顔を上げると顔を両手で挟まれ、また口付けられた。
彼はただ触れるだけの口付けを繰り返す。
「ん……なんで……こんな事……ちゅ、したくなるんだ……」
戸惑うように漏らす台詞の合間にも、角度を変えながら何度も何度も唇を重ね合わせた。
「……気持ち悪い、だけの……筈だったのに……」
彼は彼で何やら葛藤しているようだが、早苗の方こそ頭が真っ白だ。事態が全く把握出来ていない。
その内にアルは何も言わなくなり、徐々に口付けは深くなって行く。
「ん、ん……ふ……はぁ……」
割って入って来た舌に口内をくまなく舐められ、息が上がって来る。
頭が痺れ、お腹の奥がジンジンと熱を持ち始めた時だ。
コンコン、ガチャッ
ノックが聞こえてすぐ、返事を待たずに扉が開いた。
「うおっ!?」
「こらこら、アウ、ちゃんと返事が聞こえてから開けなきゃ~」
入って来たのはアウイン、それを窘めているのはミリウスだろう。
「って、やめねーのかよ!!」
アウインが突っ込む。女同士に見えるニ人が濃厚な口付けを交わす姿はあまりにも扇情的で、良からぬ気持ちになってしまいそうで困る。しかもあのアルを相手にだ。
早苗はアルの胸をぺしぺし叩いているが、離してくれない。見られて恥ずかしいのに、弱っている彼を強く拒絶する事も出来ず困惑する。
「アル君、そろそろ良いかな?」
ミリウスに言われ、アルはやっと顔を離した。最後にぺろっと唇を舐められる。物凄く恥ずかしい。
早苗が身体を起こすと、部屋に居たのはアウインとミリウスだけでは無かった。セレーナとサラも居たのだ。ニ人共顔を真っ赤に染め上げている。
四人もの見物人が居たらしい。今すぐ穴を掘って埋まりたい。早苗は本気でそう思った。
「サラちゃんがね、謝りたいんだって」
ミリウスに背中を押されて、男装したサラが前に出る。
「申し訳無い……!」
早苗はギョッとした。サラが、床に跪ひざまずいたのだ。
「サナエさん……女性とは気付かず肌に傷を作ってしまい……助けて頂いたのに、本当に……っ」
「い、いやそんなっ、土下座するほどじゃ……状況が状況だったんだから、仕方無いですよ。それに傷も大した事無いので」
笑って見せるが、サラは何かに怯えている様子で跪いたまま後ずさる。
サラの視線を辿り隣を見ると、アルと目が合い微笑みが返って来た。
「ん?」
綺麗なお姉さんに笑顔で小首を傾げられ、ドキドキしてしまう。だって美し過ぎるのだ。しかし何かがおかしい……
「アル君、女の子を怯えさせちゃいけないよ。それとも、誰か以外女の子に見えないのかな?」
「え、男装してるだけでサラさんは女性ですよね? マスターだって知らない訳が……」
多分アルがサラを睨んで居たであろう事は分かるのだ。だがミリウスの言葉の意味がよく分からない。
「うん、それはまたニ人の時にでも話すといいよ。取り敢えず移動しよう? アル君」
ミリウスがアルを呼ぶ。
「はい」
「アル君は、アウに抱っこされるのと僕に抱っこされるの、どっちが良い?」
「…………はい?」
「き、傷は掠り傷だし、マスターと一緒に治癒してもらったから」
「そう言う問題じゃ無い、一歩間違えば死ぬかもしれなかったんだよ」
言われて思い出す。あの恐ろしい感覚を。死ぬかもしれなかった事では無い。人を殺めたかもしれない恐怖に身体が震え出したのだ。少年だったアルも、きっと怖かったに違い無い。
震える早苗に気付いたようで、抱き締める腕に力が込められる。暫くして腕の力が緩み顔を上げると顔を両手で挟まれ、また口付けられた。
彼はただ触れるだけの口付けを繰り返す。
「ん……なんで……こんな事……ちゅ、したくなるんだ……」
戸惑うように漏らす台詞の合間にも、角度を変えながら何度も何度も唇を重ね合わせた。
「……気持ち悪い、だけの……筈だったのに……」
彼は彼で何やら葛藤しているようだが、早苗の方こそ頭が真っ白だ。事態が全く把握出来ていない。
その内にアルは何も言わなくなり、徐々に口付けは深くなって行く。
「ん、ん……ふ……はぁ……」
割って入って来た舌に口内をくまなく舐められ、息が上がって来る。
頭が痺れ、お腹の奥がジンジンと熱を持ち始めた時だ。
コンコン、ガチャッ
ノックが聞こえてすぐ、返事を待たずに扉が開いた。
「うおっ!?」
「こらこら、アウ、ちゃんと返事が聞こえてから開けなきゃ~」
入って来たのはアウイン、それを窘めているのはミリウスだろう。
「って、やめねーのかよ!!」
アウインが突っ込む。女同士に見えるニ人が濃厚な口付けを交わす姿はあまりにも扇情的で、良からぬ気持ちになってしまいそうで困る。しかもあのアルを相手にだ。
早苗はアルの胸をぺしぺし叩いているが、離してくれない。見られて恥ずかしいのに、弱っている彼を強く拒絶する事も出来ず困惑する。
「アル君、そろそろ良いかな?」
ミリウスに言われ、アルはやっと顔を離した。最後にぺろっと唇を舐められる。物凄く恥ずかしい。
早苗が身体を起こすと、部屋に居たのはアウインとミリウスだけでは無かった。セレーナとサラも居たのだ。ニ人共顔を真っ赤に染め上げている。
四人もの見物人が居たらしい。今すぐ穴を掘って埋まりたい。早苗は本気でそう思った。
「サラちゃんがね、謝りたいんだって」
ミリウスに背中を押されて、男装したサラが前に出る。
「申し訳無い……!」
早苗はギョッとした。サラが、床に跪ひざまずいたのだ。
「サナエさん……女性とは気付かず肌に傷を作ってしまい……助けて頂いたのに、本当に……っ」
「い、いやそんなっ、土下座するほどじゃ……状況が状況だったんだから、仕方無いですよ。それに傷も大した事無いので」
笑って見せるが、サラは何かに怯えている様子で跪いたまま後ずさる。
サラの視線を辿り隣を見ると、アルと目が合い微笑みが返って来た。
「ん?」
綺麗なお姉さんに笑顔で小首を傾げられ、ドキドキしてしまう。だって美し過ぎるのだ。しかし何かがおかしい……
「アル君、女の子を怯えさせちゃいけないよ。それとも、誰か以外女の子に見えないのかな?」
「え、男装してるだけでサラさんは女性ですよね? マスターだって知らない訳が……」
多分アルがサラを睨んで居たであろう事は分かるのだ。だがミリウスの言葉の意味がよく分からない。
「うん、それはまたニ人の時にでも話すといいよ。取り敢えず移動しよう? アル君」
ミリウスがアルを呼ぶ。
「はい」
「アル君は、アウに抱っこされるのと僕に抱っこされるの、どっちが良い?」
「…………はい?」
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