71 / 114
獲物は反撃を開始する
71
しおりを挟む
目の前に現れた下着は神々しく光を放っているように見える。実際は全くそんな事はないのだが。
下半身を覆う黒色の布は、パッと見は現代の下着とそう変わらないように思う。少し丈が長めのボクサーパンツに似ていた。ただ、ウエストはゴムでは無くボタンで留められている。早苗は恐る恐るボタンに手を掛けた。
「待って、流石に自分でやるから……」
「そ、そう?」
多少気恥ずかしさもあったので、アルの申し出に手を引く。少し残念な気もするが気のせいだろう。
「………………顔近い、見過ぎ」
「えっ? あ! あらら……ごめん、そんなつもりじゃ……」
どうやら床に膝をつきボタンを外そうとしていた体勢のままジーっと見ていたらしい。
「はぁ……お風呂場で脱ぐ。呼ぶから後で来て」
布を片手にアルは行ってしまった。大分呆れられたようだ。
「入って良いよ」
浴室から声が聞こえる。ドキドキしながら、早苗は磨り硝子の扉を開けた。アルは前に布を掛けて椅子に座っている。
布は掛けていても全裸だ。全裸待機してる!と早苗は脳内で喜んだ。
「わぁ、お背中流しま~す」
「わぁって何……」
彼は顔だけじゃなく、肉体的にもとても綺麗だと思う。絵を描けたなら、きっと是非デッサンでもさせて欲しいとお願いしただろう。
見とれている場合では無い。きちんと洗わなければと早苗は首を振った。
「頭と背中だけお願い。後は出来ると思うから」
「いやいや、洗うよ! 全身くまなく!」
「………………」
やはり、以前彼に全身洗われたのだから今度は自分も!と言う気持ちがあるようだ。
アルは半目になっている。諦めたようでそれ以上何も言わなくなった。
「まずは髪から洗うね」
「はいはい……」
石鹸を良く泡立てて髪を洗う。彼からは特に不快な臭いなど感じない。むしろ彼自身の体臭なのか何だか良い香りがする。しかし汚れているのは確かなようだ。泡がすぐに消えてしまう。
一度流してもう一度泡を付けて洗うと、今度は泡が消える事は無かった。
「痒い所はありませんか~?」
「え? あ~……前の生え際がちょっと」
日本人なら『大丈夫です』なんて言いそうだが、アルは正直に申し出てくれる。とても楽しい。
髪を洗い終えると今度は顔を洗う。長めの前髪を上に上げ、顔全体にくるくると撫でるように泡を広げる。彼は大人しく目を閉じてされるがままだ。
「お湯かけるね」
「うん」
上から湯を掛けて泡を流す。ぽたりぽたりと、金色の長い睫毛から雫が落ちる。頬に貼り付いた淡い金の髪、艶々と濡れ光る唇。美しい。早苗は思わず呟いた。
「て、天使……」
「ん? 何?」
言葉を発する為に薄く開く唇。彼女はその艶めく唇に吸い寄せられるように顔を近付け、自らの唇を重ね合わせた。
「……ん」
アルは微かに声を漏らしたが、抵抗する気は無いようだ。それ所か早苗の頬を濡れた両手で包み込み、積極的に口付けを深くして行く。以前キスを嫌がっていたのが嘘のようだ。
「……は……ん……」
「……ちゅ」
最後に触れるだけの口付けをして離れる。そして早苗の蕩けた顔を見て、クスリと笑うと囁いた。
「……身体も、洗ってくれる?」
下半身を覆う黒色の布は、パッと見は現代の下着とそう変わらないように思う。少し丈が長めのボクサーパンツに似ていた。ただ、ウエストはゴムでは無くボタンで留められている。早苗は恐る恐るボタンに手を掛けた。
「待って、流石に自分でやるから……」
「そ、そう?」
多少気恥ずかしさもあったので、アルの申し出に手を引く。少し残念な気もするが気のせいだろう。
「………………顔近い、見過ぎ」
「えっ? あ! あらら……ごめん、そんなつもりじゃ……」
どうやら床に膝をつきボタンを外そうとしていた体勢のままジーっと見ていたらしい。
「はぁ……お風呂場で脱ぐ。呼ぶから後で来て」
布を片手にアルは行ってしまった。大分呆れられたようだ。
「入って良いよ」
浴室から声が聞こえる。ドキドキしながら、早苗は磨り硝子の扉を開けた。アルは前に布を掛けて椅子に座っている。
布は掛けていても全裸だ。全裸待機してる!と早苗は脳内で喜んだ。
「わぁ、お背中流しま~す」
「わぁって何……」
彼は顔だけじゃなく、肉体的にもとても綺麗だと思う。絵を描けたなら、きっと是非デッサンでもさせて欲しいとお願いしただろう。
見とれている場合では無い。きちんと洗わなければと早苗は首を振った。
「頭と背中だけお願い。後は出来ると思うから」
「いやいや、洗うよ! 全身くまなく!」
「………………」
やはり、以前彼に全身洗われたのだから今度は自分も!と言う気持ちがあるようだ。
アルは半目になっている。諦めたようでそれ以上何も言わなくなった。
「まずは髪から洗うね」
「はいはい……」
石鹸を良く泡立てて髪を洗う。彼からは特に不快な臭いなど感じない。むしろ彼自身の体臭なのか何だか良い香りがする。しかし汚れているのは確かなようだ。泡がすぐに消えてしまう。
一度流してもう一度泡を付けて洗うと、今度は泡が消える事は無かった。
「痒い所はありませんか~?」
「え? あ~……前の生え際がちょっと」
日本人なら『大丈夫です』なんて言いそうだが、アルは正直に申し出てくれる。とても楽しい。
髪を洗い終えると今度は顔を洗う。長めの前髪を上に上げ、顔全体にくるくると撫でるように泡を広げる。彼は大人しく目を閉じてされるがままだ。
「お湯かけるね」
「うん」
上から湯を掛けて泡を流す。ぽたりぽたりと、金色の長い睫毛から雫が落ちる。頬に貼り付いた淡い金の髪、艶々と濡れ光る唇。美しい。早苗は思わず呟いた。
「て、天使……」
「ん? 何?」
言葉を発する為に薄く開く唇。彼女はその艶めく唇に吸い寄せられるように顔を近付け、自らの唇を重ね合わせた。
「……ん」
アルは微かに声を漏らしたが、抵抗する気は無いようだ。それ所か早苗の頬を濡れた両手で包み込み、積極的に口付けを深くして行く。以前キスを嫌がっていたのが嘘のようだ。
「……は……ん……」
「……ちゅ」
最後に触れるだけの口付けをして離れる。そして早苗の蕩けた顔を見て、クスリと笑うと囁いた。
「……身体も、洗ってくれる?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
111
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる