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君と心の奪還戦

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 ニ人はじっと見詰め合う。
 早苗を見詰めながら舌を伸ばすアルから、彼女も目を離す事が出来ないのだ。

「んっ、あっ」
「……ふっ、まだなんにもしてないよ」

 過敏な早苗の反応に、アルは楽しげに笑った。

「っうぅ……アルのいじわる! どえ……」
「……もー……かわいい……」

 『ドS! 性悪! 変態!』と続けようとした早苗だが、アルの様子を見て思わず止まる。アルは片腕で顔を隠しているのに、眉を下げ真っ赤になった表情を隠せていない。
 早苗を可愛いと言う彼の方が、まるで乙女のように可愛らしくモジモジしている。
 先ほどの変態的な行為をしていた彼と、本当に同一人物なのか疑うレベルである。

「…………あっ?! ひゃんっ」

 アルの反応にキュンキュンと胸をときめかせていた早苗は、反応が遅れてしまった。彼がまた口での愛撫を再開したのだ。

「ひっ、あっあっ、アルっ、やあっ!」

 アルの長い舌が早苗の中を出入りし、じゅぷじゅぷ音を立てて内壁を突き上げた。
 更に親指の腹で、硬く腫れた花芽を規則的な動きで刺激され、脳がビリビリと痺れる。早苗は腹の奥へ急速に熱が溜まって行くのを感じた。

「はっ、はぁっ……ンッ、ダメっイっちゃ、ああっ、あっ」

 早苗の内側がヒクヒクと軽い痙攣を始める。絶頂が近い事を知ったアルは、手前にある感じる場所を、硬く尖らせた舌で集中的に強く押す。

「あぁっ! だめ、ダメぇっ!!」

 最早何が駄目なのかも分からなくなった蕩けた早苗の頭が白く染まった。

「イっ……く、アッ!! あぁっ!! はっ……ぁぁ……っ」

 何も見えなくなった彼女の視界に、チカチカと星が瞬く。

「えっ?! ぐっ……は……ぁあっ……!!」

 快感に打ち震える早苗の足の間に顔を埋めたアルもまた、何故か驚きの声を上げ身体を痙攣させている。
 何と、彼も達してしまったのだ。着衣のまま一切局部に触れないにもかかわらず、舌や指に伝わる早苗の味や感触と、厭らしく溶けた表情やどろどろの性器、愛らしく甘い嬌声と言う目や耳から入る刺激だけで。
 そして吐精したばかりの彼の欲望は、未だ硬度を保ったまま少しも萎える気配が無い。

「……っう……嘘……こんなの、初めてなんだけど……はぁ、はぁ……」

 呟きながら、アルは暫しの間未知なる快楽の余韻に呆然とする。

「ある、ある……も、ほしい……」
「はぁ、はぁ、待って……まだ、指でも触りたい……あと、服……脱ぎたい、んだけど……向こう向いててくれない?」

 事情に気付かない早苗がアルを求めるが、身体を離した彼は顔を赤らめ、バツが悪そうに落ち着き無くそわそわしている。

「え……え? 何で? どう、したの?」

 今からする事を思えば服を脱ぐのは当たり前だ。それのどの辺りにここまで恥ずかしがるポイントがあるのか、早苗は不思議でならない。

「……いや、別に……なんとなく?」

 アルはズボンのウエスト部分をギュッと握っている。まるでお漏らしをしてしまった子供のようだ。

「なにー? お漏らしでもしちゃったとか?」
「っ!!?」

 早苗がそう聞いたのは、冗談のつもりだった。だがアルは、目を見開き酷く驚いた様子で絶句している。

「え……ホントに? ……あっ、大丈夫大丈夫、誰にも言わないから! アイス食べ過ぎちゃったのかな、もう全部出た? トイレ行っとく?」
「……い、いやちょ、待って待ってっ、君が思ってるのとは違うからっ!」

 珍しくアルの顔色の変化が忙しい。さっきまで赤らんでいた彼の顔が、今度は青くなっている。

「ええ~じゃあ何? 何をそこに隠してるの? 見せてよ」

 早苗はアルのズボンに手を掛けた。隠そうと交差する彼の腕の隙間に、するりと手を差し込みボタンを外す。

「嘘、早っ、いや無理、無理だって! 止めっ……」
「あ」

 前を開いて引っ張ると、中のものが勢い良く飛び出して来た。この一連のやり取りの間も萎えていなかったらしい。
 飛び散った何かが、早苗の頬と唇を濡らす。彼女は口に入って来た液体の味に覚えがあった。
 アルの下半身を見ると、先ほど出て来た彼の一物は白く半透明な液でしどどに濡れている。

「あれ、全然触ってないよね? 何もしてないのに、出ちゃったの……?」
「…………ちょっと洗ってくる」
「ダメぇーー!!」

 早苗は、膝立ちになったアルの太股にしがみ付く。

「わっ、こらっ、汚れるから! 汚いから!」

 彼女の目の前には白く塗られたアルの……早苗はゴクリと生唾を飲み込んだ。

「汚くないよ。さっきアルが私に言ったでしょ? 汚くなんか無い!」
「サ、サナエ……だ、だめっ、ぁ……」

 赤く小さな舌がアルの汚れた部分に触れる。早苗は根元の方からゆっくりと慈しむように、精と汚けがれを舐め取っていく。

「ぅ……やめ、てって……不味い、でしょう?」
「味って言うより食感なんだよね。一度に大量に飲み込むんじゃなければ平気」

 仄かな塩味と青い匂いが鼻に抜ける。舐めてみて分かった。早苗が飲めない理由はやはり嫌悪感や味では無い。こういう食感が苦手なだけなのである。
 少量ずつならば飲み込める。アルの体液が身の内に入って行く事に、眩暈に似た快感を覚えた。

「あっ、そんな、無理しなくても……ん……」
「無理なんかしてないよ。私だってアルの事舐めたり触ったりしたいのっ」

 パクリ。先端をくわえた早苗は、ちゅうっと強めに吸ってみる。粗方掃除の終わったそこは何の味もしなくなっているはずなのに、ちゅっちゅと優しく吸う度に薄い塩気が滲み出て来た。早苗にはそれが、堪らなく可愛く感じた。

「はぁっ! ぁ、ん……うぅ……んんっ」

 アルは喘ぎながら、早苗の短い黒髪をくしゃりと撫でた。

「声可愛過ぎかっ」
「は? 男の声が可愛い訳……くっ、う……」

 また彼を口に含んだ早苗は唇をすぼめ、頭を下げて喉の奥まで招き入れる。そして舌で扱きながら頭を上げて引っ掛かる笠の部分まで引き抜くと、また限界までくわえ込む。
 息苦しさに堪え、早苗は少しずつ速度を上げていく。

「だめっ……サナエ、ハァッ、だめだってっ……もうっ!」
「んうぅっ?!」

 アルはサナエの身体をひっくり返し、前後逆に覆い被さると彼女の花芯に吸い付いた。蜜口には二本の指を挿し込む。太股に垂れるほどに濡れそぼるそこは、いきなりでもすんなりと飲み込んだ。

「んんっ!?」

 成長した花芯を吸われながら内壁をリズミカルにノックされ、口にアルのモノが入ったままの早苗は、まともに声を出す事も出来ず涙を流して身悶える。

「ふ……っ、んぅ……っ!」

 彼の長い指は、相変わらず的確に早苗の好む場所を探し当てるのが上手い。アルの巧みな指使いに、快感の頂点は間も無くやって来た。

「んぅぅ! んンッ! んんんん~~っ!!」

 透明な液体が飛び散り、アルの顔を濡らす。早苗は脚を伸ばし、びくびくと身体を痙攣させた。

「うっ! こらこら、噛まないでよ」

 アルは慌てて早苗の口から自身を引き抜く。

「……大丈夫?」

 早苗の体液で濡れた顔をシーツで拭いたアルは、震えながら荒い呼吸を繰り返す彼女の涙を拭い、乱れた髪を撫で整える。
 暫くして早苗が落ち着くと、アルは彼女の頬に口付けた。

「ね……サナエの中に、入りたい……いい?」

 仰向けのままの早苗は、紅潮した頬に蕩けた瞳でコクコクと頷く。

「起こして」
「うん?」

 言われてアルが早苗を引っ張り起こすと、彼女は向かい合った状態でアルの膝に跨がる。まだ身体に力が入らないらしい彼女は崩れそうになり、アルにしがみ付いた。
 そのまま早苗は、ゆっくりと腰を落としていく。温まった避妊具のつるりとした感触が、身体の中心に当たる。
 更にぐっと腰を落とすと、身体を抉じ開けられる感覚に身震いする。最近の彼らにしては久しく、約一週間ぶりに繋がる喜びと期待に、彼女の中から生まれた新たな蜜が溢れてアルを濡らした。

「……うっ……前より、おっきい……? 成長した??」
「いや、成長するわけ無いでしょ……君が、狭いんだよ……」

 呆れたように言うアルだが、声が掠れている。彼も、そう余裕がある訳では無さそうだ。
 感極まり早苗がアルの首に抱き着くと、彼もぎゅっと抱き返してくれた。早苗の胸が、幸福感で満たされる。

「……君、これ好きだっけね」
「うん、好き……くっつけるから」

 可愛い事を言う早苗を、アルはぎゅっと抱き締める。二人は繋がったまま、暫くの間抱き合った。

「……ねぇ、そろそろさ、しない?」

 足をモジモジ動かし、赤い顔の早苗が上目使いに言う。疼きに堪えられなくなってきたのだろう。

「……しょうがないね。いいよ? しようか」

 僅かにアルの表情が陰るが、すぐにいつもの顔に戻り、にやりと笑って応じた。

「と言ってもさ、この体勢だと、君が動いてくれなきゃなんだけど?」
「へ? あっ、そっか……や、やってみる!」
「ふふ、頑張って」

 早苗はアルの肩に掴まり、ベッドに膝をついた格好で懸命に腰を上げようとする。太股がプルプル震えるが、何とかぎりぎりまで引き抜く。
 ゆっくり引き抜いているだけなのに、エラの張った茸の笠に似た部分が内壁のいたる所を抉えぐり、早苗は何度も力が抜けそうになった。
 もう一度腰を下ろす。抜けた事で閉じた秘肉を抉こじじ開ける感覚が脳天に響き、堪え切れずガクンと力が抜けてしまう。それにより一気に奥深くまで突き刺さり、早苗は突然の衝撃になす術も無く達した。

「んあっ!! ……あ、ふ……ぅ……っ」
「ん……中、ビクビクしてる……大丈夫?」

 膝やつま先といった下半身を跳ねさせながらも、上半身はくたりと力が抜けもたれかかる早苗の身体を、アルはしっかり支え、優しく背中を擦って労った。

「よしよし、頑張ったね。続きは俺も手伝うよ」

 アルは早苗を抱き締め、彼女の身体をゆっくり揺する。

「イッたばっかりだし、最初はゆっくりしようね?」
「は……ん……」
「うん……気持ちいいね……」

 二人の合わさった場所からは、ぬちぬち粘りけのある音が聞こえる。その音は徐々に速まり、眠気を感じるほどの心地良さだった快感は、だんだんと目も眩む強いものへと変化していく。
 二人はしっかりと抱き締め合い、共に頂上を目指す。重なり合う熱い肌の心地良さに、早苗は確かに心も重なっていると感じた。

「ふ……ぅあ……あっ、アルッ、あるっ」
「サナエ……っ」

 苦しげに眉を寄せ、切羽詰まった声を出すアルも、自分と同じ気持ちだと、この時の早苗は信じていた。

「ハァッ……サナエッ……終わりたくない……終わりたく、ない……っ」

 涙ぐみ、絞り出すように呟くアルに疑問を抱けるほど、今の早苗の頭は冴えていない。
 目指す頂いただきが訪れる。彼女は快感に喘ぎ幸福に蕩けたまま口付けを受け、口内に流れ込んできた甘さをゴクリと飲み込んだ。
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