孤児院のドロボーさん

いい人の、ドロボーさん 3話

ジャックが住み着いてから、半年が過ぎた。
この頃には、ジャックはもう立派な家族の一員になっていた。
この家でのジャックの役割は、洗濯と掃除だ。
ドロボーさんは朝早くに家を出て、日が暮れる前にたくさんの食料とお土産を持って帰ってくる。
その前に、子供たちみんなで協力しながら家事を終わらせてしまう。
大きい子は小さい子の面倒をよく見て、小さい子は大きい子の言うことをちゃんと聞いた。
家族に恵まれなかった子供たちが、今や理想の家族の形を作りあげている。
みんな幸せそうだった。

しかし、あるとき事件は起こってしまう。
ドロボーさんは、ついに捕まってしまったのだ。

その日もドロボーさんは朝早くに出かけ、子供たちは家事をこなしていた。
日が暮れる前にはドロボーさんが帰宅し、みんなでご飯食べる。
いつもと変わらず、一日幸せな日になるはず。
みんながそう思っていた。

その日、ドロボーさんはいつもより早く帰宅した。
子供たちは驚きつつもちゃんとお出迎えした。
しかし、ドロボーさんの様子がいつもと違う。
ドロボーさんは、戸惑う子供たちと目を合わせずに俯いていた。
すると、ドロボーさんの後ろから、怖い顔をした警察官が顔を覗かせた。
警察官はドカドカと家の中に入り込み、家具を触ったり食料庫を漁ったり、なにやら家の中を調べ始めた。

「これも、これもそうだ。ここにあるもの、全て盗んだものだな。」

ドロボーさんはこくりと頷いた。
警察官は、今度は子供たちの顔を順番に見た。

「この子も、この子もあの子も、みんなそうだ。」

警察官はさらに怖い顔をして、ドロボーさんの前に立った。

「ここにいる子供たちは、みんな誘拐した子供たちだな。お前がやったんだな？」

ドロボーさんはまた静かに頷いた。

「よし、連れていけ！」

警察官は、ドロボーさんを引っ張って車に乗せ、扉を閉めた。

「ドロボーさん！」

子供たちは口々にドロボーさんを呼んだ。
ドロボーさんを助けに行こうとする者もいた。
警察官はそんな子供たちを抑えるのに精一杯だった。
車に乗せられたドロボーさんは、1度だけ子供たちを見て、いつもの優しい笑顔で笑った。

そして、車は走り始め勢いをつけてると、あっという間に見えなくなってしまった。

家に残された子供たちは、警察官に保護されることになり、みんなバラバラになってしまった。