孤児院のドロボーさん

るい

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いい人の、ドロボーさん 2話

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その日の夜、ジャックを迎える歓迎パーティが開かれた。
子供たちは、協力して準備をし、テーブルにはあっという間にご馳走が並んだ。
メインは、こんがり焼けたチキン。
みんなでテーブルを囲み、一斉に食べ始めた。

「ジャック、おいしいかい?」

ドロボーさんはガツガツと食べるジャックを見て笑っていた。

「そんなに慌てなくても大丈夫だよ。ちゃんと、みんなの分あるからね」

「だって、こんなに美味しいもの食べたことが無くって...」

ドロボーさんは少し驚いた後、悲しげな顔をした。
しかしまた、優しい笑顔に戻って、

「じゃあ、これも食べなさい。このチキン、とっても美味しいんだよ」

自分の分のチキンをジャックに分けてくれた。

「いいの?」

「もちろんだよ。子供は遠慮なんかしないで、たくさん食べなさい。」

すると、その様子を見てた子供たちは、僕も私もと次々にチキンを譲り、ジャックはあっという間にチキンに囲まれた。

ジャックはすごく喜んだ。
チキンを貰えたことにでは無く、ドロボーさんや、みんなが優しくしてくれたことに。


歓迎会を終えると、ドロボーさんはジャックを呼んだ。


「どうだい?楽しかったかい?」

「うん、すっごく楽しかったよ。あんなに美味しいもの、初めて食べた。」

「そうかいそうかい。それは良かった」

「みんなで食べるご飯は美味しいね。僕知らなかったよ。今でもお腹が喜んでるみたいだ。」

ジャックはキラキラした感想ばかりを述べた。
ドロボーさんは、何度も頷きながら、何故か嬉しそうに聞いていた。

でも、ドロボーさんは時々悲しい顔をした。
それは、あるものが見えるから。
ジャックの左腕に刻まれた、黒い焦げあと。
右腕に染み付いて取れなくなった、青い痣。
首元に堂々と見えるのは、力強く締め付けられた跡。

しかしそれは、ジャックだけでは無かった。
この家に住む子供たち全員が、体のどこかに傷を負っている。
サフィは背中に切り傷。
バルンはおでこに火傷のあと。
ハンバートの歯は、数える程しかない。
みんな、親から虐待を受けていた子供たちだ。

子供たちは、ドロボーさんに集められた。
ここへ来て数年経つ子もいれば、まだ1ヶ月しか経っていない子もいる。
それでもみんな仲良く暮らし、助け合って生きている。
ドロボーさんはこうした子を助け、養っているのだ。


「世界中の子供たちが、幸せになるように」

子供たちが寝たあと、ドロボーさんが1人で月に願っているところを、ジャックはよく見かけた。
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