孤児院のドロボーさん

いい人の、ドロボーさん 4話

ドロボーさんの話は、すぐさま広がった。
街の人々は、子供たちを見かけると、優しく声をかけたり、遠くからジロジロみたり、影では可哀想と言う。
子供たちにとってこの街は、居心地の悪いものになっていた。

ドロボーさんが捕まったあと、子供たちはそれぞれの家に戻された。
だが、子供たちのお母さんやお父さんは喜んでいなかった。
子供たちにも、笑顔はなかった。

ジャックも保護され、家族と再会を果たした。
お母さんとお父さんは、警察官の前ではとても喜んでいた。警察官も誇らしげに笑っていた。
ジャックには、その笑顔も悪魔のように見えた。
もちろんお母さんとお父さんが喜んでいたのは警察官の前だけの演技だ。
ジャックは帰宅した晩、早速虐待を受けた。
ジャックは殴られながら、みんなの顔やドロボーさんの温かい笑顔を思い出しながら、泣いた。
家に帰った子供たちはみんな、ジャックと同じだった。

それでも子供たちは諦めず、家を抜け出してはドロボーさんを探した。
またドロボーさんが助けに来てくれるかもと、夢見ることもあった。
みんなで作りあげた家族を取り戻そうと、必死に探した。
しかし、ドロボーさんが姿を見せることはもう無かった。

そんな子供たちの希望も、呆気なく散った。
噂では、ドロボーさんは死刑になったと聞いた。
ドロボーさんの盗んだものは全て返され、家は取り壊されることになった。
ドロボーさんと子供たちの居場所は、ついに無くなってしまった。
そして、誰もドロボーさんを知ることは無かった。


だが、ジャックはそれでも諦めなかった。
ドロボーさんの死をみんなが悲しむ中、ジャックは探し続けた。
ドロボーさんが居そうなところは、全部探した。
夜も家を抜け出して探しては、その度に両親から暴力を受けた。
ジャックは、希望を捨てず、決して諦めなかった。


ある晴れた日、ドロボーさんの家は取り壊された。
その様子は、町の新聞にも取り上げられていた。
ジャックは、ドロボーさんの家に走り出した。


そこには、みんな居た。
ドロボーさんに集められた子供たちが、みんな揃っていた。
久しぶりに顔を合わせると、みんな酷い顔をしていた。
サフィの切り傷は、背中だけじゃなくなった。
バルンのやけど跡は、首元まで伸びた。
ハンバートは、口元を隠すためにマスクを付け始めた。

太っちょだったチャーリーはかなり痩せた。綺麗なブロンズ髪を持っていたダダは丸坊主になった。まだまだ小さい子供だったセシアは大人しくなっていた。

それでもみんな、顔を合わせるとあの頃のように笑っていた。再び家族に会えたことを喜びあった。