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革命の聖女
7 ミンチ肉と赤ワイン
しおりを挟む怪我人は引きも切らない。
革命が神を否定しようと、神の白魔法は有効だ。
ならばわたしは全力で、彼らの治療を進めるしかない。
「メシ、喰ったか?」
ノギ准将が様子を見に来た。戦闘はまだ、比較的穏やかな局面にあるようだ。さもなければ、用もないのに将校が、怪我人ばかりいるところにやってくるわけがない。
「ほら、これ。喰え」
乱暴に言って、傍らのテーブルの上にパンをぽとりと落とす。
そのまま外へ出て行ってしまった。
わたしは、兵士の足を繋いでいるところだった。爆風で千切れかけているのを、元通りにくっつけていたのだ。一息にやってしまわねば、負傷兵の苦痛は募るばかりだ。食事なんていらない。特にミンチ肉の挟まったパンは。
ノギがいなくなるとすぐに、コジヒがやってきた。
「お食事はお済みですか、聖女。中央政府から司令官である私に送られてきた、ボーナスがあるのですが……」
ワインのボトルを振って見せる。
「あっ! こんなところに私の白パンが!」
さきほどノギが置いて行ったパンを見て目を剥く。
「さては、ノギのやつ……」
「わたしは未成年です。お酒は飲めません」
冷たくわたしは言い放った。
血のように赤いワインを、大出血の治療をしている聖女が飲みたがると、本当にこの将軍は考えたのだろうか。
「それからそのパンも不要です。ワインと一緒に病棟の患者たちのところへ運んでください。彼らには栄養が必要ですから」
言っている途中で、患部に翳した手元から、大量の血が吹き上がった。集中力がそれたせいだ。
「うおおっ!」
軍人にあるまじき悲鳴をノギが上げた時だった。その大声を凌ぐほどのサイレンの音が、駐屯地に響き渡った。
「敵機襲来!」
壁に掛けた無線機ががなり立てる。
「聖女、塹壕へお移り下さい」
コジヒが言った。さっきの悲鳴が嘘のように引き締まった顔をしている。
「この人の治療が終わりましたら」
今動かしたら、大変なことになる。
「しかし……」
「私は聖女です。御心配には及びません」
治療中に爆撃を受けて死んだら、それは天命だ。きっと穏やかに死ねるだろう。ただ、患者の治療が終わっており、彼が爆風で吹き飛ばされないことを祈るのみだ。
コジヒはしつこかった。
「せめて見張りの兵を差し向けましょう」
「必要ありません。戦闘が始まれば一人でも余分の兵力が必要なはずです」
司令官は苦笑いした。
「本当に貴女は取り付く島がありませんな」
「司令官こそ、こんなところで油を売っていないで、兵士達が待っていますよ」
「敵を、決して貴女に寄せ付けはしません。誓います」
まじめな顔で言って、コジヒ司令官は去っていった。
小一時間ほども魔法を続けたろうか。
ぽっかりと兵士が目を開けた。
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「ここは患者以外男子禁制……」
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「何を鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしている。俺は軍医だよ」
「軍医?」
「人手が足りないんだ。君も戦場に出てくれ」
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