玉ねぎの値段が4倍にっ! 一揆起こしていいですか?――聖女と戦う革命戦争

せりもも

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革命の聖女

13 聖女を守る楯 2

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吹き飛ばされたテントから、ほんの目と鼻の先に、数人の男たちが立っていた。ここの軍ではちょっと見られない高級な制服を着ている。ぴかぴかの肩章が、太陽の光を受けて、きらりと輝いた。

「手間をかけさせるものではありません。さあ、来てもらいましょうか、市民アオイ」


その時、かちりと銃の安全装置が外される音がした。ひとつではない。幾つもだ。

「おら達の聖女に手を出すんじゃねえ!」

それまで風圧で蹲っていた兵士達が立ち上がった。派遣議員との間に立ち、銃を構える。

「馬鹿な。君たちは革命軍の兵士だろう」
派遣議員の一人が言う。銃を向けられ、焦った声だ。

「ああそうだべ」

「なぜ、自分たちの政府に逆らう」
「あんたらが無体なことをするからだ」
「無体なこと?」

「ここにいる聖女さんはな。おらの腕を繋げてくれた」
「俺の胸から銃弾を抜き出してくれた」
「壊疽で死にかけていたおらを、生き返らせてくれた!」

「聖女は、あんたらには渡さねえ」

「お前ら……」

あたかも楯になったかのごとく、兵士達はわたしを派遣議員たちから隔てた。


「勇敢なる兵士諸君に命じる。回れ、右」
兵士たちの向こうで、派遣議員が叫んだ。勲章をたくさんつけた、一番偉そうなやつだ。

だが、兵士達は相変わらず彼らの方を向いたままだ。そして号令もないのに揃って、派遣議員らに銃口を向ける。

「何をしている。我々に銃を向けるな。今この場で市民アオイを射殺せよ。そうすれば諸君らの昇進を約束する」


「くそっ、何を言いやがるんだ!」
「本音を出しやがったな。やっぱり聖女を殺すつもりだ」
すぐそばでノギとヨシツネが毒づいた。いつの間にか彼らは、わたしの前に立ちはだかっていた。


「もう一度、命じる。兵士諸君。回れ、右!」

それに従う者は誰一人、いなかった。
代わりに、前列の兵士達が屈んだ。その肩に、後列の兵士が銃身を預ける。

「政府の議員に銃を向けるなど、お前ら、ただで済むと思っているのか?」
あくまで強気の姿勢を崩さず、派遣議員が問う。しかしその声には、隠しようのない怯えが表れていた。

兵士の一人が嘲った。
「議員さんよ。俺らはもう、無意味な死にうんざりなんだ。今聖女がいなくなったら、誰が俺らを治療してくれる? 聖女さんを処刑するなら、その前に、あんたらを銃殺してやるからよ」

いっせいに撃鉄が引き起こされた。


「きょ、今日の所は勘弁してやる」
震え声が聞こえた。
「だが、逃げ切れると思うなよ。市民アオイ。君は聖女を解任された。今の君は、父親や母親と同じく、国家の重大犯なのだ」


「ハチの巣になりてえか?」
静かに兵士の一人が尋ねた。


物凄い速さで、派遣議員たちは逃げ去っていった。






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