玉ねぎの値段が4倍にっ! 一揆起こしていいですか?――聖女と戦う革命戦争

せりもも

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革命の聖女

14 大変な誤解

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兵士達が楯となり、派遣議員から守ってくれた。
わたしは心配だった。政府に逆らった彼らは、ひどい目に遭わされるに違いない!


「大丈夫だ。派遣議員どもに、兵士一人一人の見分けなんてつきゃしねえから。どの兵士が自分らに銃を向けたかなんて、あいつらには永遠にわからねえよ」
豪放に言って、ノギが笑った。

「ノギ准将、それからヨシツネ准将も、お二人は一介の兵士ではありません。将校です」

「あそこに准将がいたなんて、中央から来た派遣議員達にはわかりゃしませんよ。僕らほら、私服だったし」
ヨシツネも笑っている。

「そうです。二人のしたことは、名誉ある立派な行いでした」
コジヒ司令官まで口を出す。
「自分はなぜその場にいなかったかと思うと……」

「総司令官殿は、副官に捕まっていたんでしょ? 本部への報告書が遅れているって」
「……」

憂鬱そうな顔で、総司令官は黙り込む。

「そもそもあいつら、尻尾を巻いて逃げ出したんです。軍へのお咎めなんてありません」
ヨシツネは余裕の表情だ。

「……そうですか」
ほっと吐息が出る。
でもまだ不安でならない。
「もしわたしのせいで、兵士の皆さんにご迷惑のかかるようなことでもあったら……」

「聖女。そんなにやつらのことを気にかけて下さるとは」

コジヒ司令官が目を潤ませている。
わたしは慌てた。

「だって彼らはわたしのことを助けてくれたんですよ?」
「先に兵士どもの命を救ったのはあなたです」
「白魔法は、聖女の義務です。聖女は救える者はだれであろうと、救わねばならぬのです。それが、神が王女に託した使命です」

「窮屈だな」
ノギがあくびをした。

わたしはむっとした。
「あなたに言われたくありません」

「ふうん」

ノギ准将。本当にいやみな男だ。他の将校には漏れなくいる追っ掛けが、彼にだけは一人もいないのも頷ける。

「なに、じろじろ見てるんだ?」

ノギが尋ね、まさか彼がもてない理由を考えていたのだと言えず、わたしは言葉に詰まった。いくらわたしでも、本人に向かって、そんな鬼畜のような真似はできない。

「いずれにしろ、あんたを処刑させるような真似はしない。そこは信じてくれ」

「そうだよ。だからノギ准将は、ミエまで貴女を迎えに行ったんだ」

「え?」

大変な誤解だ。
「ヨシツネ准将、ノギ准将は、貴方の命を救うためにミエまで来たのでしょう? わたしの白魔術をアテにしてきたんだわ」

「違うよ」
ヨシツネが口を尖らせる。
「そっちはついでだ」

「ついでではないぞ」
凄い目でノギがヨシツネを睨む。

「そうよ。彼は凄くあなたを心配していたわ。妹の婿になる前に死なせるわけにはいかないって」

「そ、そお?」
途端にヨシツネが挙動不審になる。
「そうだ」
重々しく、ノギが賛成する。

「これはヨシツネが怪我する以前の話だが、」
コジヒ総司令官が口を出した。
「聖女が首都に召喚されて処刑されるって噂が流れて、ノギ准将はすごく心配していましたぞ。アオイ聖女、貴女のことを」

「うそ」
信じられない。

「嘘ではありません。そこへヨシツネ被弾の一報が入り、ノギは彼の容態も確かめずに、ミエにすっ飛んでいったんですわ」

かかか、とコジヒは笑った。
「よっぽど心配だったんでしょうな、聖女、貴女のことが」

「誤解を招く言い方はやめてください。俺は、ヨシツネが心配だったんです! 妹の、未来のムコとして」
猛然とノギが言い放った。

「僕は君の義弟になる気はないよ……」
弱々しい声が抗議する。

「うるさい。聖女を連れてきてやった恩を忘れるな」

コジヒ司令官がわたしに向き直った。真剣な顔をしている。

「いずれにしろ、今回の派遣議員の一件からおわかりでしょう? ミエから首都へ連れていかれたら、あなたは間違いなく処刑されたはずです。ノギの判断は正しかったわけです」

「……」
頬を膨らませ、ノギはむっとしたような顔をしている。

なに、この人。
わたしをミエから連れ去る機会を狙っていたというの? 

「それ、ちょっと怖いんですけど」
「ああっ!? なんか言ったか?」
「いいえっ!」

あまりの迫力に、わたしはあわてて、コジヒ司令官の後ろに隠れた。






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