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2章 発情への道
45 緑の絨毯の先頭で
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将軍の指が中を掻き回している。
「薬師のユンの手紙に書いてあった。人型になったばかりの頃は、ここも柔らかいって。どうかお前に苦痛を与えないでくれって、彼は、頼んできた」
指の動きが止まった。
「薬師のユンというのは、誰だ?」
「くすし……」
中が変な感じで、そっちに、全神経がいってしまっている。彼の問いに、うまく答えられない。
「お前の恋人か?」
「ちが……」
「怒らないから正直に答えてごらん」
「ユンは、カエル……」
それで、何がわかったのだろう。
再び、将軍の指が動き始めた。大きく輪を描くように動いてから、ぎゅむ、と、横に広げられた。
「よく頑張った。偉いな、グルノイユ。ご褒美をあげよう」
「ひぁっ!」
内側から、遠慮なくなでられた。電撃のような刺激が走った。
あまりの快楽の強さに、体が反り返る。
「おっと、こっちは少し我慢しよう」
すかさず前を握られる。
「将軍のばか……」
俺は、涙目になった。
「きもちよくしてくれるって、言った!」
唇が近づいてきた。耳元で、彼は囁く。
「前よりずっと、気持ちよくしてやる。約束する」
ぎゅぽっ。
指が体から出ていく。
「おと。いや……」
力なく俺はつぶやいた。もう、自分が何を言っているかさえ、さだかではない。
「グルノイユ。こっちを見ろ」
強く命令された。
うっとりと、俺は、自分の上にいる将軍を見た。
「だいすき」
無意識の言葉がこぼれる。
「お前……人が大事なことを言おうとしてたのに!」
言い終わらないうちに、熱く、太いものが入ってきた。今までとは比べ物にならない質感に、俺は悲鳴を上げた。
「お前を一生、大事にする。決して離さない」
息を弾ませ、将軍が耳元で囁いた。
「だから……堪えろ」
ずん、と突かれた。
腸が裂けそうだ。それなのに、俺は、自分の中が喜んでいるのを感じた。
「グルノイユ……吸い付いてくる」
「すき。しょうぐん、だいすき」
「お前はっ!」
両足を抱え込まれた。股が大きく開き、俺は、羞恥に震えた。
「いやっ。このかっこう、やっ!」
「うん」
返事はするのだが、上の空だ。決して、離してくれない。
打ち込まれるたびに、頭の芯が熱くなる。もう、何も考えられない。
何度も何度も腰を打ち付けられ、気が遠くなりそうだ。
両足が解放された。
「グルノイユ、手……」
俺の両手を自分の両手で握りしめ、高く上に上げる。まるで、ベッドに縫い付けるように。
リズミカルに、彼は、動き続ける。
両手が、ぎゅっと握りしめられ、動きが止まった。
「……?」
涙の溜まった目の奥から透かして見ると、何かに耐えるような表情を、彼はしていた。
ゆっくりと顔が落ちてきた。
唇に、そっとキスをした。
触れるだけの、この上もなく、優しいキスを。
再び、律動が激しくなった。全身を上下に揺すられる。リネンにこすりつけられる背中が熱い。
「イってもいいか?」
がくがくと、俺は頷いた。
他にどうすればいい?
一瞬、将軍がまじめな顔をした。
それから、ひときわ大きく、腰を振った。
奥まで。
体の、ずっと奥まで。
目の前で火花が散った。
将軍が、大きく腰を引いた。
「いやっ! 抜かないでっ!」
あられもない声で、夢中で叫ぶ。
「ずっと俺のそばにいろ」
彼は命じた。
同時に、ぐい、と、激しく突いた。
あまりの衝撃と快感に、俺は、意識を手放した。
*
「初めて見たお前は、緑のじゅうたんの先頭にいた」
愛しい人に腕枕をして、ロンウィは、話し始めた。
「当時、バーバリアンは、負けが込んでいた。経験ある古参の兵士がいなくなったのだろう。とうとう、若い、カエルの歩兵達が立ち向かってきた」
次々と河から上がってくる、緑のカエルの群れ。それが、何キロも続く。
勇敢に、恐れることなく、リュティス軍目掛けて進んでくる、黄緑色の絨毯……。
「その先頭に、際立って勇ましく、きれいなカエルがいた。グルノイユ。お前だ」
軍の先頭に立って、リュティス軍に切り込もうとする連隊長は、まるで自分自身のように、ロンウィには見えた。
何物をも恐れず。
ただ、母国を守ろうとして。
名誉と誇りに恥じないように。
「それなのに、俺の姿を見た途端、カエルの兵士たちは、あっという間に逃げ出してなあ」
潰走するカエルの歩兵連隊は、壮大な眺めだった。まるで、草原そのものが、大風に吹き飛ばされていくようだった。
「俺は申し訳なくて。俺がいたばかりに、お前の軍を潰走させてしまった。一度も、剣を交えることなく」
去り去っていく自軍の兵を、必死で引き留めるカエルの連隊長の姿は、まさしく、若き日の、ロンウィ自身の姿だった……。
「だが、お前は、誇り高く高貴だった。逃げる兵士らのしんがりに残って、恐れることなく、彼らの後衛を守り、退避を成功させた」
ぽっかりと、グルノイユが目を開いた。どこか遠いところを見つめている。
彼に、今の話が理解できているとは、思えない。
「さあ、おいで、グルノイユ」
両手を引いて、ゆっくりと、しなやかなその体を起こす。
新しく人になったばかりの体は、しみひとつなく、真っ白だった。
この体を汚す恐れと、同時に気が遠くなるほどの喜びを、ロンウィは感じた。
「ここに。ほら」
胡坐をかいた自身の上に座らせる。
すでに屹立していたそれが、再び、少年を貫こうとする。
失われていた焦点が、ロンウィの黒い瞳に集約された。
「や……」
「いやはなしだ」
耳たぶを噛んで、囁いた。
「俺はお前が欲しい。何度でも」
うっすらと、グルノイユが微笑んだ。
(fin)
・。・。・。・。・。・。・。・。・。
最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。
この後、ロンウィ将軍とナタナエレ皇帝の、それはそれは拗れた確執が続きそうですが、
また、個人的には、エスターシュタット帝国軍 新 総司令官、シャルマイユ王子 が、猛烈に気になるのですが(書く余裕がありませんでしたが、彼は、白馬の王子で、文句なしのイケメンです!)、
そして、敵前逃亡したローゼトゥール公(というより、彼の BL もとい、ML への目覚め)を、もっと応援してあげたいのですが、
めでたくロンウィとグルノイユが結ばれたここで、ひとまず、終章とさせて頂きます。
高潔で下劣、複雑な人格を持つ、ロンウィ・ヴォルムス将軍を、少しでも好きになって頂けたら、嬉しいです。
最後に、このお話は、私の妄想から生まれたフィクションであることを、申し述べておきます。
もう一度。
お読み頂いて、本当にありがとうございました!!
「薬師のユンの手紙に書いてあった。人型になったばかりの頃は、ここも柔らかいって。どうかお前に苦痛を与えないでくれって、彼は、頼んできた」
指の動きが止まった。
「薬師のユンというのは、誰だ?」
「くすし……」
中が変な感じで、そっちに、全神経がいってしまっている。彼の問いに、うまく答えられない。
「お前の恋人か?」
「ちが……」
「怒らないから正直に答えてごらん」
「ユンは、カエル……」
それで、何がわかったのだろう。
再び、将軍の指が動き始めた。大きく輪を描くように動いてから、ぎゅむ、と、横に広げられた。
「よく頑張った。偉いな、グルノイユ。ご褒美をあげよう」
「ひぁっ!」
内側から、遠慮なくなでられた。電撃のような刺激が走った。
あまりの快楽の強さに、体が反り返る。
「おっと、こっちは少し我慢しよう」
すかさず前を握られる。
「将軍のばか……」
俺は、涙目になった。
「きもちよくしてくれるって、言った!」
唇が近づいてきた。耳元で、彼は囁く。
「前よりずっと、気持ちよくしてやる。約束する」
ぎゅぽっ。
指が体から出ていく。
「おと。いや……」
力なく俺はつぶやいた。もう、自分が何を言っているかさえ、さだかではない。
「グルノイユ。こっちを見ろ」
強く命令された。
うっとりと、俺は、自分の上にいる将軍を見た。
「だいすき」
無意識の言葉がこぼれる。
「お前……人が大事なことを言おうとしてたのに!」
言い終わらないうちに、熱く、太いものが入ってきた。今までとは比べ物にならない質感に、俺は悲鳴を上げた。
「お前を一生、大事にする。決して離さない」
息を弾ませ、将軍が耳元で囁いた。
「だから……堪えろ」
ずん、と突かれた。
腸が裂けそうだ。それなのに、俺は、自分の中が喜んでいるのを感じた。
「グルノイユ……吸い付いてくる」
「すき。しょうぐん、だいすき」
「お前はっ!」
両足を抱え込まれた。股が大きく開き、俺は、羞恥に震えた。
「いやっ。このかっこう、やっ!」
「うん」
返事はするのだが、上の空だ。決して、離してくれない。
打ち込まれるたびに、頭の芯が熱くなる。もう、何も考えられない。
何度も何度も腰を打ち付けられ、気が遠くなりそうだ。
両足が解放された。
「グルノイユ、手……」
俺の両手を自分の両手で握りしめ、高く上に上げる。まるで、ベッドに縫い付けるように。
リズミカルに、彼は、動き続ける。
両手が、ぎゅっと握りしめられ、動きが止まった。
「……?」
涙の溜まった目の奥から透かして見ると、何かに耐えるような表情を、彼はしていた。
ゆっくりと顔が落ちてきた。
唇に、そっとキスをした。
触れるだけの、この上もなく、優しいキスを。
再び、律動が激しくなった。全身を上下に揺すられる。リネンにこすりつけられる背中が熱い。
「イってもいいか?」
がくがくと、俺は頷いた。
他にどうすればいい?
一瞬、将軍がまじめな顔をした。
それから、ひときわ大きく、腰を振った。
奥まで。
体の、ずっと奥まで。
目の前で火花が散った。
将軍が、大きく腰を引いた。
「いやっ! 抜かないでっ!」
あられもない声で、夢中で叫ぶ。
「ずっと俺のそばにいろ」
彼は命じた。
同時に、ぐい、と、激しく突いた。
あまりの衝撃と快感に、俺は、意識を手放した。
*
「初めて見たお前は、緑のじゅうたんの先頭にいた」
愛しい人に腕枕をして、ロンウィは、話し始めた。
「当時、バーバリアンは、負けが込んでいた。経験ある古参の兵士がいなくなったのだろう。とうとう、若い、カエルの歩兵達が立ち向かってきた」
次々と河から上がってくる、緑のカエルの群れ。それが、何キロも続く。
勇敢に、恐れることなく、リュティス軍目掛けて進んでくる、黄緑色の絨毯……。
「その先頭に、際立って勇ましく、きれいなカエルがいた。グルノイユ。お前だ」
軍の先頭に立って、リュティス軍に切り込もうとする連隊長は、まるで自分自身のように、ロンウィには見えた。
何物をも恐れず。
ただ、母国を守ろうとして。
名誉と誇りに恥じないように。
「それなのに、俺の姿を見た途端、カエルの兵士たちは、あっという間に逃げ出してなあ」
潰走するカエルの歩兵連隊は、壮大な眺めだった。まるで、草原そのものが、大風に吹き飛ばされていくようだった。
「俺は申し訳なくて。俺がいたばかりに、お前の軍を潰走させてしまった。一度も、剣を交えることなく」
去り去っていく自軍の兵を、必死で引き留めるカエルの連隊長の姿は、まさしく、若き日の、ロンウィ自身の姿だった……。
「だが、お前は、誇り高く高貴だった。逃げる兵士らのしんがりに残って、恐れることなく、彼らの後衛を守り、退避を成功させた」
ぽっかりと、グルノイユが目を開いた。どこか遠いところを見つめている。
彼に、今の話が理解できているとは、思えない。
「さあ、おいで、グルノイユ」
両手を引いて、ゆっくりと、しなやかなその体を起こす。
新しく人になったばかりの体は、しみひとつなく、真っ白だった。
この体を汚す恐れと、同時に気が遠くなるほどの喜びを、ロンウィは感じた。
「ここに。ほら」
胡坐をかいた自身の上に座らせる。
すでに屹立していたそれが、再び、少年を貫こうとする。
失われていた焦点が、ロンウィの黒い瞳に集約された。
「や……」
「いやはなしだ」
耳たぶを噛んで、囁いた。
「俺はお前が欲しい。何度でも」
うっすらと、グルノイユが微笑んだ。
(fin)
・。・。・。・。・。・。・。・。・。
最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。
この後、ロンウィ将軍とナタナエレ皇帝の、それはそれは拗れた確執が続きそうですが、
また、個人的には、エスターシュタット帝国軍 新 総司令官、シャルマイユ王子 が、猛烈に気になるのですが(書く余裕がありませんでしたが、彼は、白馬の王子で、文句なしのイケメンです!)、
そして、敵前逃亡したローゼトゥール公(というより、彼の BL もとい、ML への目覚め)を、もっと応援してあげたいのですが、
めでたくロンウィとグルノイユが結ばれたここで、ひとまず、終章とさせて頂きます。
高潔で下劣、複雑な人格を持つ、ロンウィ・ヴォルムス将軍を、少しでも好きになって頂けたら、嬉しいです。
最後に、このお話は、私の妄想から生まれたフィクションであることを、申し述べておきます。
もう一度。
お読み頂いて、本当にありがとうございました!!
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