全力でBのLしたい攻め達 と ノンケすぎる悪役令息受け

せりもも

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1 悪役令息

11.艦船、出陣

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メラウィーの港では、わがエメドラード王国陸軍の兵士たちが横隊を組み、敵の攻撃に備えていた。

王である兄のダレイオには、万が一を取って、王宮に待機してもらっている。有事の際、軍を率いるのは、王弟の役割りだ。
それはいい。
問題は俺の隣に馬の轡を並ばせている……。

「貴方の行くところはどこにでもお供します、サハル=カフラー殿下」
白馬の駿馬に跨ったイケメンジョルジュが涼し気に宣う。
「愛するあなたの盾となり、私は勇敢に戦いましょう。戦闘が終わったら、ご褒美に甘いキスをくれますか?」

「なんでお前がここにいるんだよ、ジョルジュ」

港にずらりと並ぶ軍の先頭に立ち、俺はぼやいた。
ダレイオと共に、宮殿に置いてきたはずなのに……。

「お前は宮殿で、ダレイオのお守りだろうが」
「ダレイオ陛下には許可を頂いています」
「馬鹿な!」

仮にも今現在侵攻中の敵国の王子を、我が国の守備軍に派遣するだと?

「貴方の盾になると申し出たところ、御快諾を頂きました」
「だから、攻めてきたのはお前の国の戦艦で、指揮官はお前の姉上なんだって!」

思わず叫ぶ。自分の国の戦艦を迎え撃とうとは、いったい、どんな状況だ。こいつは、どういう神経をしているのだ。

「私には、姉より貴方の方が大事です。それはもう、何千、何億倍も。貴方の接吻一つで、私は簡単に母国を裏切るでしょう」
「いやいやいや、それはまずいでしょ」
「ごく自然な心のありようです。全然全く、すこしもまずくありません」

「サハル殿下!」
ラシャド提督がやってきて、最敬礼した。エメドラード近海の提督だ。
「アルシノエ号の用意ができました!」

アルシノエ号というのは、今回のわが船団の旗艦である。言うまでもなく、総司令官の俺が乗船することになっている。

「わが軍の艦隊は?」
「戦艦40隻、カッター、ジーベック含め、合計60隻ほどをかき集めました」
「少ないな。砲艦は?」
「20隻ほど」
「20……インゲレの半分以下じゃないか! それに、カッターにジーベックだって? 小型船ばかりじゃないか」

「申し訳、ございませんっ!」
勢いよくラシャドが頭を下げた。
「部下に命じて、近海の商船を悉く拿捕させたのですが、これがせいいっぱいで……」

まるで海賊のようなことを言っている。だが、戦艦は高価だ。それに、今回の海戦は急な出来事だった。講和を結んだはずの隣国インゲレが、まさか海から攻めて来るなんて、想定していなくて当たり前だ。

「いや、君を責めているわけではない。我が国エメドラードは貧乏だからな。山岳国家だし。船の数が少なくても、仕方がないさ」

俺はラシャドが好きだ。俺より10歳ほど年上だが、勇敢で、海の男らしくさっぱりとした人柄だ。彼を責めたくはない。それに、インゲレとの講和が破れた1/4くらいは、俺の責任かもしれないし。もう1/4は、迫撃砲や疫病やみの斥候をインゲレへ送り込むと脅した兄王ダレイオのせいだし、残り1/2は、インゲレの男爵令嬢ポメリアが悪い。

だが、インゲルと海戦ということになれば、わが軍は非常に不利になることは確かだ。
重くなった空気を振り払うように、俺は声を上げた。

「よし。さっそく乗船だ! って、なんでお前がついてくるんだ、ジョルジュ!」
当然のように後からついてきたジョルジュを振り返り、俺は叱りつけた。
「私は貴方の盾ですから」
ぬけぬけとジョルジュが答える。
「船団の総司令官は俺だ。乗船は許可しない!」

「そうですぞ」
ラシャド提督が俺の前に立つ。
「私がこの者を牽制している間に、さあ、殿下。乗船下さい」

むっとしたようにジョルジュが言い返す。
「越権行為である。サハル殿下の盾は、私だ」
「おのれ、敵国の王子めが!」
ラシャド提督の顔色が変わった。
「殿下。惨殺命令を」
「よし。ゆる……、」
「貴方のそばにあれとは、国王命令です」

さすがに命が惜しくなったか、ジョルジュが遮った。懐を探り、書状を取り出す。赤い花の印が捺されている。王の署名入りの公的文書だ。
宮殿へ入り込む際に尊師のメダルを手に入れていたことといい、こいつ、なんて手回しがいいんだ……。

「これは、失礼仕りました!」
朱印状を見て、ラシャドが最敬礼した。




「敵艦隊は南10時の方角を、風速30ノットで西へ向けて航行中」
艦長が報告している。ここは、旗艦アルシノエ号の甲板だ。
「砲艦46隻を含む戦艦62隻、フリゲート艦、コルベット艦を含め、合計98隻をわが軍連絡艦アビソが目視しました」
「うげっ。おえっ」
「旗艦船はヴィクトリー号、インゲレ王国最強の軍艦です」
「げぇっ。おげぇっ」
「推測される敵砲艦の射速は3分で1発、」
「げろっ、げぇっ、おげぇっ」

「おい、このげろげろを黙らせろ!」
すぐそばにいた水兵に俺は命じた。

偉そうなことを言ってアルシノエ号に乗り込んだくせに、船が走り出した途端、ジョルジュは船酔いを始めた。正確には、船に乗り込んだ途端だ。
それなのにこいつは、俺のそばから離れようとしない。つまり、俺のすぐそばで、げろげろ吐き続けている。

「何をする! げろっ」

腕に掛けられた水兵の手を、ジョルジュは振り払った。それはいいのだが、はずみで辺りに吐き散らし、気の毒な水兵のセーラーカラーにかかってしまった。

「俺は国王陛下じきじきに、サハル殿下のそばにいるよう、命じられたんだぞ。無礼にも触れるんじゃない。うげっ」
「無礼なのは、水兵にげろをひっかけたお前の方だと思うが? いずれにせよ、そのような状態では、足手まとい、もとい、見苦しい。船室に引き籠っていろ」

俺が水兵を庇うと、ジョルジュは目を剥いた。

「なりません! おそばにいなければ、いざという時、盾になることができません! げえぇっ」
「まだ言ってんのか」
俺は呆れた。
「お前の盾なんかなくとも、俺は大丈夫だ」

「そうですとも。殿下は我々がお守りします」
艦長が胸を張る。そして付け加えた。
「貴方の姉上の攻撃からね」

「敵艦隊の船影を捕捉! その距離、およそ840リュー!」
その時、マストの上から歩哨が叫んだ。




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