全力でBのLしたい攻め達 と ノンケすぎる悪役令息受け

せりもも

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3 英雄トーナメント

2.始祖と王の関係

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 「ですが、さしもの王も、タバシン河流域だけは手を出せないようですね」
ホライヨンが首を傾げる。

 タバシン河は年に一度、大洪水を起こし、流域を潤す。国内に残った人々は、肥沃な岸辺に移り住み、河の齎す恵みで、かろうじて生活していた。

「タバシン河は、王家の始祖のものだからね。悪辣なサハルにも、手を出すことができないのよ」
「フィラン神殿の女神とテンドール神殿の男神のことですね」
 この二柱は、王家の始祖として、タバシン河流域の神殿に祀られている。

「神々が、貴方の父上をお守りになったことは覚えているわよね。サハルの手から」
 息子のオツムにいくらか懸念を感じながら、タビサは尋ねた。タバシン河中洲での出来事を、ホライヨンは忘れてしまったかもしれない。

「もちろんですとも」
にっかりとホライヨンは微笑んだ。
「始祖神様たちは、父上のおみ足を、聖なる神殿に匿われたのでした」

「あらよかった。覚えていたのね。王室の始祖神方が味方したのは、ダレイオ。つまり神々は、サハルを敵と見做したということ」
「……はあ。そういうことになりますか」
「なるの! そして、貴方はダレイオの息子。つまり、神々は貴方の味方です。貴方は神々の期待に応え、サハルを倒さねばなりません」
「僕と父上は別の人間ですが」
「うるさい! いいから、サハルを殺しなさい」

 一足飛びにタビサが結論へ飛びつく。

「トーナメントともあれば、サハルも会場に出て来るでしょう。競技に夢中になり、警備も手薄になるはず。試合に勝ち進めば、彼のすぐそばに行く機会も出て来ることでしょう。その際、トーナメントの勝利者であるお前は、武器を持っているはず」
「トーナメントで使った武器を、どうするんです? 王の前に血の付いた武器を携行するなんて不敬ではありませんか?」
「このすっとこどっこいが! その武器で、ついでにサハルも殺すに決まってるじゃない!」
「なるほど。やっぱり母さんは頭がいい」

ホライヨンは心から母を崇めた。それなのに、彼女は不満そうだっ。

「こんな初歩的なことも思いつかないあんたの方が、私は心配よ。でもまあ、これだけ条件が良ければ、仕損じることはないはず。相手は土属性のサハルだしね」
 母の言葉に、息子は力強く頷いた。
「もちろんですとも、母上。必ずやサハルを仕留めて見せます。その前に……」
 用心深く一歩退いてから、ホライヨンは続けた。
「英雄トーナメントでも優勝します。ご褒美はやっぱりほしいですから」
「しつこい子ねえ。お前の欲しい褒美って……」

タビサはためらった。質問を変える。

「タバシン河を流れて来た両腕、両足。岩山のてっぺんにあった胴体。けれど、あの人の頭部だけはどうしても見つからない。それは、どういうことかわかる?」
「さあ」
「あっさり諦めるな! 少しは考えなさい」
「僕の頭は、考えるようにはできていません」

 タビサは鼻を鳴らした。思考を放棄した息子の代わりに論点をまとめてやる。

「生贄の『花嫁』たちの復活以来、不自然な死者たちの蘇りは出ていない。なぜか」
「ええと……」
「父上の頭は、今、どこにあると思う?」
「結界の張ってあるところ!」
「その通り!」

タビサの声が弾む。ホライヨンが胸を張った。

「父上の両脚が、フィラン、テンドールの両神殿に安置されていた時は、死者たちに怪異は起きませんでした。そのことを思い出したのです」
「お前だって、やればできるのよ。これからは、頭で考えるようになさい」
「無理です」

 母はため息をついた。

「国中の神殿は、全て調べた。けれども、ダレイオの頭部は見つからなかった。では、神殿の他に、この国で結界が張られているところはどこ?」
「岩山のてっぺん!」
「愚か者! あれを張ったのは、お前でしょう」
「ああ、そうでした」

「宮殿よ」
息子の無能に苛立ち、タビサは、自分で答えた。
「サハルは、神殿のどこかにダレイオの頭を隠しているんだわ!」
「母上 クールです!」
「これくらいのことは、お前に答えて欲しかったよ。でも、いい? お前の目標は、サハルを倒し、自分が王位に就くこと。父上の頭部に執着したらダメ」
「執着? 何のことです?」
「隠さなくていいのよ。お前の父親孝行はよくわかっているから。できたらそれを、母親である私にも向けて欲しいけど」

 タビサが言い、ホライヨンは首を傾げる。

「サハルを殺せばとりあえず王になれるけど、サハルのような王にしかなれない。それではだめ。民から恐れられるのではなく、民に支持されることが、絶対的に必要。お前が、国一番の英雄でありさえすれば、その問題はクリアできる」
「大丈夫です、母上。英雄トーナメントには、必ず優勝しますから」

 ほっと息を継ぎ、タビサは頷いた。






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