完結『まず、キスから始めよう~キスを待つ頬骨② オトナの恋愛小説です

水ぎわ

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第1章「まず、キスから始めよう 」~佐江×清春 編

第12話「うなじと滑らかな首筋に、唇を這わせたい」

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(UnsplashのSoniya Ahoraeiが撮影)

「きみがおれを襲う? バカ言うなよ」

 清春は顔を真っ赤にしていった。
 まさか、こんなところで岡本佐江に言い負かされるとは思わなかった。
 大きめの白いシャツをはおり、ほとんどスッピンに近い顔をした妹の親友から、これほど露骨な誘いの言葉をかけられるとは。

 いや、あれはべつに誘っているつもりじゃないんだろう。清春はぐいと酒を飲んだ。
 最初の衝撃がおさまると、清春は二歳年下の妹の親友にいいようにされたことに腹が立ってきた。
 むっとした表情で、少しだけ声を荒げて言った。

「いい加減にしなさい。第一、きみにおれが襲えるものか」

 おや、と言う表情で佐江は顔を上げた。
 清春はまだ、かすかに自分の頬が赤らんでいるのを感じて、同じように佐江の頬も赤らませたくなった。

「きみ、ヴァージンだろ。男の襲い方なんて分かるのか」

 今度は、カッと佐江の白い頬が赤くなった。
 清春は心地よげに佐江の羞恥心を眺め、それから佐江の頬の赤みがうなじに降りて首元に至るのに目を奪われた。
 清春の息が、止まりそうになる。息をのみ、食い入るように岡本佐江の首と肩が描く曲線を見つめた。

 あの白いうなじと滑らかな首筋に、唇を這わせたい。
 シャツの襟元のボタンをはずして、今はわずかにのぞくだけの鎖骨のくぼみに汗をためさせ、舐めとってやりたい。

 ぞくっと、危ないほどの濃度の欲情が清春の背中を駆け上がった。
 佐江は清春のよこしまな視線に全く気付かず、逆に怒ったように

「なぜ、あたしがヴァージンだって思うんです? 真乃にだって、もう男がいるんですよ」

 清春はむりやり自分の視線を佐江の首筋から引きはがし、グラスの底を上げて甘い酒を一気に飲み干した。
 なぜ、きみがヴァージンだって思うのかって?
 理由は簡単だ。

「きみが、真乃《まの》以外の人間に身体をあずけるはずがない。おかしくなるまで、あいつに惚れているのに」

佐江はバーカウンターの向こうで指が白くなるほど力を入れて、グラスを握りしめていた。

「できるかも、しれませんよ。男と寝るなんて、簡単だわ」

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