完結『まず、キスから始めよう~キスを待つ頬骨② オトナの恋愛小説です

水ぎわ

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第1章「まず、キスから始めよう 」~佐江×清春 編

第11話「男の歯を待っているような耳たぶ」

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「……アルコールの入ったカクテルが、欲しいんだな?」

 清春は、佐江の最後の言葉を聞かなかったふりをして、背後の酒棚からロックグラスとバースプーンを出してリビングのバーカウンターの上に並べた。
 今度は佐江のために“シーブリーズ”を作るつもりでウォッカ、グレープフルーツジュース、クランベリージュースをそろえる。

 “シーブリーズ”は本来シェイクするべきカクテルだが、材料を次々にグラスに入れていく方法のビルドでもいける。
 ふだんあまり立ち寄らない父親の家にあるシェイカーは、清春の手になじまない。だからシェイカーなしで作るほうが気楽だ。
 だまって酒をつくり、佐江の前に差し出した。

 “シーブリーズ”はきれいなピンク色のカクテルだ。クランベリージュースが入っているためカラフルで飲みやすく、女性に人気がある。
 佐江は一口酒を飲み、グラスを見つめてからアーモンド形の二重瞼《ふたえまぶた》の目で清春を見た。

「ウォッカの量、減らしましたね?」

 清春は肩をすくめて、

「適量にしただけだ」
「気にしすぎですよ。あたし、真乃と同じくらい飲めます。カクテルの一杯くらいではつぶれませんよ。それとも――」

 佐江は一気にカクテルを飲んだ。

「あたしが、怖いんですか」
「こわい? なにが?」

 清春は自分もグラスに口をつけながら不機嫌そうに言った。
 今度は佐江がにやりと笑い、バーカウンターに肘をついて清春を見る。

「怖いでしょう。だって、こんな時間に女と二人で酒を飲んで、襲われたら困るから――」

 げほっと、清春はせき込んだ。

「きみ、いったい何を言って……」
「うっかりあたしみたいな女に襲われて、大事な妹の真乃《まの》に責められるのが怖いんでしょう」

 佐江は、本当は少し酔っているのだろうか。
 瞳がキラキラしていて、耳たぶがほんのり赤い。

 まるで、男の歯を待っているような耳たぶだ、と清春は意味が分からない乾きの真ん中で考えた。
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