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第1章「まず、キスから始めよう 」~佐江×清春 編
第22話「頼み」
しおりを挟む(UnsplashのHisu leeが撮影)
清春の舌が柔らかく動くと、佐江の息にとろみがつく。清春は、思わず佐江の胸の上で顔を伏せた。
このまま、勢いにまかせてこのきれいな体をめちゃめちゃにしたい。
だが清春は目を閉じて、大きく息をつくだけにとどめた。
彼女は、真乃《まの》のものだ。
井上清春は生まれて初めて、異母妹をうらやましいと思った。
いま白いシャツのボタンをすべてはずし、小ぶりな乳房を清春のいいようにさせている岡本佐江は、目を閉じて悦楽を味わっているようだ。その表情の清らかさが、清春を不思議な気にさせる。
セックスをしている時の女は、これほど清浄だったか。
清春は、佐江の身体中にキスを続けながらゆっくりと潤っている部分に手を伸ばした。
デニムのボタンをはずし、下着の中に長い指を入れ込む。
清春の指がふれると佐江の身体がひくりと震えた。清春は佐江の顔をまっすぐに見降ろして、ささやいた。
「本気か、佐江?」
そう言われて佐江は目を開き、自分の身体の上にいる清春を見あげた。
清春は、のどの奥から声を絞り出す。
今は、ほんとうなら言葉など一つも使わず、清春自身の身体で言いたいことを佐江に伝えるべき時なのに。
清春の喉は、冷静な声を絞り出す。
そうしなくてはいけないと、清春自身が最初に決めたからだ。
佐江のために。すべては、佐江のために――。
「ここで、やめるか」
佐江はしばらく考えて、首を横に振った。
「いいえ。まだ続けてもらってもいいですか。真乃《まの》が男と何をしているのか、自分の身体で知りたいんです」
「おれにいかされても、真乃にいかされたことにはならないぞ」
清春にそういわれて、佐江は眉をひそめ、急に清春の身体を押しのけた。
純白のシャツをひっかけただけの姿で、カウチの上に起き上がる。
そのまま、じっと正面から清春を見た。
「あなたが真乃じゃないことなんて、分かっています。
あたしがどれほど願っても、真乃は、今あなたがしていることを絶対にしてくれません。
いつかあたしがくだらない男相手にやってしまうくらいなら、今ここであなたにしてもらうほうがいいでしょう」
「おれだって、くだらない男だ」
「そうだとしても」
佐江は言った。
「あなたはあたしに無理強《むりじ》いをしない。ディープキスは上手《うま》かったし、あなたの舌が入ってきても嫌じゃなかった。
だったら、指までは飲みこめると思うんです」
「論理的だな」
「論理的に、体系的に学べって、あなたに教わったんですよ」
清春は佐江の隣で目を閉じ、呼吸を整えた。この女相手に、最後まで行けない愛撫を続けるのは、正直つらかった。
しかしここまで来た以上、佐江の身体を悦楽にまで導いてやる責任が清春にある。
大きく深呼吸をすると、歯噛みしながら佐江の身体の奥の奥に入りたい欲求を押し殺す。
「佐江ちゃん」
「はい?」
「ひとつ、頼みがある」
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