完結『まず、キスから始めよう~キスを待つ頬骨② オトナの恋愛小説です

水ぎわ

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第1章「まず、キスから始めよう 」~佐江×清春 編

第26話「この身体を思い出させる女としか、できない」

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(UnsplashのLeonsaが撮影)

 清春の指で甘く昇り詰めた後の佐江は、しがみついたまま呼吸を整えていた。やがて眼を開くと、清春を見て困ったように笑った。

「これで、真乃《まの》が男に夢中になる理由が分かったわ」

 清春も何とか笑って、佐江を見かえした。

「きみが、真乃を抱くという選択肢もあるんだぜ」
「——キヨさん」

 低い声で言うと、岡本佐江は清春の目元をそっと撫でた。

「どっちみち、そんなことは起きないんです。やさしいひとね」
「そんなこと、初めて言われたよ」

 清春は笑った。それからじっと佐江を見て、

「佐江ちゃん、一度だけ、きみを抱きしめてもいいかな」

 そう言うと、清春は佐江の答えを待たずに、妹と同じトワレの匂いがする佐江の身体を抱きしめた。
 ほっそりした、清春の腕の中にすっぽりとおさまる身体。アップにまとめてあった髪はほどけ、清春の身体にそっとまとわりついた。そして清春の耳元では、まだかすかに荒い佐江の息が揺れている。

 おれはこの先、この身体を思い出させる女としか、できないだろうなと清春は鈍い痛みとともに考えた。



★★★
 その日、真乃《まの》は朝の四時ごろに帰ってきた。佐江はもうとっくに真乃の部屋に戻っていて、清春は朝帰りをした妹をリビングで迎えた。

「……あっ、キヨちゃん」

 さすがに真乃はバツの悪そうな顔をした。清春はムッとした顔で、

「”キヨちゃん”じゃないだろう。おまえ、佐江ちゃんを一人で残して朝帰りか」
「ごめん」

 真乃は鮮やかなブルーのコートを脱ぎながら謝った。

「いちおう、佐江には電話しておいたんだけど」
「そういう問題じゃない――佐江ちゃんに電話をした? なんて言ったんだ?」
「どうも『朝までコース』になりそうだから、キヨちゃんに頼んでお家へ送ってもらってって、電話したのよ。お父さんは急なことで、あのまま仕事へ行っちゃったし、キヨちゃんが昨日飲んでいなかったのは知っていたから。
それに、佐江を頼むのにキヨちゃん以上の人はいないでしょ? 
あの子は美人だから、あっちこっちの男から言い寄られて面倒がっているのよ」

 真乃は目に鮮やかなブルーのコートを無造作にリビングのソファに放り投げながら、ジロリと異母兄を見上げた。

「ねえ。佐江はキヨちゃんに、送ってくれるように頼まなかった? まさか一晩中、ここで二人きりでいたの?」

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