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第2章「ここから登る、坂の途中」~真乃×洋輔 編
第30話「一瞬だけの恋に落ちている」
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(UnsplashのIna Garbéが撮影)
長身の男はあっさりと真乃の肩を抱き、有無を言わさず大通りを曲がって、細い道へ入っていった。
「ちょっと放してよ」
真乃が身体をよじると、男は、おやという顔をして真乃のきゃしゃな肩を抱いている自分の手を見た。
「わりい。気が付かなかった」
「女の子の肩を抱いていて、気が付かないわけ?」
「ああ まあ、こうゆうのが普通だから」
男は足を止めて、真乃を見おろした。
坂の途中だから見下ろされているんだ、とは真乃は思わなかった。
向かい合ってみると男は思った以上に背が高く、百八十センチをかるく越えているだろう。
真乃の異母兄である井上清春は百八十五センチの長身だが、この男のほうがわずかに高い気がする。
そして、圧倒的な存在感があった。
真乃は改めて、目の前の男の姿を見つめた。
年齢は十八くらいだろうか。異母兄の清春とほぼ同じに見える。
異母兄といい父といい、きれいな顔立ちの男は見慣れている真乃だが、それでも目をくぎ付けにされるほど美麗な男だ。
整った顔立ちに重さのある筋肉のついた身体つき。
そして身体のどこかから明確に香る、すさまじいまでの色気があった。
男の色気なんて十六歳の真乃に分かるはずがないが、向かい合っている男からは、ふんわりした極彩色の空気のようなものがまとわりついていた。
あのきれいな空気にふれたい、と真乃は思った。
無意識のうちに手を伸ばしていたのだろう。真乃は自分の手が若い男にふれたのを感じて驚いた。
大きくて、熱くて――そして岩のように頑丈だ。
真乃を一息で押しひしぎ、つぶしてしまえるほどに頑丈な男の身体だ。
「あたし、いつかあなたと寝るわ」
真乃はふいに、そう言っていた。
男はちょっと驚いた顔をしたが、すぐに、ニヤリと笑った。
「今からでも、いいんだぜ。ちょうどいい場所に、いいくぼみがあるじゃねえか」
男が二歩だけ動く。 それだけでもう、真乃はビルの壁と男の頑丈な身体に挟まれてしまった。
ゆっくりと男の身体が落ちてくる。
熱風のような気配が、先に真乃の鼻腔を襲った。
腰が砕ける。膝から崩れる。肩先がもう、男の指を待ちかまえている。
ここが路上でも、異母兄の働くバーからほんの数メートルしか離れていない場所であっても気にならない。
『だってあたしは今、一瞬だけの恋に落ちているのだから――』
真乃の唇は、もう男から5センチの距離にある。
長身の男はあっさりと真乃の肩を抱き、有無を言わさず大通りを曲がって、細い道へ入っていった。
「ちょっと放してよ」
真乃が身体をよじると、男は、おやという顔をして真乃のきゃしゃな肩を抱いている自分の手を見た。
「わりい。気が付かなかった」
「女の子の肩を抱いていて、気が付かないわけ?」
「ああ まあ、こうゆうのが普通だから」
男は足を止めて、真乃を見おろした。
坂の途中だから見下ろされているんだ、とは真乃は思わなかった。
向かい合ってみると男は思った以上に背が高く、百八十センチをかるく越えているだろう。
真乃の異母兄である井上清春は百八十五センチの長身だが、この男のほうがわずかに高い気がする。
そして、圧倒的な存在感があった。
真乃は改めて、目の前の男の姿を見つめた。
年齢は十八くらいだろうか。異母兄の清春とほぼ同じに見える。
異母兄といい父といい、きれいな顔立ちの男は見慣れている真乃だが、それでも目をくぎ付けにされるほど美麗な男だ。
整った顔立ちに重さのある筋肉のついた身体つき。
そして身体のどこかから明確に香る、すさまじいまでの色気があった。
男の色気なんて十六歳の真乃に分かるはずがないが、向かい合っている男からは、ふんわりした極彩色の空気のようなものがまとわりついていた。
あのきれいな空気にふれたい、と真乃は思った。
無意識のうちに手を伸ばしていたのだろう。真乃は自分の手が若い男にふれたのを感じて驚いた。
大きくて、熱くて――そして岩のように頑丈だ。
真乃を一息で押しひしぎ、つぶしてしまえるほどに頑丈な男の身体だ。
「あたし、いつかあなたと寝るわ」
真乃はふいに、そう言っていた。
男はちょっと驚いた顔をしたが、すぐに、ニヤリと笑った。
「今からでも、いいんだぜ。ちょうどいい場所に、いいくぼみがあるじゃねえか」
男が二歩だけ動く。 それだけでもう、真乃はビルの壁と男の頑丈な身体に挟まれてしまった。
ゆっくりと男の身体が落ちてくる。
熱風のような気配が、先に真乃の鼻腔を襲った。
腰が砕ける。膝から崩れる。肩先がもう、男の指を待ちかまえている。
ここが路上でも、異母兄の働くバーからほんの数メートルしか離れていない場所であっても気にならない。
『だってあたしは今、一瞬だけの恋に落ちているのだから――』
真乃の唇は、もう男から5センチの距離にある。
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