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3話「息子に襲われるなんて……」
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ガシガシと首輪を噛み千切ろうとするので、やめろと叫んだ。
が、ヒートで理性を失った息子に俺の悲痛な訴えは届かない。
このままでは最悪の結末だ。
Ωの鵠がαだったら、首輪が外れてうなじを噛まれたら、番になってしまう。
正気を取り戻した息子は優しいから、俺を傷つけたことに心を痛めるかもしれない。それにαを嫌悪している夫の鷲も黙っているはずがない。
そうしたら、せっかく鷲と築き上げた夢のような日常が終わりを告げてしまう。
嫌々と体を捻って抵抗をしていると、この場に似つかわしくない電子音が鳴り響く。
トイレに持ち込んだスマホの着信音だ。
画面から電話の相手が鷲だと気づいた鵠は、サーと血の気が引いた顔になる。
俺は息子が身を退いたことに安堵し、スマホを耳に当てた。
『もしもーし? 琴、今大丈夫?』
『…………どうした?』
『いやー、ホームシックってやつ? 寂しくなっちゃったから愛しのマイハニーの声が聞きたいなぁって』
こちらの状況を知らない夫の間の抜けた声に、一気に疲労感が増した。
『くーちゃんはもう帰ってきた? 父さん、可愛い息子の声聞きたいなぁ』
『――――えっと、』
言葉を濁し、チラリと本人に視線をやるが、まだ興奮冷めやらぬ状態なのは一目瞭然だった。
『――っ、今風呂入ってる。なんかすげー疲れてたみたいだったから』
『そっかー残念。てか琴、もしかして今発情してる?』
『――――――え?』
全て見透かされたような一言に動揺した。
ドクドクと心拍数が上がっていくのを感じながら、続きの言葉を待った。
『やっぱりね。俺はお前の夫だぞー? 妻の異変なんて顔合わせなくてもお見通しだって。……ごめん、琴。しんどい時に傍にいてやれなくて』
鷲の優しさが、ナイフのように心臓を抉る。
俺は傷ついた気持ちのまま、愛する人に嘘をついた。
『もう抑制剤飲んだから。いつもみたいに寝てればへーき』
『……そっか。それ聞いて安心したわ。早く帰ってお前を抱きしめたいよ、くーちゃんも』
『バカ、まだ一日目だろ。しっかり仕事してこい、おまわりさん』
『わかってるって! ハードな仕事だから癒しが必要なんですー。てことで、くーちゃんの寝顔の写真ヨロシク。……やっぱ辛そうだから、そろそろ切るわ。おやすみ』
『心配してくれてありがとうな。おやすみ』
電話を切り終えるころには、鵠はだいぶ正気に戻っていた。
壁に体をもたれかけ、先ほどまでしていた俺への行為に罪悪感で打ちひしがれていた。
「僕は……母さんになんてことを」
とりあえず鵠をその場に放置し、棚から非常用の特効薬である注射を取り出し、自分の腕に刺した。
これは突然きてしまった発情を数分以内に沈静化させる。これで一安心だ。また襲われては目も当てられない。
戻ってみると、鵠は泣きながら、ひたすら俺への懺悔を繰り返していた。
「お前は悪くない、何も悪くないから」
震える肩を抱きしめながら、何回も息子に囁いた。
その日の夕食はお互い喉を通らず、次の日の鵠の弁当にまわされた。
が、ヒートで理性を失った息子に俺の悲痛な訴えは届かない。
このままでは最悪の結末だ。
Ωの鵠がαだったら、首輪が外れてうなじを噛まれたら、番になってしまう。
正気を取り戻した息子は優しいから、俺を傷つけたことに心を痛めるかもしれない。それにαを嫌悪している夫の鷲も黙っているはずがない。
そうしたら、せっかく鷲と築き上げた夢のような日常が終わりを告げてしまう。
嫌々と体を捻って抵抗をしていると、この場に似つかわしくない電子音が鳴り響く。
トイレに持ち込んだスマホの着信音だ。
画面から電話の相手が鷲だと気づいた鵠は、サーと血の気が引いた顔になる。
俺は息子が身を退いたことに安堵し、スマホを耳に当てた。
『もしもーし? 琴、今大丈夫?』
『…………どうした?』
『いやー、ホームシックってやつ? 寂しくなっちゃったから愛しのマイハニーの声が聞きたいなぁって』
こちらの状況を知らない夫の間の抜けた声に、一気に疲労感が増した。
『くーちゃんはもう帰ってきた? 父さん、可愛い息子の声聞きたいなぁ』
『――――えっと、』
言葉を濁し、チラリと本人に視線をやるが、まだ興奮冷めやらぬ状態なのは一目瞭然だった。
『――っ、今風呂入ってる。なんかすげー疲れてたみたいだったから』
『そっかー残念。てか琴、もしかして今発情してる?』
『――――――え?』
全て見透かされたような一言に動揺した。
ドクドクと心拍数が上がっていくのを感じながら、続きの言葉を待った。
『やっぱりね。俺はお前の夫だぞー? 妻の異変なんて顔合わせなくてもお見通しだって。……ごめん、琴。しんどい時に傍にいてやれなくて』
鷲の優しさが、ナイフのように心臓を抉る。
俺は傷ついた気持ちのまま、愛する人に嘘をついた。
『もう抑制剤飲んだから。いつもみたいに寝てればへーき』
『……そっか。それ聞いて安心したわ。早く帰ってお前を抱きしめたいよ、くーちゃんも』
『バカ、まだ一日目だろ。しっかり仕事してこい、おまわりさん』
『わかってるって! ハードな仕事だから癒しが必要なんですー。てことで、くーちゃんの寝顔の写真ヨロシク。……やっぱ辛そうだから、そろそろ切るわ。おやすみ』
『心配してくれてありがとうな。おやすみ』
電話を切り終えるころには、鵠はだいぶ正気に戻っていた。
壁に体をもたれかけ、先ほどまでしていた俺への行為に罪悪感で打ちひしがれていた。
「僕は……母さんになんてことを」
とりあえず鵠をその場に放置し、棚から非常用の特効薬である注射を取り出し、自分の腕に刺した。
これは突然きてしまった発情を数分以内に沈静化させる。これで一安心だ。また襲われては目も当てられない。
戻ってみると、鵠は泣きながら、ひたすら俺への懺悔を繰り返していた。
「お前は悪くない、何も悪くないから」
震える肩を抱きしめながら、何回も息子に囁いた。
その日の夕食はお互い喉を通らず、次の日の鵠の弁当にまわされた。
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