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第5章 覇者時代
第79話 ロラン防衛戦
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どこまでキリがねぇんだよクソッ
オレはロランの街に来た敵軍の相手をしていた。
想定したとおり、2000がやってきた。
よくもまぁこんだけかき集めたもんだ。
開戦してからずっと、熊みてえな毛むくじゃらの兵が絶え間なく押し寄せてくる。
驚くことに、どんだけ倒しても全く怯まない。
恐怖心の欠落したかのような、気味の悪い奴らだ。
それに一体一体が思いの外強い。
一太刀で殺すのがなかなか難しい。
その間に攻撃を受けて、バカにならない量の魔力が削られていく。
我ながら無茶な戦いをしていると思う。
森の加護がなかったら早々に魔力枯渇していただろう。
これは焦っちゃいけない典型的なパターンだ。
大技をしかけずに、少しずつ着実に倒していく。
「アルフ、そろそろ50!」
「わかった、すぐに戻る。」
オレは街の結界の中に逃げ込んだ。
この動きは事前に打ち合わせていたことだ。
50を撃ったら合図をしろと。
これをすることによって、魔力の使いすぎを防ぐ狙いがある。
つい熱中しすぎてしまうと、想定以上に消耗する危険性があるからだ。
「お疲れさまです、やはり手強いですか?」
「そうだな、こいつら全部相手にするのは骨だろうな。どっかで引き上げてくれりゃいいが。」
「守りは今のところ問題ありません。散発的に攻めてくるくらいなら、ここが落ちることはないでしょう。」
いくら秘術による結界とはいえ、1000人規模で攻められると突破されかねないらしい。
初めの方で数人が侵入に失敗して以来何もしてこない。
敵方のアシュリーに対するリサーチ不足に救われた形だ。
オレは水や簡単な食事を取り、少し休ませてもらった。
魔力だけじゃなくスタミナ管理もしっかりしなければ。
魔力枯渇でもスタミナ切れでも、動けなくなる事では同じだからな。
オレが休んでいる間は街の奴らが矢を射掛けていた。
絶望的に人数が足りていないが、何もしないよりはマシだ。
「アシュリー、そろそろ出るぞ。オレは右翼に当たる。ワンコ達には左翼を牽制するよう連絡してくれ。」
「わかりました、くれぐれも気をつけて!」
狼煙でワンコ達に合図を送った。
アナログな手だが、こんな事のために一々魔力なり道具なりを消耗する必要はない。
結界から飛び出したオレは、片っぱしから敵を切り刻んでいった。
向こうも捨て身で攻め寄せてくるが、囲まれないように注意すれば問題なかった。
そんな戦いを繰り返す事数度、敵が引き上げて行った。
夜を避けたのかもしれない。
陽は大きく傾いて夜が訪れようとしていた。
オレは結界の中に引き上げると、すぐさま水浴びをした。
返り血をだいぶ浴びてしまった。
このままの姿で子供達の前に顔を出すなんて気が引けたからだ。
風呂の用意があると言われたが、それは断った。
そこまで油断をするのは危険すぎるからだ。
水浴びの後、街の中央にある一軒の家を訪れた。
ドアを開けるとシルヴィアを先頭に子供達が駆け寄ってきた。
「おとさんへいき?ケガしてない?」
「ああ、大丈夫だ。傷ひとつないよ。」
みんながホッとした素振りをみせた。
シルヴィアなんかは目を赤く腫らしている。
ひょっとして泣いていたのだろうか。
「アルフさん、ほとんど一人で戦ってるけど、危なくはないの?」
「まぁできれば味方が欲しいがな。それは無い物ねだりだ。」
「魔王様、聖剣ミレイアは問題ありませんか?お力になれてますか?」
「あ、ああ。今の所は問題ないぞ。」
このロングソードをくれたのはミレイアだが、自分の名前を付けようとしたのも本人だ。
オレはさすがに拒否したんだが、当人はそう呼ぶことをやめようとしない。
「魔王様、こちらをお持ちください。」
「ん、これはナイフ・・・だよな?いつも持ち歩いてたやつか。」
「本来は儀礼用にと思っていたのですが、武器にお困りになった時にお使いください。」
「そうだな、武器はいくつあっても困らない。もしもの時は使わせてもらう。」
「私が夜な夜な呪文を注入した一品です。きっと魔王様のお力になることでしょう。」
「お、おう。ありがとう。あと女の子がそんな事しなくていいから。」
お前が毎晩ナイフを握りしめてブツブツやってること、グレンから聞いてるぞ。
頼むからもう少し普通の女の子になってくれないか。
オレだってこんな時じゃなきゃ、呪われてそうなナイフなんて受け取ってないからな?
戦時中にもかかわらず、柔らかい空気がほんの少しだけ充満した。
大変な思いをするのは明日のオレであって今のオレじゃない。
こうして子供達と共に、つかの間の休息を楽しんだのだった。
オレはロランの街に来た敵軍の相手をしていた。
想定したとおり、2000がやってきた。
よくもまぁこんだけかき集めたもんだ。
開戦してからずっと、熊みてえな毛むくじゃらの兵が絶え間なく押し寄せてくる。
驚くことに、どんだけ倒しても全く怯まない。
恐怖心の欠落したかのような、気味の悪い奴らだ。
それに一体一体が思いの外強い。
一太刀で殺すのがなかなか難しい。
その間に攻撃を受けて、バカにならない量の魔力が削られていく。
我ながら無茶な戦いをしていると思う。
森の加護がなかったら早々に魔力枯渇していただろう。
これは焦っちゃいけない典型的なパターンだ。
大技をしかけずに、少しずつ着実に倒していく。
「アルフ、そろそろ50!」
「わかった、すぐに戻る。」
オレは街の結界の中に逃げ込んだ。
この動きは事前に打ち合わせていたことだ。
50を撃ったら合図をしろと。
これをすることによって、魔力の使いすぎを防ぐ狙いがある。
つい熱中しすぎてしまうと、想定以上に消耗する危険性があるからだ。
「お疲れさまです、やはり手強いですか?」
「そうだな、こいつら全部相手にするのは骨だろうな。どっかで引き上げてくれりゃいいが。」
「守りは今のところ問題ありません。散発的に攻めてくるくらいなら、ここが落ちることはないでしょう。」
いくら秘術による結界とはいえ、1000人規模で攻められると突破されかねないらしい。
初めの方で数人が侵入に失敗して以来何もしてこない。
敵方のアシュリーに対するリサーチ不足に救われた形だ。
オレは水や簡単な食事を取り、少し休ませてもらった。
魔力だけじゃなくスタミナ管理もしっかりしなければ。
魔力枯渇でもスタミナ切れでも、動けなくなる事では同じだからな。
オレが休んでいる間は街の奴らが矢を射掛けていた。
絶望的に人数が足りていないが、何もしないよりはマシだ。
「アシュリー、そろそろ出るぞ。オレは右翼に当たる。ワンコ達には左翼を牽制するよう連絡してくれ。」
「わかりました、くれぐれも気をつけて!」
狼煙でワンコ達に合図を送った。
アナログな手だが、こんな事のために一々魔力なり道具なりを消耗する必要はない。
結界から飛び出したオレは、片っぱしから敵を切り刻んでいった。
向こうも捨て身で攻め寄せてくるが、囲まれないように注意すれば問題なかった。
そんな戦いを繰り返す事数度、敵が引き上げて行った。
夜を避けたのかもしれない。
陽は大きく傾いて夜が訪れようとしていた。
オレは結界の中に引き上げると、すぐさま水浴びをした。
返り血をだいぶ浴びてしまった。
このままの姿で子供達の前に顔を出すなんて気が引けたからだ。
風呂の用意があると言われたが、それは断った。
そこまで油断をするのは危険すぎるからだ。
水浴びの後、街の中央にある一軒の家を訪れた。
ドアを開けるとシルヴィアを先頭に子供達が駆け寄ってきた。
「おとさんへいき?ケガしてない?」
「ああ、大丈夫だ。傷ひとつないよ。」
みんながホッとした素振りをみせた。
シルヴィアなんかは目を赤く腫らしている。
ひょっとして泣いていたのだろうか。
「アルフさん、ほとんど一人で戦ってるけど、危なくはないの?」
「まぁできれば味方が欲しいがな。それは無い物ねだりだ。」
「魔王様、聖剣ミレイアは問題ありませんか?お力になれてますか?」
「あ、ああ。今の所は問題ないぞ。」
このロングソードをくれたのはミレイアだが、自分の名前を付けようとしたのも本人だ。
オレはさすがに拒否したんだが、当人はそう呼ぶことをやめようとしない。
「魔王様、こちらをお持ちください。」
「ん、これはナイフ・・・だよな?いつも持ち歩いてたやつか。」
「本来は儀礼用にと思っていたのですが、武器にお困りになった時にお使いください。」
「そうだな、武器はいくつあっても困らない。もしもの時は使わせてもらう。」
「私が夜な夜な呪文を注入した一品です。きっと魔王様のお力になることでしょう。」
「お、おう。ありがとう。あと女の子がそんな事しなくていいから。」
お前が毎晩ナイフを握りしめてブツブツやってること、グレンから聞いてるぞ。
頼むからもう少し普通の女の子になってくれないか。
オレだってこんな時じゃなきゃ、呪われてそうなナイフなんて受け取ってないからな?
戦時中にもかかわらず、柔らかい空気がほんの少しだけ充満した。
大変な思いをするのは明日のオレであって今のオレじゃない。
こうして子供達と共に、つかの間の休息を楽しんだのだった。
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