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第2章:美形ヤンキーは女の子が苦手?
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しおりを挟むカツン、カツンと秋介の足音が遠のいて行く。冬牙はその音が完全に消えるのを待っていた。遠くでカツン、と聞こえたのを最後に足音が聞こえなくなった。
冬牙がもう一度俺に声をかけようとする寸前で、冬牙の左手首を掴んで口から無理やり指を抜き、腹部を思い切り上げた。
「ふざけんな! 俺はお前のおもちゃじゃねえ!」
吐き捨てるように言いながら、頭の奥に古い記憶が蘇る。それを振り払うように頭を掻きむしって、目の前にいる冬牙の顔の横のドアを殴った。
「二度と俺の前にその面見せんな」
本気で言ったったところで、こいつに通用しないことはわかってる。でも、しばらく顔が見たくないのは事実だった。
今回ばかりはすぐに虫の居所が収まりそうにない。
「悠雨……」
「……んだよ」
珍しく弱い弱いしい声に思わず反応してしまう。それがダメだとわかっているのに、俺は冬牙を完全に無視することができない。その理由は自分でもよくわかってる。
「その顔、そそるから写メっていい?」
頬をうっすら赤くした冬牙が、ズボンのポケットからスマホを取り出そうとした。
「……死ね」
怒りが頂点に達したので、反射的に冬牙の股間を膝蹴りして、トイレの個室をあとにした。
財布もスマホもポケットに入れていたので、そのまま一人でカラオケを出る。
外はまだ日も暮れていない。こんなに早く合コンを抜けてしまったことを申し訳なく思いつつ、家までの道のりを歩く。
赤信号で足を止めた途端、冬牙に指を突っ込まれたときの感触が鮮明に思い出された。
「……冬牙のやつ、まじで覚えてろよ……」
自分の中に湧き上がる感情を誤魔化そうと、イヤフォンを耳にさし、頭の中を空っぽにして歩き続けた。
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