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幽霊
伸ばした手
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4
「こんな盗み聞きみたいなこと、よくないですよ」
「そう言いつつ、太助くんだってついてきたじゃない」
「それは玲子さんを一人にするわけにはいかないからで……」
「太助くんは耳がいいから、ここからでも聞こえるでしょ。どうなの、二人の様子は」
駅前で悠弥と遥を見送ったあと。心配だからと玲子が二人の後ろ姿を追うのを見過ごすわけにもいかず、太助も少し離れて追ってきたのだ。
「順調に話が進んでいるようですよ。心配いりませんって」
街路灯の薄明かりに照らされて、やっと二人の姿が確認できる距離。普通の人間なら、会話の内容など聞こえはしないだろうが、狸のあやかしである太助は聴覚も優れている。悠弥が件の指輪の真相を遥に話しているところだった。
「そっか。じゃあ大丈夫かな」
玲子は黙ってさえいれば、二人に近づいても気づかれないはずだが、そこは玲子にも遠慮があるようで、太助の隣で二人を見守っている。
満月に近い月明かりが明るい。もう少し近づいたら、二人も太助の存在に気づくかもしれない。絶妙な距離を保ちつつ、太助は桜の木の影で様子を窺っていた。
玲子はいつの間にか、その視線を別の人影に移していた。
男が一人、目の前の遊歩道をこちら側へ歩いてくる。
仕事帰りだろうか。中肉中背のスーツ姿。ゆったりとした足取りで、悠弥たちの背後を通り過ぎた。スマホ画面の明かりが男の顔を照らしている。
道の脇にいる太助には気づいていないようだった。
ぼんやりと男の歩みを眺めている太助とは対照的に、玲子はその男を凝視していた。
「玲子さん……?」
右隣のただならぬ気配に、太助は小さく声をかけた。
「ハル……くん……治人……」
視界を右から左へ横切っていく男を、絶えず目で追いながら、玲子はその名前を口にした。
「待ち合わせはいつも……この先の橋のたもとだった……」
太助を振り向きもせず、玲子は通り過ぎる男から目を離さない。
「あなたはいつも私より早く来ていたわね……また誰かを待つの? 私じゃない誰かを……」
男の後ろ姿を微動だにせず見つめていた玲子の姿が、道に落ちる太助の影より暗い漆黒へと変化していた。
「玲子さん!」
人の魂が荒んだもの。どろりと淀んだ影の姿。
太助も何度か見たことがあった。それは、人の魂の成れの果て。
いけない。そっちへ行っては。
戻れなくなってしまう。人として還れなくなってしまう。
ふらりふらりとゆらめくように。
その影が男に右手を伸ばす。
「玲子さんっ! だめだ、戻って!」
太助も右手を伸ばした。その手が影をすり抜ける。影はなおも男の後を追い、その背に触れようとする。
万が一、人間に危害を加えるようなことがあったなら……玲子はもう生者の世界、輪廻には戻れない。恨みや憎しみだけを宿した、哀しい魂に成り果ててしまう。
それだけは――。大切な人を、そんな姿にしたくない。
「待って! 行くな、玲子さん!」
もう一度伸ばした太助の手が、影をつかんだ。
温度と色の失せた手。
漆黒の顔がこちらを振り向く。闇色の顔はその輪郭だけを残し、表情を読み取ることはできない。
取留めのない感情や記憶が、その手を伝って流れ込んでくる。
きっと、玲子の記憶の断片だ。
伸ばしても届かなかった小さな手。ひとりで歩く夜の街。去っていく誰かの背中。泣き腫らした目で起きる朝。
こっちを見て。私をひとりにしないで。こわいよ。さみしい。
誰か来て。私を愛して。
太助は玲子の左手をぎゅっと握った。
「どこ、行くんですか」
影の動きがぴたりと止まった。
「そっちじゃないですよ」
言いながら、太助は俯いた。
溢れてくる涙と鼻水をどうしようもなく、空いた左手で顔を拭いながら呼吸を整える。
少しのあいだ、太助が鼻をすする音だけが響いた。
「なんで……太助くんが泣いてるのよ……」
太助は、色を取り戻した玲子の手を見つめた。細い指が、しっかりと太助の手を握り返している。
「だって……あなたは……」
繋いだ手を介して伝わってきたのは、ただただ悲しい、寂しいという気持ちだった。
「愛されたかっただけ……愛したかっただけじゃないですか……」
慌ただしい足音が聞こえてくる。太助の声に気づいた悠弥たちがこちらに駆け寄ってきていた。
「こんなにも純粋なあなたを、あいつは……」
玲子の手を離し、今度は太助が男の背中を追った。
その姿がすうっと変化していく。
髪が背中まで伸び、手足は細くなっていく。瞬きほどの間に、薄いワンピースを纏った女性が現れた。
「太助くん!?」
それは紛れもなく、玲子の姿だった。
コツコツとヒールの音を響かせて、男の背後からその肩に触れる。
驚いて振り向く男。
「ハルくん」
太助がその名を口にすると、男は目を丸くして、『玲子』の頭から足先にまで視線を這わせた。
「れい……こ?」
太助は玲子の顔で、にこりと笑顔を作ってみせた。その目は軽蔑の色に満ちていたが。
「覚えているのね」
「お前……なんで……死んだって……い、生きてたのか……?」
男は戦慄した。捨てた女が、死んだはずの女が目の前にいる。
「ええ、死んだわ」
「……は? 嘘だろ、そんなわけ……」
「末代まで呪ってあげたいところだけど、ずっと覚えておくのも癪だから……これで終わりにしてあげる」
『玲子』はそう言うと、右手を振り上げた。
ばちん、と頬を張る音が、静かな公園に響いた。
「なっ……ふざけやがって……! 誰なんだよお前っ」
男が『玲子』に掴みかかった瞬間。
「おいやめろ!」
悠弥がその腕をひねり上げた。
男が悠弥を睨みつける。
「離せ! この女が先に……」
男が振り返った先に玲子の姿はなかった。
「えっ……?!」
足元には1匹の狸の姿。
悠弥は手を離し、呆れに少しの嘲笑を交えた声音で言った。
「ダメですよ、動物虐待は」
「な……なんなんだよ……あんたら……」
狼狽えた男の視線が悠弥の後ろの虚空に釘付けになる。
「あ……れい……うああぁぁ!」
見事に腰を抜かした男は、それでも必死に立ち上がり、無様な腰つきで走り去った。
その後ろ姿が夜闇に紛れて見えなくなったところで、誰かがぷっと吹き出した。
つられて悠弥も声を漏らして笑いはじめた。
「あー、怖かったぁ……どうなることかと、ドキドキしちゃいました。無事でよかったです」
後ろに隠れるように様子を窺っていた遥が、悠弥の隣に並ぶ。
「俺、今日だけで寿命がめちゃくちゃ縮んだ気がします……」
大きく息を吐いた悠弥の背中を、遥が優しくさすった。
太助は元の姿に戻ったものの、そのまま地面にへたり込んでいる。
「狸が人を化かすところ、初めて見ましたよ」
そう言いながら悠弥が太助に手を差し伸べた。
「はは、思わず……。助かりました、ありがとうございます」
立ち上がった太助の目の前で、玲子が俯いていた。
「玲子さん……ごめん、勝手なことを……」
太助の言葉を遮るように、玲子が笑い声を上げた。
「見た? あの情けない顔! もう傑作よ!」
呆気にとられつつ、太助は困ったような笑顔を浮かべていた。
「太助くん、ありがとね。なんかスッキリしたわ」
そして玲子はくるりと遥の方に向き直り、笑顔を向けた。
「二人も仲直りできたみたいだし。よかったね、遥ちゃん」
「お二人のおかげです」
悠弥と遥の繋いだ手を見て、太助も微笑む。
ホッとしたところで、ぎゅるるる、と太助の腹が鳴り響いた。
「あ……気が抜けたら腹が……」
「あはは、そういえば、腹減りましたね」
「そうですねぇ。私も朝から食べていなくて、お腹ぺこぺこです」
遥も自分の腹を押さえつつ同意する。
「この近くに新しくできたガッツリ系のラーメン屋さんがあるんですけれど……一人では入りづらくて、まだ行けてないんです。よかったらご一緒してくれませんか?」
「いいですね! 行きましょうか、みんなで」
太助と顔を見合わせて笑う玲子が、悠弥にも見えた気がした。
「こんな盗み聞きみたいなこと、よくないですよ」
「そう言いつつ、太助くんだってついてきたじゃない」
「それは玲子さんを一人にするわけにはいかないからで……」
「太助くんは耳がいいから、ここからでも聞こえるでしょ。どうなの、二人の様子は」
駅前で悠弥と遥を見送ったあと。心配だからと玲子が二人の後ろ姿を追うのを見過ごすわけにもいかず、太助も少し離れて追ってきたのだ。
「順調に話が進んでいるようですよ。心配いりませんって」
街路灯の薄明かりに照らされて、やっと二人の姿が確認できる距離。普通の人間なら、会話の内容など聞こえはしないだろうが、狸のあやかしである太助は聴覚も優れている。悠弥が件の指輪の真相を遥に話しているところだった。
「そっか。じゃあ大丈夫かな」
玲子は黙ってさえいれば、二人に近づいても気づかれないはずだが、そこは玲子にも遠慮があるようで、太助の隣で二人を見守っている。
満月に近い月明かりが明るい。もう少し近づいたら、二人も太助の存在に気づくかもしれない。絶妙な距離を保ちつつ、太助は桜の木の影で様子を窺っていた。
玲子はいつの間にか、その視線を別の人影に移していた。
男が一人、目の前の遊歩道をこちら側へ歩いてくる。
仕事帰りだろうか。中肉中背のスーツ姿。ゆったりとした足取りで、悠弥たちの背後を通り過ぎた。スマホ画面の明かりが男の顔を照らしている。
道の脇にいる太助には気づいていないようだった。
ぼんやりと男の歩みを眺めている太助とは対照的に、玲子はその男を凝視していた。
「玲子さん……?」
右隣のただならぬ気配に、太助は小さく声をかけた。
「ハル……くん……治人……」
視界を右から左へ横切っていく男を、絶えず目で追いながら、玲子はその名前を口にした。
「待ち合わせはいつも……この先の橋のたもとだった……」
太助を振り向きもせず、玲子は通り過ぎる男から目を離さない。
「あなたはいつも私より早く来ていたわね……また誰かを待つの? 私じゃない誰かを……」
男の後ろ姿を微動だにせず見つめていた玲子の姿が、道に落ちる太助の影より暗い漆黒へと変化していた。
「玲子さん!」
人の魂が荒んだもの。どろりと淀んだ影の姿。
太助も何度か見たことがあった。それは、人の魂の成れの果て。
いけない。そっちへ行っては。
戻れなくなってしまう。人として還れなくなってしまう。
ふらりふらりとゆらめくように。
その影が男に右手を伸ばす。
「玲子さんっ! だめだ、戻って!」
太助も右手を伸ばした。その手が影をすり抜ける。影はなおも男の後を追い、その背に触れようとする。
万が一、人間に危害を加えるようなことがあったなら……玲子はもう生者の世界、輪廻には戻れない。恨みや憎しみだけを宿した、哀しい魂に成り果ててしまう。
それだけは――。大切な人を、そんな姿にしたくない。
「待って! 行くな、玲子さん!」
もう一度伸ばした太助の手が、影をつかんだ。
温度と色の失せた手。
漆黒の顔がこちらを振り向く。闇色の顔はその輪郭だけを残し、表情を読み取ることはできない。
取留めのない感情や記憶が、その手を伝って流れ込んでくる。
きっと、玲子の記憶の断片だ。
伸ばしても届かなかった小さな手。ひとりで歩く夜の街。去っていく誰かの背中。泣き腫らした目で起きる朝。
こっちを見て。私をひとりにしないで。こわいよ。さみしい。
誰か来て。私を愛して。
太助は玲子の左手をぎゅっと握った。
「どこ、行くんですか」
影の動きがぴたりと止まった。
「そっちじゃないですよ」
言いながら、太助は俯いた。
溢れてくる涙と鼻水をどうしようもなく、空いた左手で顔を拭いながら呼吸を整える。
少しのあいだ、太助が鼻をすする音だけが響いた。
「なんで……太助くんが泣いてるのよ……」
太助は、色を取り戻した玲子の手を見つめた。細い指が、しっかりと太助の手を握り返している。
「だって……あなたは……」
繋いだ手を介して伝わってきたのは、ただただ悲しい、寂しいという気持ちだった。
「愛されたかっただけ……愛したかっただけじゃないですか……」
慌ただしい足音が聞こえてくる。太助の声に気づいた悠弥たちがこちらに駆け寄ってきていた。
「こんなにも純粋なあなたを、あいつは……」
玲子の手を離し、今度は太助が男の背中を追った。
その姿がすうっと変化していく。
髪が背中まで伸び、手足は細くなっていく。瞬きほどの間に、薄いワンピースを纏った女性が現れた。
「太助くん!?」
それは紛れもなく、玲子の姿だった。
コツコツとヒールの音を響かせて、男の背後からその肩に触れる。
驚いて振り向く男。
「ハルくん」
太助がその名を口にすると、男は目を丸くして、『玲子』の頭から足先にまで視線を這わせた。
「れい……こ?」
太助は玲子の顔で、にこりと笑顔を作ってみせた。その目は軽蔑の色に満ちていたが。
「覚えているのね」
「お前……なんで……死んだって……い、生きてたのか……?」
男は戦慄した。捨てた女が、死んだはずの女が目の前にいる。
「ええ、死んだわ」
「……は? 嘘だろ、そんなわけ……」
「末代まで呪ってあげたいところだけど、ずっと覚えておくのも癪だから……これで終わりにしてあげる」
『玲子』はそう言うと、右手を振り上げた。
ばちん、と頬を張る音が、静かな公園に響いた。
「なっ……ふざけやがって……! 誰なんだよお前っ」
男が『玲子』に掴みかかった瞬間。
「おいやめろ!」
悠弥がその腕をひねり上げた。
男が悠弥を睨みつける。
「離せ! この女が先に……」
男が振り返った先に玲子の姿はなかった。
「えっ……?!」
足元には1匹の狸の姿。
悠弥は手を離し、呆れに少しの嘲笑を交えた声音で言った。
「ダメですよ、動物虐待は」
「な……なんなんだよ……あんたら……」
狼狽えた男の視線が悠弥の後ろの虚空に釘付けになる。
「あ……れい……うああぁぁ!」
見事に腰を抜かした男は、それでも必死に立ち上がり、無様な腰つきで走り去った。
その後ろ姿が夜闇に紛れて見えなくなったところで、誰かがぷっと吹き出した。
つられて悠弥も声を漏らして笑いはじめた。
「あー、怖かったぁ……どうなることかと、ドキドキしちゃいました。無事でよかったです」
後ろに隠れるように様子を窺っていた遥が、悠弥の隣に並ぶ。
「俺、今日だけで寿命がめちゃくちゃ縮んだ気がします……」
大きく息を吐いた悠弥の背中を、遥が優しくさすった。
太助は元の姿に戻ったものの、そのまま地面にへたり込んでいる。
「狸が人を化かすところ、初めて見ましたよ」
そう言いながら悠弥が太助に手を差し伸べた。
「はは、思わず……。助かりました、ありがとうございます」
立ち上がった太助の目の前で、玲子が俯いていた。
「玲子さん……ごめん、勝手なことを……」
太助の言葉を遮るように、玲子が笑い声を上げた。
「見た? あの情けない顔! もう傑作よ!」
呆気にとられつつ、太助は困ったような笑顔を浮かべていた。
「太助くん、ありがとね。なんかスッキリしたわ」
そして玲子はくるりと遥の方に向き直り、笑顔を向けた。
「二人も仲直りできたみたいだし。よかったね、遥ちゃん」
「お二人のおかげです」
悠弥と遥の繋いだ手を見て、太助も微笑む。
ホッとしたところで、ぎゅるるる、と太助の腹が鳴り響いた。
「あ……気が抜けたら腹が……」
「あはは、そういえば、腹減りましたね」
「そうですねぇ。私も朝から食べていなくて、お腹ぺこぺこです」
遥も自分の腹を押さえつつ同意する。
「この近くに新しくできたガッツリ系のラーメン屋さんがあるんですけれど……一人では入りづらくて、まだ行けてないんです。よかったらご一緒してくれませんか?」
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太助と顔を見合わせて笑う玲子が、悠弥にも見えた気がした。
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