5 / 7
思索に浸る
しおりを挟む
ーー恋愛が全面に出ない恋愛劇とは。
ワタシは女の子たちに追いかけられて、ボロボロになったリグリーと入れ違いに部室を後にした。ラクシュエル様からの無茶振りをようく考えるためだ。
「軍記物は却下されちゃったしな~。」
このネッツギーナ王国では、物語といえば軍記物、もしくは神話だ。
ネッツギーナ王国はその昔、初代ネッツギーナ王がこの土地を蛮族から奪い取ったことから始まる。
それから初代ネッツギーナ王は、周りの蛮族の地を平定し、その側近たちには蛮族から奪った土地とその娘を褒賞として与えたのだという。強く、貢献した者へ褒賞を与えるため、ネッツギーナ王国は巨大化していく。
やがてその一帯を平定し終わると、より豊かな領地を得るために、領主同士で争いが起き始めた。
建国当初、領地の相続権は女性にあったという。
男はその女性を手に入れるため争い、勝った者がその地の領主となるのだ。
まあ、そんな風に国中が争っていては、国力も下がる一方だ。
巨大な王国も内外から崩れていく。
そんな王国を支えたのは四代国王、あれ?五代だったかな?とりあえずその頃の国王が、争っている領主をまとめて叩きのめしたのだ。
もちろん比喩ではないよ。
物理的に殴りつけに行ったらしい。
剛腕王ガルガンディス・ネッツギーナの武勇伝は吟遊詩人の唄になり、物語として本になると大人気となり、未だに各家庭に常備されているほどの人気の本だ。
それ以外に人気なのは『ポルポンタス砦の戦い』『マドレーヌ南部戦戦記』、子ども向けに人気があるのが『狂戦士モレのたたかい』だ。
物語なので友情や裏切り、もちろん恋愛の要素もないわけではないけど、とにかく戦って、戦って、戦って、戦って勝つことが至上命題。
だからワタシの拙い物語を読んだ時のラクシュエル様の感動はすごかった。
ワタシの実家は国境に近くて、外国から来た商人なんかも結構いる。その中の一人が、本屋を開こうと外国の本を持ち込んできた。まあ、禁書とは言わないけど、外国の思想が入るって事で警吏に睨まれちゃって、商人さんは泣く泣く帰って行ったんだけど、その時安く手に入れた本がワタシの宝物だ。
擦り切れるほど読んで、読むだけで満足できなくて、ちまちまと書き綴っていた創作ノートを学園で落とした。
そういえば拾ったのは同じクラスのリグリーだったな。
「あれ⁉︎ノートがない…」
昼休みに図書館で物語の続きを書こうと思ってカバンを開けた時に、大切な創作ノートがないことに気付いたワタシは軽いパニックになった。「ノートがない」とカバンをガサガサと、机の周りをキョロキョロしているとリグリーが声をかけてきたのだ。
「あの、ノートってもしかして、臙脂色の表紙の?」
「そう、それ!!もしかして見た?」
「ああ、誰のノートかわからないから、事務室に持って行ったけど……」
「ええ~っ!教室に落ちてたんだから、周りに聞いてくれればよかったのに!」
「あ、そうか。ごめん。」
パニックで捲し立てたワタシに、リグリーは困った顔で小さく謝ってくれた。
今ならわかるけど、リグリーは結構気が小さくて、入学したてのクラスで人に聞くなんてできなかったんだよね。
「え、じゃあ事務室にあるのね。」
「うん。…たぶん。」
事務室ってどこだっけ?
てゆーか!中身を見られたらマズイ!!!
「えっと、貴方…」
「あ、リグリー。リグリー・トエル。」
「ワタシはフラン・ナーロよ。リグリー、悪いんだけど、事務室まで一緒に行ってくれない?ワタシまだ校内がよくわからなくて。」
「ああ、いいけど…」
人の良いリグリーは事務室までついてきてくれそうだ。引っ張って教室を出ようとしたところで、扉のところから「きゃあっ!」という黄色い悲鳴が聞こえ、覗き込んでいる王子様と目が合った。
「やあ、リグリー・トエル君はいるかな?」
その王子様スマイルに、顔に熱が上がったような気がした。
「俺だけど…?」
「君が拾ったノートについて聞きたいことがあるんだ。一緒に来てくれるかい?」
「「え?」」
顔に集まった熱が一気に血の気が引いた。
「あ、あのノートはワタシのです!彼は、リグリーは拾っただけで、外国のとか変な思想とかっ持っていませんっ!!!
だから処罰ならワタシだけが受けます!」
「「はあ??」」
それから大爆笑のダイアンに、ラクシュエル様の演劇部まで連れて行かれ、あれよあれよという間に、ワタシとリグリーは演劇部に所属していたのだ。
ちなみにノートは、どうなったのかわからないが、ラクシュエル様の手元に渡っていたのだ。
ワタシの物語を読んであんなに喜んでくれたラクシュエル様のために、恋愛だけではない、何か楽しい物語を考えなくては。
ワタシは女の子たちに追いかけられて、ボロボロになったリグリーと入れ違いに部室を後にした。ラクシュエル様からの無茶振りをようく考えるためだ。
「軍記物は却下されちゃったしな~。」
このネッツギーナ王国では、物語といえば軍記物、もしくは神話だ。
ネッツギーナ王国はその昔、初代ネッツギーナ王がこの土地を蛮族から奪い取ったことから始まる。
それから初代ネッツギーナ王は、周りの蛮族の地を平定し、その側近たちには蛮族から奪った土地とその娘を褒賞として与えたのだという。強く、貢献した者へ褒賞を与えるため、ネッツギーナ王国は巨大化していく。
やがてその一帯を平定し終わると、より豊かな領地を得るために、領主同士で争いが起き始めた。
建国当初、領地の相続権は女性にあったという。
男はその女性を手に入れるため争い、勝った者がその地の領主となるのだ。
まあ、そんな風に国中が争っていては、国力も下がる一方だ。
巨大な王国も内外から崩れていく。
そんな王国を支えたのは四代国王、あれ?五代だったかな?とりあえずその頃の国王が、争っている領主をまとめて叩きのめしたのだ。
もちろん比喩ではないよ。
物理的に殴りつけに行ったらしい。
剛腕王ガルガンディス・ネッツギーナの武勇伝は吟遊詩人の唄になり、物語として本になると大人気となり、未だに各家庭に常備されているほどの人気の本だ。
それ以外に人気なのは『ポルポンタス砦の戦い』『マドレーヌ南部戦戦記』、子ども向けに人気があるのが『狂戦士モレのたたかい』だ。
物語なので友情や裏切り、もちろん恋愛の要素もないわけではないけど、とにかく戦って、戦って、戦って、戦って勝つことが至上命題。
だからワタシの拙い物語を読んだ時のラクシュエル様の感動はすごかった。
ワタシの実家は国境に近くて、外国から来た商人なんかも結構いる。その中の一人が、本屋を開こうと外国の本を持ち込んできた。まあ、禁書とは言わないけど、外国の思想が入るって事で警吏に睨まれちゃって、商人さんは泣く泣く帰って行ったんだけど、その時安く手に入れた本がワタシの宝物だ。
擦り切れるほど読んで、読むだけで満足できなくて、ちまちまと書き綴っていた創作ノートを学園で落とした。
そういえば拾ったのは同じクラスのリグリーだったな。
「あれ⁉︎ノートがない…」
昼休みに図書館で物語の続きを書こうと思ってカバンを開けた時に、大切な創作ノートがないことに気付いたワタシは軽いパニックになった。「ノートがない」とカバンをガサガサと、机の周りをキョロキョロしているとリグリーが声をかけてきたのだ。
「あの、ノートってもしかして、臙脂色の表紙の?」
「そう、それ!!もしかして見た?」
「ああ、誰のノートかわからないから、事務室に持って行ったけど……」
「ええ~っ!教室に落ちてたんだから、周りに聞いてくれればよかったのに!」
「あ、そうか。ごめん。」
パニックで捲し立てたワタシに、リグリーは困った顔で小さく謝ってくれた。
今ならわかるけど、リグリーは結構気が小さくて、入学したてのクラスで人に聞くなんてできなかったんだよね。
「え、じゃあ事務室にあるのね。」
「うん。…たぶん。」
事務室ってどこだっけ?
てゆーか!中身を見られたらマズイ!!!
「えっと、貴方…」
「あ、リグリー。リグリー・トエル。」
「ワタシはフラン・ナーロよ。リグリー、悪いんだけど、事務室まで一緒に行ってくれない?ワタシまだ校内がよくわからなくて。」
「ああ、いいけど…」
人の良いリグリーは事務室までついてきてくれそうだ。引っ張って教室を出ようとしたところで、扉のところから「きゃあっ!」という黄色い悲鳴が聞こえ、覗き込んでいる王子様と目が合った。
「やあ、リグリー・トエル君はいるかな?」
その王子様スマイルに、顔に熱が上がったような気がした。
「俺だけど…?」
「君が拾ったノートについて聞きたいことがあるんだ。一緒に来てくれるかい?」
「「え?」」
顔に集まった熱が一気に血の気が引いた。
「あ、あのノートはワタシのです!彼は、リグリーは拾っただけで、外国のとか変な思想とかっ持っていませんっ!!!
だから処罰ならワタシだけが受けます!」
「「はあ??」」
それから大爆笑のダイアンに、ラクシュエル様の演劇部まで連れて行かれ、あれよあれよという間に、ワタシとリグリーは演劇部に所属していたのだ。
ちなみにノートは、どうなったのかわからないが、ラクシュエル様の手元に渡っていたのだ。
ワタシの物語を読んであんなに喜んでくれたラクシュエル様のために、恋愛だけではない、何か楽しい物語を考えなくては。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!
翠月るるな
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。
侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。
そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。
私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。
この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。
それでは次の結婚は望めない。
その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
眠りから目覚めた王太子は
基本二度寝
恋愛
「う…うぅ」
ぐっと身体を伸ばして、身を起こしたのはこの国の第一王子。
「あぁ…頭が痛い。寝すぎたのか」
王子の目覚めに、侍女が慌てて部屋を飛び出した。
しばらくしてやってきたのは、国王陛下と王妃である両親と医師。
「…?揃いも揃ってどうしたのですか」
王子を抱きしめて母は泣き、父はホッとしていた。
永く眠りについていたのだと、聞かされ今度は王子が驚いたのだった。
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる