劇作家のタマゴは物語のような恋を妄想する

ぽよよん

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秘めたる?コイ?

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「ここはどこだ?」

 周りを見渡せど木、木、木。
 裏庭の散策路を歩いていただけなのに、ワタシは森で迷子になっているという。どういうことかしらっ!?

 


「おい、女だ!」
「へへっ。こんなところを一人で通るなんてな。」

 木々の間から現れたのは、薄汚れた格好をした男たちだ。手には錆びた剣や、太い木の棒を持って、これ見よがしに脅してくる。

「な、なんですか!貴方たちは!」
「貴方達だってよっ!!」
「お上品なお貴族様だあな!まずはそのお高そうなドレスを脱いでもらおうか。」
「くくくっ!大人しくしてりゃ命まではとらないさ。」

 男達の下卑た視線に足が震える。
 それでもジリジリと後ろに下がろうと、した途端木の根に足を取られて転んでしまった。
 その隙を逃さず、男達の手が伸びて…。

「きゃああっっ!!誰か!助けてー!!!」

 力のかぎり叫んだ、その時ーーー



『「うおおおっっっ!!!!」』

「ひゃあ!!」

 颯爽と登場する白馬の王子様の妄想をしたところで、妄想より2割マシくらいの力強い雄叫びに変な声が出てしまった。
 声と何やら破壊音がする方向に行ってみると、そこは校舎裏の鍛錬場だった。

 鍛錬場の真ん中ではマクシミリアン第二王子殿下が、とんでもない勢いで剣を振るっている。次々と粉砕されていく木の人形が破壊音の正体だったのか。
 第二王子殿下が大剣振り、濃い茶色にも見える金の髪がまるで獅子のたてがみのようで、その力強い筋肉うでに握られた巨大な剣が、軽々と振り回されている。そして鋭く空を切る音と共に、木の人形は全て木っ端微塵に砕け散ったのだ。
 思わず拍手しそうになって、慌てて木の影に隠れる。第二王子殿下だけかと思っていたけど、そこに女生徒が立っていたのだ。どこかで見たことがある赤みがかった、いや柔らかな桃色の髪をふわりとさせて、第二王子殿下に近づく。

「マクシミリアン殿下。お疲れ様でした。」
「ああ、ミーシャ嬢。」

 そうだ!ミーシャ・ブラウン。最近第二王子殿下の側に、まるで婚約者のように寄り添っているのが彼女だ。あの学園祭ののときもいた…ような気がする。多分。第二王子殿下の完コピとラクシュエル様の悪役令嬢という衝撃が強すぎて曖昧だけど…。

「生徒会室にタオルをお忘れになってましたわ。どうぞ。

 はにかんでタオルを渡す美少女と受け取る美丈夫!絵になる!絵になります~!!

「マクシミリアン殿下。あの、特製の疲労回復ジュースを作ってきたのですが、いかがですか?」
「……いや、すまない。決められた場所以外では飲食しないんだ。」
「……そうですよね。申し訳ございません。」

 おおっ!しゅんとなる美少女に罪悪感を抱いたか!苦悶の表情もちょっと絵になります!!あ、片手をあげて、ミーシャ嬢の肩に…触れない!堪えた!堪えた表情で去っていく第二王子殿下!!!脳筋らしくないけど、その表情にキュンキュンします~!!!

 メモしなくちゃ!!

 肩掛けのバックを開けて、ノートネタ帳をゴソゴソと探していると、すぐ横に人の気配がっ!?

「ねえ。貴女何してるの?」
 
 先程までの愛らしい顔はなりを潜めたミーシャさんがこちらを睨んで立っています。

「まさか、マクシミリアン殿下狙いでここにいるのかしら?」

 腕を組んだまま、若葉色の目を半眼にして睨んでくる様はヒロインとは言えない。どっちかというと悪役令嬢?

「残念だけど、マクシミリアン殿下は差し入れは受け取られないわ。」

 打って変わって優しそうに忠告っぽくしてるけど、牽制ですよね?どう、答えれば正解?

「そ、うなのですか?」
「ええ、そうよ!!マクシミリアン殿下は王族だから、食べ物や飲み物はたとえ親しい友達からのものでもお受け取りにならないわ。」

 はあ、と生返事をしたけど正解だったのかな?
 ミーシャさんは頷きながら、いかに第二王子殿下がストイックに差し入れを受け付けないか語っている。

「今日もタオルは受け取ってもらえたから、いつかお手製ジュースも受け取ってもらえるよう頑張るのよ!!」

 そう言ってワタシの目の前に出されたガラス瓶には、なにかドロリとした紫色で呪われた沼のようなものが入っている。日の当たり方で緑に見えるのが余計に呪われた感を倍増している。

「これは飲み物ですか?」
「特製疲労回復ジュースよ!!」

 どやあって可愛い顔で言うけど、第二王子殿下はストイックに受け取らないんじゃなくて、呪われた沼の水だと思って受け取らなかったのではないだろうか。と思うけど、口に出すことは出来なかった。
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