如何様陰陽師と顔のいい式神

銀タ篇

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炎上、輝く君

04-02:陰陽師は愚痴る

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 呼び出しを受けて陰陽寮へ出向いたはずの昂明だったのだが、何故か先達の陰陽師の面々に邪魔者扱いをされてしまった。

『仮にも主上の御前で御祈祷を行うのだ。お前のような新入りが行っていい場所ではない』

『お前、巷では如何様兄さんと呼ばれているそうだな。そんな胡散臭い奴を主上の加持祈祷などに連れていけるものか』

 と一蹴され、全く相手にする様子もない。代わりと言っては何だが、面倒な雑務を押し付けられて厄介払いされてしまったのだ。
 しかし、嫌な奴というのは油断も隙も無い。市人達に昂明がそう呼ばれているのをどこからか聞きつけたらしく、しきりにそのことを揶揄してくる。

「どれだけ見くびられているのかと思うと、悔しいやら情けないやら……」

 帝の祈祷に興味はないが、ぞんざいな扱いをされるのは腹立たしい。話しながらもその時のことが思い出され、つい怒りが表情に出てしまう。自分を見つめる銀の表情からは『ああ、苦労したんだな』いう気持ちがありありと見て取れた。

「多分、この前幽霊を祓ったと評判になったのが、よっぽど気に食わなかったんだろうなぁ」

 幽霊を祓った――それは先日、兄の頼みで請け負った四条大路の幽霊騒ぎのことだ。結局幽霊の正体は、すぐ傍の邸に住まう兵部卿の二の姫の仕業だったのだが。穏便にこの件を済ませる為、昂明が式神と共に幽霊を祓った、というようなことにした。思いのほかその話は内裏にまで広まってしまい、結果陰陽寮の先達に睨まれることになってしまったのだ。

「結果的に陰陽師としての評判が上がったのなら良かったんじゃないか?」
「良くない!」

 茶化すようにそう言った銀の言葉を間髪入れずに否定する。

「俺は一々上に気を揉みながら生きていくのは嫌なんだよ。適当の地位で、適当に気楽に生きていけるくらいで丁度いい」

 何より陰陽師としての評判が上がっても、どうせ上には賀茂と安倍がいる。天文博士には晴明の息子の安倍吉昌、陰陽助にも同じく息子の吉平。どちらもいずれ劣らぬ優秀な人物だ。そんな中で自分がは目立つのは損だ。程よく目立たないところでのんびりとやる方が性に合ってる。

「なんだ、欲の無いやつだな」

 欲が無いと言えば聞こえがいいが、単に面倒事が嫌いというか。

「それよりこの前五条大橋で火事があっただろう。それで一応解除の儀式をしとけっていう話だ」
「成る程」

 陰陽師の役目は暦を作るだけでも加持祈祷だけでもない。災いなどが起こった時に行う祓なども陰陽寮の陰陽師の仕事であるのだ。

 五条大橋というのはその名の通り五条大路にある橋のことで……燃え落ちた訳ではないのだが、橋の一部が燃えたらしい。それでちょっとした騒ぎになっていた。

「まあ、ある種の形式的儀礼みたいなもんだ。幸い大事に至らなかったわけだし。気楽なもんさ」
「じゃあ、いつ行くんだ?」
「今から行く。今日の明日で『まだ行ってないのか』とも言われかねないからな」

 ただでさえ肩身が狭い立場だ。後で後でとしておいたらいつ何時「まだなのか」と言われかねない。
 そんな訳で、昂明は銀と共に早々に五条大橋へと赴くことにした。
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