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炎上、輝く君
04-05:輝かない君
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左大臣の嫡男である近衛中将の邸ともなれば、都の中でも指折りの広さと評判だ。位階こそまだ近衛中将だが、いずれは大臣も遠くないと噂されるほどなのだとか。政治の手腕としてはさほど有能な男には見えないのだが、実力よりはやはり生まれと貴族たる立ち振る舞い。そういった素養も上のものには重要なのだと、牛車の中で晶朝は熱く語っていた。やはり殿上人を目指す者は熱意が一味違う。
……なれるかどうかはさておいて。
「御無沙汰しております。近衛中将さま」
昂明が恭しく頭を下げると、待ってたとばかりに御簾を押し上げ輝く君は昂明達に近寄った。いきなり昂明の手を握ると涙声で懇願する。
「おお、そなたたちは! 先日は本当に世話になりました。そしてどうかまた力を貸して欲しいのです!」
突然のことに思わず驚いてのけぞってしまった。
「ええ、勿論そのつもりで我々は参りました。……こちらは私の兄で式部少丞を務めております、晶朝です」
兄の一番の要望を叶えるべく、すかさず兄の紹介を挟む。その後何事もなかったように本題に戻った。
「……それで、今近衛中将さまは大変なことに巻き込まれておられるようですね」
「実は、そうなのです……」
「濡れ衣を着せようとするような者に心当たりはありませんか?」
「すぐには浮かびませんね」
「姫君に恨まれているといったことは……例えば、数多の姫の元に通いすぎて久しく訪れていなかった姫君とか……」
「それはあるやもしれぬなあ」
あるんかい。
左兵衛佐の一の君と兵部卿の二の姫のことを頭に浮かべながら言ったのだが、この様子では他にも同じような姫がいそうだ。思わず昂明は額を押さえる。
「今回のことには関係無いのかもしれませんが、そのようなことをしておられると姫君にいつ恨まれてもおかしくありませんよ」
「め、面目ない陰陽師殿……」
輝く君は何故か年下の、それも位階の低い昂明に平謝り。
そしてそれを見守る晶朝は、目の前で繰り広げられる光景を見て真っ青になっている。
「晶朝兄、大丈夫だ。前回お会いした時もあんなやりとりだったから」
そんな晶朝の様子を察して銀がそう言ったのだが、もはや晶朝には聞こえていないらしい。虚空を見つめ、ぶつぶつと何かに向けて祈っている。
昂明はそんな晶朝には目もくれず、尚も輝く君に質問を続けた。
「ところで――橋台を燃やした、ないし燃えていた場所にいたのは本当に近衛中将さまなのですか?」
「それなのですが……私は件の日に五条大橋には行ってはおらぬのです」
「なんだって?」
まさかの発言に、昂明は思わず声を上げる。
そもそもとしてだ。
もし輝く君がもとより五条大橋に行っていなかったのだとしたら、目撃したという情報自体が間違いということになる。
やはり目撃したという橘の使用人が怪しいのか。それとも輝く君に成り済ました何者かがいたのか。
「では、姫君以外で政敵などの……近衛中将さまが居なくなることで得をする者にお心当たりは御座いませんか?」
「ううむ、そうですね……」
……なれるかどうかはさておいて。
「御無沙汰しております。近衛中将さま」
昂明が恭しく頭を下げると、待ってたとばかりに御簾を押し上げ輝く君は昂明達に近寄った。いきなり昂明の手を握ると涙声で懇願する。
「おお、そなたたちは! 先日は本当に世話になりました。そしてどうかまた力を貸して欲しいのです!」
突然のことに思わず驚いてのけぞってしまった。
「ええ、勿論そのつもりで我々は参りました。……こちらは私の兄で式部少丞を務めております、晶朝です」
兄の一番の要望を叶えるべく、すかさず兄の紹介を挟む。その後何事もなかったように本題に戻った。
「……それで、今近衛中将さまは大変なことに巻き込まれておられるようですね」
「実は、そうなのです……」
「濡れ衣を着せようとするような者に心当たりはありませんか?」
「すぐには浮かびませんね」
「姫君に恨まれているといったことは……例えば、数多の姫の元に通いすぎて久しく訪れていなかった姫君とか……」
「それはあるやもしれぬなあ」
あるんかい。
左兵衛佐の一の君と兵部卿の二の姫のことを頭に浮かべながら言ったのだが、この様子では他にも同じような姫がいそうだ。思わず昂明は額を押さえる。
「今回のことには関係無いのかもしれませんが、そのようなことをしておられると姫君にいつ恨まれてもおかしくありませんよ」
「め、面目ない陰陽師殿……」
輝く君は何故か年下の、それも位階の低い昂明に平謝り。
そしてそれを見守る晶朝は、目の前で繰り広げられる光景を見て真っ青になっている。
「晶朝兄、大丈夫だ。前回お会いした時もあんなやりとりだったから」
そんな晶朝の様子を察して銀がそう言ったのだが、もはや晶朝には聞こえていないらしい。虚空を見つめ、ぶつぶつと何かに向けて祈っている。
昂明はそんな晶朝には目もくれず、尚も輝く君に質問を続けた。
「ところで――橋台を燃やした、ないし燃えていた場所にいたのは本当に近衛中将さまなのですか?」
「それなのですが……私は件の日に五条大橋には行ってはおらぬのです」
「なんだって?」
まさかの発言に、昂明は思わず声を上げる。
そもそもとしてだ。
もし輝く君がもとより五条大橋に行っていなかったのだとしたら、目撃したという情報自体が間違いということになる。
やはり目撃したという橘の使用人が怪しいのか。それとも輝く君に成り済ました何者かがいたのか。
「では、姫君以外で政敵などの……近衛中将さまが居なくなることで得をする者にお心当たりは御座いませんか?」
「ううむ、そうですね……」
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