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炎上、輝く君
04-06:疑わしきものたち
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輝く君が挙げたのは名だたる公卿たち。しかも一人ではなく六人。いかに輝く君に敵が多いかがよく分かる。
――左近衛大将 丹波澄明。最近は出世も目覚ましい輝く君に、いつ寝首をかかれるのではないかと気が気ではないという話だ。しかし、当の輝く君本人は「できればもっと穏やかな仕事がしたい」と専ら零しているのだが。
――弾正大弼 大見義詮。輝く君とは比較的年齢も近しいらしく、宮仕えする前から敵視していたらしい。詳しくは分からないが、かなり裕福であまり柄の良くないもの達が邸を出入りしていると聞く。
――兵部卿 橘初実。輝く君が、かつて足繁く通っていた伎梅姫こと二の姫の父でもある。実は二の姫を東宮妃にしたいと常々思っていたそうなのだが、知らぬうちに輝く君といい仲になってしまったので怒りに燃えているらしい。
更に言うなら今、二の姫の元に足繁く通っているのは昂明の兄である弘継なので正直これに関してはなんとも言い難いと思う。
――中宮大夫 源朝臣高広は先帝の血筋だが臣籍降下を命じられ源の姓を賜った。輝く君とは歌合などで何度も競い合うことも多く、何かにつけて比べられることも多いそうだ。とはいえ輝く君をもってしても血筋は中宮大夫の方が勝っているだろう。
残りの二人についても輝く君の色恋周りの話だが、放火の罪を擦り付けられる程には力は無いと思われる。
「怪しいものは出揃ったようだが、この後一体どうするつもりなのだ?」
輝く君の邸を後にした帰り道、牛車の中で晶朝が聞いてきた。言わんとすることは昂明も良く分かっているつもりだ。
「僕達だけで事をどうにかしようとするのは、少し荷が重いな。この件は」
それまでずっと聞いていた銀もおもむろに話し始める。
「なにせ単なる失せもの探しやちょっとした騒動とはわけが違う。検非違使庁の者達が既に関わっていて、更には輝く君が疑いを掛けられている。しかも政敵達を調べるなら当然相手は輝く君と同等かそれ以上の位階の者が殆どだ。亡くなった昂明の爺様ならまだどうにかなったかもしれないが……」
普段寡黙がちな銀が珍しく良く話す。そしてそれは、それだけ昂明や晶朝、弘継のことを心配しているということなのだ。
そしてその懸念はとても正しい。
いくら怪しいと騒ぎ立てたとて、所詮は下っ端の戯言。殿上人達に届くはずも無い。下手をしたら己の命すら危ういかもしれないのだ。
式部省に戻るという晶朝の為、大内裏の入り口で昂明達は牛車を降りる。それではまた……という所で晶朝が昂明達を呼び止めた。
「陰陽寮の安倍吉昌殿と安倍吉平殿に相談してみてはどうだ?」
確かにその二人なら、昂明の話を聞いてくれるだろう。しかし、昂明が考えている事を聞き届けて貰うには少々苦労させてしまう可能性もある。
流石にそれは、世話になっている人達に迷惑がかかってしまい、本末転倒だ。
「んー……確かにそれが良いかと思います。しかしそれならいっそ、奥の手を使ってしまった方が早いかもしれませんね」
「奥の手?」
銀の言葉にそうだと頷く。
とっておきの――奥の手なのだ。
――左近衛大将 丹波澄明。最近は出世も目覚ましい輝く君に、いつ寝首をかかれるのではないかと気が気ではないという話だ。しかし、当の輝く君本人は「できればもっと穏やかな仕事がしたい」と専ら零しているのだが。
――弾正大弼 大見義詮。輝く君とは比較的年齢も近しいらしく、宮仕えする前から敵視していたらしい。詳しくは分からないが、かなり裕福であまり柄の良くないもの達が邸を出入りしていると聞く。
――兵部卿 橘初実。輝く君が、かつて足繁く通っていた伎梅姫こと二の姫の父でもある。実は二の姫を東宮妃にしたいと常々思っていたそうなのだが、知らぬうちに輝く君といい仲になってしまったので怒りに燃えているらしい。
更に言うなら今、二の姫の元に足繁く通っているのは昂明の兄である弘継なので正直これに関してはなんとも言い難いと思う。
――中宮大夫 源朝臣高広は先帝の血筋だが臣籍降下を命じられ源の姓を賜った。輝く君とは歌合などで何度も競い合うことも多く、何かにつけて比べられることも多いそうだ。とはいえ輝く君をもってしても血筋は中宮大夫の方が勝っているだろう。
残りの二人についても輝く君の色恋周りの話だが、放火の罪を擦り付けられる程には力は無いと思われる。
「怪しいものは出揃ったようだが、この後一体どうするつもりなのだ?」
輝く君の邸を後にした帰り道、牛車の中で晶朝が聞いてきた。言わんとすることは昂明も良く分かっているつもりだ。
「僕達だけで事をどうにかしようとするのは、少し荷が重いな。この件は」
それまでずっと聞いていた銀もおもむろに話し始める。
「なにせ単なる失せもの探しやちょっとした騒動とはわけが違う。検非違使庁の者達が既に関わっていて、更には輝く君が疑いを掛けられている。しかも政敵達を調べるなら当然相手は輝く君と同等かそれ以上の位階の者が殆どだ。亡くなった昂明の爺様ならまだどうにかなったかもしれないが……」
普段寡黙がちな銀が珍しく良く話す。そしてそれは、それだけ昂明や晶朝、弘継のことを心配しているということなのだ。
そしてその懸念はとても正しい。
いくら怪しいと騒ぎ立てたとて、所詮は下っ端の戯言。殿上人達に届くはずも無い。下手をしたら己の命すら危ういかもしれないのだ。
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「んー……確かにそれが良いかと思います。しかしそれならいっそ、奥の手を使ってしまった方が早いかもしれませんね」
「奥の手?」
銀の言葉にそうだと頷く。
とっておきの――奥の手なのだ。
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