魔法少女レゾンデートル

宮本某

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2.使徒アル

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 ボクたち〝使徒〟は君たちの時空とは別の場所に存在する世界からやって来たんだ。その目的はズバリ、人間の幸せを願うこと。

「それは対価もなしに他人の——異種族の幸福を願うのか? それとも表面的にないように見えるだけで、実のところは目には見えない数値が減っているとか……そういうことなのか?」

「目に見えない数値?」

「例えば寿命や、一生分の運。もしくは正気度や、もしくはもっと物理的な——」

「なにそれ、怖い」

 いやいや、そんなのないからっ。

 ボクたちは人間が幸福を感じた際に生じる感情で生きているんだよ。何しろ、ボクたち〝使徒〟は君たち人間の善性から生まれた存在だから。

 君たちは普段生活している中で、ちょっとした幸運に遭遇したことがあるだろう。駄菓子屋のくじ引きや自動販売機で当たりを引いたり、なくしたと思っていた物がひょんなことから見つかったり。

「駄菓子屋……?」

「自動販売機の当たり……いや、ないな」

 えっ。君たち駄菓子屋知らないの? 自動販売機の当たりとか。一本買ったらもう当たりでもう一本出てくるあれだよ?

「そもそも駄菓子屋を見たことがないし、自動販売機に当たりなんて付いていたか?」

「うん。わたしも知らない」

 えぇぇ……今の子供って知らないんだ……地味にショックだなぁ……。

「失せ物もしたことがない。自己管理を徹底していれば当然のことでは?」

「わ、わたしはあるなぁ……でも大体は明貴くんが見つけてくれるし」

「ゆかりはもう少し整理整頓ができるようにした方がいい」

「はーい」

「フッ……返事だけは、調子が良いな」

 うん、君たちが立派な子供だってことはわかったから、話戻していい? 戻していい?

 とにかく、ボクたち〝使徒〟は人間が幸福を感じてくれると幸せになれるんだ。今日もどこかで〝使徒〟たちが活躍して、君たちに幸せを振りまいていることだろう。

 さて、どうしてボクがここ人間界にやって来て、ゆかりと知り合ったかなんだけれど。〝使徒〟は確かに幸せを振りまく存在なんだけれど、その力を使い方を間違えば、一転して人間を不幸に陥れてしまうことだってあるんだ。そうならないように、一人前の〝使徒〟になるための修行期間が設けられているのさ。

 その期間、半人前の〝使徒〟たちは特定の人間の前に姿を現して、修行を手伝ってもらうんだ。

「なぜわざわざ人間が手伝う必要がある」

「それは僕らにもわからない。そういうものだということしか。ただこの修行は一人前へ至るための最終工程でもあって、無事に行程を終了することができると、その際に協力者の願いをひとつだけ叶えることができる仕組みになってるんだ」

「…………」

 な、なんだいその目は。ボクを疑っているのかい?

「……いや、どこかで聞いたことのある話だと思って。まぁいい。それで白羽の矢が立ったのが、ゆかりなんだな?」

 ご察しの通りさ。前もって調べたところ、ボクと最も相性の良い人間は小野ゆかりだということがわかったんだ。だから彼女に協力を申し出たというわけさ。

「うん。だからわたし言ったの。願いなんていいから、協力させてって」

「……。……どうしてそうなる?」

「だって困ってる人を放ってはおけないじゃない!」

「人じゃない。ハァ……そんなことで——いや、たしかに立派な理由であるが、それは少し軽率過ぎやしないか。ご両親に相談はしなかったのか」

「こんなこと相談できないよぉ。それにお母さんたちにはアルくん、見えないし」

 普通の人間にボクたち〝使徒〟の姿は見えないよ。〝使徒〟と契約を結んでいる人間でないと、僕たちの姿を捉えることはできないんだ。

 君はボクとゆかりが認可したから姿が見えるようになっているけれどね。

「どのみちもうアルくんと契約しちゃったし、こうなったら最後まで同じ道を走り続けようと思うの」

「……ちなみに契約の破棄は?」

 残念だけど、それはできない。一度契約したら目的を達成するまで破棄することはできない仕組みになってるんだ。

「ふむん。……成程な。世の中にはこういうことも、あるのかも知れん」
 
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