この世界はバグで溢れているのでパーティに捨石にされた俺はそのバグを利用して成り上がります

かにくくり

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第8話 訓練なんか真面目にやってられない

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「それではバランドル将軍、演習場に兵士を集めて下さい」

「……分かった。少し待ってろ」

 御前試合が終わり、バランドル将軍の治療が終わると、早速兵士の訓練を始める事にした。
 バランドル将軍が兵士達に招集命令を発すると、瞬く間に演習場に兵士が集まってきた。

 王都を守る兵は総勢三万人。広大な演習場はあっという間に兵士で埋まった。
 しかし頭数が多くても所詮は烏合の衆。
 俺の見立てでもひとりひとりは大して強くない。
 実戦を経験していない者が大半なので、ほとんどレベル1だ。

 レベル10の冒険者である俺の方がまだ強いだろうな。
 魔王軍が侵攻して来たらひとたまりもないだろう。

 俺は今から三日間で……いや、御前試合を行う為に半日潰してしまったので、後二日と少々で彼らを精鋭に鍛え上げなくてはならない。

「整列!」

 バランドル将軍の大声が響き渡り、兵士達はびくびくしながら整列をする。

 元々俺とバランドル将軍の二人で兵士達の訓練を行う予定だったが、御前試合を見ていた騎士達にも思うところがあったようで、新たに十名の騎士が教官として協力を名乗り出てくれた。

 俺は各騎士にはそれぞれ三千人ずつを見てもらうよう要望を出す。

「マールさん、任せて下さい」

 騎士達は快諾する。
 兵士達の振り分けが終わると、俺は皆の前に立ち訓練の開始を宣言する。

「俺は総教官のマール・デ・バーグです。これより今日を入れて三日間で皆さんを精鋭部隊に鍛え上げます。誰一人脱落はさせません」

 僅か三日という言葉に兵士達がざわめく。
 しかし俺は気にも留めずに続ける。

「それではまず隣り合った者同士で二人組を作って下さい」

 俺の指示で騎士達が動き、一万五千の組が作られた。

「それではこの二人一組で模擬戦を行います」

「模擬戦……ですか?」

 今兵士達が持っている剣は訓練用の木刀ではなく、本物の剣だ。
 これで斬り合えば間違いなくけが人が続出する。
 当然兵士達からも疑問の声が上がる。

「総教官! 我々は訓練用の剣を持っていません! 真剣で斬り合うなど無茶です!」

 実際に斬り合えばその通りだろうな。
 しかしその必要はない。
 俺は説明を続ける。

「模擬戦と言っても、実際に斬り合う訳ではありません。剣を振ろうと心の中で思うだけで良いです。そうすればけが人が出る事はありません」

 つまり剣を振るフリをしろという事だ。

「マールさん、さすがにそれは意味がないんじゃないですかね?」

 教官役の騎士の一人が当然の疑問を俺にぶつけるが、俺も口ではそれ以上説明できない。
 実際にやってもらうしかない。

「マール殿がああ言ってるんだ。黙って言う事を聞け」

「は、はいっ、バランドル将軍」

 渋る騎士をバランドル将軍が一喝すると、騎士達は慌てふためいて兵士の訓練を開始した。

「バランドル将軍、助かります」

「べ、別に貴様の為ではない。貴様が今から何をするのか、自分の目で確かめてみたいだけだ」

 そう言い捨ててバランドル将軍はぷいっと背を向ける。
 おっさんのツンデレは別にいらないなあ……。

 演習場には異様な光景が広がっていた。
 兵士達は互いに向かい合い、剣を振り上げたと思ったらそのまま力を抜いて剣を下す。
 それが日が暮れるまで繰り返された。

「はい、今日はここまで!」

 俺の号令で、兵士達の動きが止まる。

「総教官、俺達今日一日何をしてたんでしょうか。本当にこんな事で強くなれるんでしょうか」

 兵士達の疑問も分かる。
 しかしこの世界の人間にバグについて説明をする事は難しい。

 原作では戦闘中に同じコマンドを選び続けると、その分熟練度が上昇する。
 例えば剣で敵を攻撃するとその度に剣の熟練度が上昇し、やがてはソードマスターの域まで達する事ができる。
 ここまではよくあるシステムだ。

 問題のバグはここからだ。

 攻撃コマンドを選択した後でキャンセルをすると、何故か実際に攻撃を行ったと認識され、熟練度が上昇するのだ。
 攻撃を選択、キャンセル、もう一度攻撃を選択、キャンセルを繰り返すと、延々と装備している武器の熟練度が上昇し続ける。
 ゲーム開始直後にザコモンスター相手にこれをやり、全ての武器の熟練度をMAXにしてから冒険を始めるプレイヤーも珍しくない。
 実際に戦っている訳ではないのでレベルは上がらず、基礎的な身体能力パラメータはそのままだが、武器の熟練度が上がればその武器を装備している時に攻撃力、守備力、命中率、回避率等に補正が掛かる。
 例えレベル1でもこの辺りに出現する魔物程度なら楽に勝てるようになっているはずだ。

 今回はそれを兵士達にやらせた訳だ。

 俺も熟練度は上げておきたかったのでさりげなく兵士達と一緒にこれをやっていた。
 何せ俺はレベルが10までしか上がらないキャラクターなので、そのハンデを熟練度で補うしかないのだ。

 俺は兵士達に今日一日の訓練を所謂いわゆるイメージトレーニング的なものと説明した。

 それでも納得できない兵士がいたので、今度は兵士の中から適当に二名を選んで安全な訓練用の模造剣を渡し、手合わせをしてもらう事にした。

 二人の兵士は演習場の中央で模造剣を構え、俺の合図と同時に模造剣を振るう。

「えいっ!」

「ちぇすとぉっ!」

 その太刀筋は素人のそれとは目に見えて違っていた。
 一人が剣を振り下ろすと、もう一人の兵士はその動きに反応し、華麗に受け止める。
 斬り合う二人の兵士も、それを見ている兵士達も一様に驚きの声を上げる。

「俺達、本当に強くなってる……」
「すごい、これなら魔物が襲撃してきても怖くないぞ」

「総教官殿! 失礼な事を言って申し訳ありませんでした!」
「明日もご指導の程、よろしくお願いします」

 現金なものだ。
 しかしこれで明日の訓練もスムーズに進められるだろう。

「はい、お疲れ様でした。それじゃあ今日はこれで解散!」

 兵士達の剣の熟練度は充分に上がったので、明日はレベル上げ目的で近くの森で魔物相手に実戦訓練でもさせてみようかな。
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