この世界はバグで溢れているのでパーティに捨石にされた俺はそのバグを利用して成り上がります

かにくくり

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第17話 海に出よう

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 魔獣の森から帰ってきた翌朝、俺とユフィーアは冒険者ギルドにやってきた。

 ざっと眺めたが、レイミルさんの姿は見えない。

 昨日の今日で顔を合わせるのも気まずいので、かえってよかったかもしれない。

 馴染みの冒険者達と軽く雑談をした後、掲示板をチェックする。
 昨日は自分達のクエストを受注できなかったので、今日こそユフィーアに選ばせるつもりだ。

「ユフィーア、この中に気になるクエストはある?」

「うーん、そうですねえ……」

 ユフィーアは依頼書を順番に眺めて吟味し、その内の一つに指を差す。

「これなんてどうでしょう」

「どれどれ……」

 依頼書にはこう書いてある。

 依頼内容、港町フェルトからラマーゼン諸島への貨物船の護衛。
 推奨レベル70。
 推奨人数は4人。
 推奨パーティは海賊三人と治癒士ヒーラーの海戦特化型。

「海戦特化型とか、これまたニッチなものを選んだね」

 それに推奨レベル70とは普通じゃない。
 レベル70以上の海戦特化型パーティとか、下手なS級パーティよりもレアなんじゃないだろうか。
 恐らく、海上に強力な魔獣でも現れたんだろうな。

「海上交易路の確保はそのまま国益に繋がりますからね。やりがいのあるクエストです」

 なるほど、元王国の騎士だけあってユフィーアらしい理由だ。
 それに元騎士ならば誰かを守りながら戦うのも得意だろう。

 問題は、それが船の上という事だ。
 陸上と船の上では勝手が違う。

「ユフィーアは海戦の経験はある?」

「はい、何度か外交使節団の護衛の任務を経験した事があります。一度リバイアサンに襲われた事がありましたが、誰一人怪我を負わせる事なく撃退しましたよ」

 ユフィーアは胸を張り自信満々に答える。
 原作ではユフィーアが海戦を行うシーンは無かったので念の為に聞いてみたが、杞憂だったようだ。

 俺は依頼書を剥がして受注者欄にサインをし、受付へ持っていく。

 受付嬢はこのクエストを受注するパーティがいるとは思わなかったようで思わず依頼書を二度見する。

「二人パーティでこのクエストに挑戦するんですか? うーん……でもまあ勇者ユフィーア様なら何とかなりそうですね。はい、確かに受注を承認しました」

 ユフィーアの騎士時代の活躍を知らないレイフェス王国民はいない。
 彼女への信頼度は相当なものだ。
 俺の事を触れられなかったのは少々不満ではあるが、おかげで無事にクエストを受注する事ができた。

 俺達は海戦に備えて充分な数の弓矢を買い集め、王都の西にある港町フェルトへ移動する。



◇◇◇◇



 港町フェルトへ到着すると、ギルドから連絡を受けていた貨物船のクルー達が俺達を出迎える。
 その中で一際体格のいい虎髭の中年男性が前に出る。

「俺は船長のトリトンだ。あんた達の事はよく知ってるぜ。竜殺しドラゴンスレイヤーの勇者ユフィーアにことわりの勇者マールといえば今やこの国じゃ知らない者はいないだろうな。あんた達が来てくれたなら安心だ。宜しく頼むぜ」

 そう言ってトリトン船長はユフィーアに握手を求めて手を差し出す。
 いかにも海の荒くれ者といった感じの威勢のいい好漢だ。

 パシッ。

「え……?」

 しかしユフィーアは無情にもその手を払い除けた。

 彼女の予想外の反応に、俺を含めて周囲に緊張が走る。
 トリトン船長は驚いて目を丸くするが、すぐに我に返って謝罪をする。

「おっとすまねえ、俺のような人種が騎士様に対して気安く握手なんて求めちゃいけねえよな、やっぱり」

「俺達のキャプテンは誰にでもこんな感じなんだ。礼儀知らずなだけで悪気はないから許してやってよ」

 他のクルー達もトリトン船長を庇うが、ユフィーアの冷たい反応の理由は彼らの想像とは違っていた。
 ユフィーアは語気を荒げて言う。

「そんな事ではありません。【ツヴァイ】のリーダーはマール様です。マール様を差し置いて私にそのような話をするのはおかしいと言っています」

「え? そっち?」

 その言葉にクルー一同がユフィーアを見る目が変わる。

「てっきり彼女がリーダーだと思ってた」

「騎士が平民出身のマールさんの下についているのか?」

 厳密にはリーダーとそれ以外の仲間に上下関係はない。
 俺は【トライアド】に所属していた時はずっと下っ端扱いだったので全然気にもしていなかったが、縦社会である騎士団出身のユフィーアにはそれが許せなかったようだ。

「騎士ってのはもっと鼻持ちならない奴ばかりだと思っていたが、考えを改めなければいけないな。マールさん、改めて宜しく頼むよ」

「あっはい」

 トリトン船長は俺と握手を交わした後、改めてユフィーアに握手を求める。

「こちらこそ宜しくお願いします」

 ユフィーアは今度は快くそれに応じた。

「さて、じゃあ仕事の話をしようか。と言っても依頼書の通りだ。俺の船が無事ラマーゼン諸島に到着できるように、道中の魔物を駆逐してもらいたい」

「そういえばやけに推奨レベルが高かったんですが、交易路に強力な魔物でも現れたんですか?」

「ああ、なんでも最近クラーケンが出たそうだ。既に俺の知り合いの船も一隻沈められてる」

 クラーケンとは、タコのような姿をした巨大な魔物だ。
 性格は獰猛で、船が近くを通ると触手を絡めつけて沈めてしまう。

 原作でも中盤の強敵として登場するが、ユフィーアなら余裕で倒せるだろう。

「それで、出港はいつですか?」

「ああ、これから積み荷をするから出港は明日の朝になるな。なんせ受注してくれるパーティがいるとは思わなかったから、まだ全然準備ができてないんだ。今日はこの町の宿にでも泊まってくれ」

 トリトン船長は豪快に笑いながら言う。

「分かりました。では明日の朝にまた来ます。それで船は何処にあるんですか?」

「見ればわかるだろう。そこの港に停泊してるでっかい船……ありゃ?」

 トリトン船長が指を差す方向を見るが、港に停泊しているのは小さな漁船のみだ。

「なんでやねん! 漁船やないかーい!」

 俺はてっきり冗談かと思って突っ込んでみたが、船長は顔面を蒼白にしている。

「おいおい、これは悪い夢か……俺の船はどこにいった?」
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