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第28話 無敵の代償
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「ガオオオオーーン」
鼓膜が破れるかと思う程の咆哮と共にノコギリタートルの身体は更に眩い光を放ち、亀とは思えないような速さで突進してくる。
「こんなもの、私が正面から受け止めてみせます!」
「ダメだ、よけろユフィーア!」
「えっ!?」
ノコギリタートル自体はレベル30もあれば余裕で倒す事ができる魔獣だ。
しかしスターキノコを食べて無敵状態の今ならば話は違う。
その身体に触れただけで俺達の身体は吹き飛ぶだろう。
ユフィーアは直前でノコギリタートルの突進をかわすと、ノコギリタートルの身体は勢い余ってその先の樹木に激突する。
樹木はバキバキと大きな音を立てて圧し折れた。
スターキノコを食べた生物は無敵になるが、その効果時間は長くない。
俺達にできるのはそれまで逃げ続ける事だけだ。
ノコギリタートルはその後何度も俺達に突進を試みたが、猪のように一直線に進むだけなので避けるのは難しくなかった。
突進を繰り返すたびにノコギリタートルの身体から発せられている光は徐々に弱まっていき、やがて消えた。
それと同時にピタっと動かなくなる。
「動きが止まった!? マール様、チャンスです。今の内に──」
「いや、その必要はないよ。もう死んでるから」
「え?」
ユフィーアは知らないようだが、スターキノコには副作用がある。
強靭な肉体を手に入れる代償として、無敵時間中は身体中の細胞がオーバーヒートし、効果が切れた頃には完全に崩壊しているのだ。
ファンの間ではこれをタイムアップと呼んでいる。
無敵時間中に身体が光り輝くのは、細胞が燃焼しているからだ。
そして力尽きた者はそのままキノコたちの養分となる。
キノコを食べているつもりが実際はキノコに食べられているという訳だ。
原作プレイヤーの間では副作用に耐える方法もあるのではないかと検証が行われたが、俺が前世を生きている内には結局見つからなかった。
ユフィーアはノコギリタートルの身体に触れ、完全に死亡している事を確認する。
「スターキノコはこの先にあるはずだ、さあ先へ進もう」
俺とユフィーアはノコギリタートルが現れた方向へ進むと、一面が光り輝くエリアに到達した。
「マール様、これ全部スターキノコですか?」
「ああ、間違いない。絶対に食べちゃダメだよ」
「こんなの拾い食いなんてしませんよ」
スターキノコは危険なキノコだ。
俺は必要最低限の量だけ袋に仕舞い持ち帰る事にした。
クエストはこれで完了だが、ユフィーアは浮かない顔だ。
「マール様、依頼主はこのキノコを何に使うつもりなんですかね? 変な事に使わなければいいですけど」
「聞いた話では依頼主はキノコを使った魔法薬研究開発の第一人者らしいよ。無茶な事はしないだろうさ」
どの世界でも研究者は好奇心の塊だ。
いつの日か、俺の前世では見つからなかったスターキノコの有効利用方法がこの世界の住人によって発見されるかもしれないな。
「それでマール様、どうやって元の場所に戻るんですか」
「そうだね……」
俺は周囲を見回す。
裏ワールドによっては元の場所に戻る土管があるのだが、このワールドには土管は見当たらない。
ならば帰る方法は一つだ。
俺は魔法の袋からラケットとボールを取り出してユフィーアに渡す。
「またテニスですか」
「ああ、今度は少し長めにリレーを続けるぞ」
裏ワールドは全部で255種類あり、その次の256番目が表ワールド、つまり元の森に当たる。
それ以降はカウントが1に戻ってループする。
現在7番目のワールドにいるので、256から7を引いた値である、249回リレーを続ければいい。
……いや、結構大変だなこれ。
「マール様行きますよ、それっ」
「ちょ、もっとゆっくり優しく……」
その後何度かリレーに失敗したりカウント間違いをしたりと散々だったが、日が暮れる前には無事に元の森に戻ってくる事ができた。
あまり長居をしてマリオネットブロスの胞子に寄生されては元も子もない。
俺とユフィーアは急ぎ足でキノコ帝国を後にし、王都への帰路に就く。
◇◇◇◇
数日かけて王都へ戻った俺とユフィーアはそのまま冒険者ギルドに向かった。
ギルドの中に入ると顔見知りの冒険者達が声をかけてくる。
目当てはもちろんスターキノコだ。
「ようマール、スターキノコを取りに行ってたんだって?」
「あんなもの作り話かと思っていたが、本当にあったのか? ちょっと見せてくれよ」
「ここで? このキノコはかなりヤバい品だからちょっと……」
「そんなこと言わないでさ、少しだけ、ちらっと見るだけだから」
やれやれ、ここで押し問答をする時間が勿体ない。
少しだけ見せてさっさと納品しよう。
「分かった分かった、本当に危険なキノコなので少し離れててね」
俺は冒険者達を2メートル程離れた位置に座らせ、スターキノコが入った袋を開ける振りを何度か繰り返して散々焦らした後に、満を持してお披露目タイムだ。
「ふっふっふ、幻のキノコに刮目せよ」
袋を開けた瞬間、強烈な光がギルド内を照らす。
「何だ、何の光だ!?」
「魔法か!? 魔物の襲撃か!?」
そのあまりの眩しさに、事情を知らない他の冒険者達はパニックを起こす。
すぐにギルドのスタッフが血相を変えて駆け寄ってきた。
「マールさん、何をやっているんですか!? 皆の迷惑になります、早くそれを仕舞って下さい!」
「あっはい、ごめんなさい。ほら見ろ、お前らのせいで……」
振り向くと蜘蛛の子を散らすように逃げていく奴らの後ろ姿が見えた。
「あいつら……」
「マールさん! 早くして下さい」
「い、今すぐ!」
覚えてろ……。
鼓膜が破れるかと思う程の咆哮と共にノコギリタートルの身体は更に眩い光を放ち、亀とは思えないような速さで突進してくる。
「こんなもの、私が正面から受け止めてみせます!」
「ダメだ、よけろユフィーア!」
「えっ!?」
ノコギリタートル自体はレベル30もあれば余裕で倒す事ができる魔獣だ。
しかしスターキノコを食べて無敵状態の今ならば話は違う。
その身体に触れただけで俺達の身体は吹き飛ぶだろう。
ユフィーアは直前でノコギリタートルの突進をかわすと、ノコギリタートルの身体は勢い余ってその先の樹木に激突する。
樹木はバキバキと大きな音を立てて圧し折れた。
スターキノコを食べた生物は無敵になるが、その効果時間は長くない。
俺達にできるのはそれまで逃げ続ける事だけだ。
ノコギリタートルはその後何度も俺達に突進を試みたが、猪のように一直線に進むだけなので避けるのは難しくなかった。
突進を繰り返すたびにノコギリタートルの身体から発せられている光は徐々に弱まっていき、やがて消えた。
それと同時にピタっと動かなくなる。
「動きが止まった!? マール様、チャンスです。今の内に──」
「いや、その必要はないよ。もう死んでるから」
「え?」
ユフィーアは知らないようだが、スターキノコには副作用がある。
強靭な肉体を手に入れる代償として、無敵時間中は身体中の細胞がオーバーヒートし、効果が切れた頃には完全に崩壊しているのだ。
ファンの間ではこれをタイムアップと呼んでいる。
無敵時間中に身体が光り輝くのは、細胞が燃焼しているからだ。
そして力尽きた者はそのままキノコたちの養分となる。
キノコを食べているつもりが実際はキノコに食べられているという訳だ。
原作プレイヤーの間では副作用に耐える方法もあるのではないかと検証が行われたが、俺が前世を生きている内には結局見つからなかった。
ユフィーアはノコギリタートルの身体に触れ、完全に死亡している事を確認する。
「スターキノコはこの先にあるはずだ、さあ先へ進もう」
俺とユフィーアはノコギリタートルが現れた方向へ進むと、一面が光り輝くエリアに到達した。
「マール様、これ全部スターキノコですか?」
「ああ、間違いない。絶対に食べちゃダメだよ」
「こんなの拾い食いなんてしませんよ」
スターキノコは危険なキノコだ。
俺は必要最低限の量だけ袋に仕舞い持ち帰る事にした。
クエストはこれで完了だが、ユフィーアは浮かない顔だ。
「マール様、依頼主はこのキノコを何に使うつもりなんですかね? 変な事に使わなければいいですけど」
「聞いた話では依頼主はキノコを使った魔法薬研究開発の第一人者らしいよ。無茶な事はしないだろうさ」
どの世界でも研究者は好奇心の塊だ。
いつの日か、俺の前世では見つからなかったスターキノコの有効利用方法がこの世界の住人によって発見されるかもしれないな。
「それでマール様、どうやって元の場所に戻るんですか」
「そうだね……」
俺は周囲を見回す。
裏ワールドによっては元の場所に戻る土管があるのだが、このワールドには土管は見当たらない。
ならば帰る方法は一つだ。
俺は魔法の袋からラケットとボールを取り出してユフィーアに渡す。
「またテニスですか」
「ああ、今度は少し長めにリレーを続けるぞ」
裏ワールドは全部で255種類あり、その次の256番目が表ワールド、つまり元の森に当たる。
それ以降はカウントが1に戻ってループする。
現在7番目のワールドにいるので、256から7を引いた値である、249回リレーを続ければいい。
……いや、結構大変だなこれ。
「マール様行きますよ、それっ」
「ちょ、もっとゆっくり優しく……」
その後何度かリレーに失敗したりカウント間違いをしたりと散々だったが、日が暮れる前には無事に元の森に戻ってくる事ができた。
あまり長居をしてマリオネットブロスの胞子に寄生されては元も子もない。
俺とユフィーアは急ぎ足でキノコ帝国を後にし、王都への帰路に就く。
◇◇◇◇
数日かけて王都へ戻った俺とユフィーアはそのまま冒険者ギルドに向かった。
ギルドの中に入ると顔見知りの冒険者達が声をかけてくる。
目当てはもちろんスターキノコだ。
「ようマール、スターキノコを取りに行ってたんだって?」
「あんなもの作り話かと思っていたが、本当にあったのか? ちょっと見せてくれよ」
「ここで? このキノコはかなりヤバい品だからちょっと……」
「そんなこと言わないでさ、少しだけ、ちらっと見るだけだから」
やれやれ、ここで押し問答をする時間が勿体ない。
少しだけ見せてさっさと納品しよう。
「分かった分かった、本当に危険なキノコなので少し離れててね」
俺は冒険者達を2メートル程離れた位置に座らせ、スターキノコが入った袋を開ける振りを何度か繰り返して散々焦らした後に、満を持してお披露目タイムだ。
「ふっふっふ、幻のキノコに刮目せよ」
袋を開けた瞬間、強烈な光がギルド内を照らす。
「何だ、何の光だ!?」
「魔法か!? 魔物の襲撃か!?」
そのあまりの眩しさに、事情を知らない他の冒険者達はパニックを起こす。
すぐにギルドのスタッフが血相を変えて駆け寄ってきた。
「マールさん、何をやっているんですか!? 皆の迷惑になります、早くそれを仕舞って下さい!」
「あっはい、ごめんなさい。ほら見ろ、お前らのせいで……」
振り向くと蜘蛛の子を散らすように逃げていく奴らの後ろ姿が見えた。
「あいつら……」
「マールさん! 早くして下さい」
「い、今すぐ!」
覚えてろ……。
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