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第51話 スプライトの限界
しおりを挟む「しかし空中戦に於いては王国一といわれたリカイン卿でも適わない相手に、我々は一体どう立ち向かえばいいというのか」
リカインの敗北を目の当たりにして珍しくアレス殿下が弱音を吐く。
「マール様、私も地上ならともかく空中ではフレガータの動きに対応できません。ここはフレガータを地上に誘いこんで叩くという作戦はどうでしょうか」
「いや、フレガータは俺達の誘いに乗ってみすみす地の利を捨てるような相手じゃないよ」
「しかしそれでは私達はどうしたら……」
「大丈夫、俺に考えがある」
俺は意気消沈している兵士達に向けて大声で檄を飛ばす。
「皆聞いてくれ! 俺にはフレガータを倒す作戦がある」
「何だって?」
「そんなものがあるなら是非とも教えて欲しい」
兵士達の視線が俺に集まる。
「敵にも聞こえているから作戦の詳細は話せないが、まずは残った俺たち全員で、上空で待機している鳥型の魔族の群れの中に突っ込む。準備はいいか?」
「は!?」
「冗談だろう?」
兵士だけでなく、アレス殿下達も困惑した表情で俺を見た。
「フレガータだけでも手に負えないというのに、あの魔獣の群れも同時に相手になどできる訳がないだろう」
「マール殿はやけっぱちになっているのでは?」
兵士達は顔を見合わせてひそひそと話をしている。
いきなり敵の大軍の真っ只中に突っ込めと言われて戸惑う気持ちは分かるが、時間が無いからとにかく言う事を聞いて欲しいものだ。
俺は身を乗り出して肩越しにユフィーアの目を見ながら言う。
「ユフィーア、行けるな?」
「はい、マール様!」
気持ちがいい程の即答だ。
ユフィーアは飛竜を操り、一気に上空へと飛翔する。
「うぐっ」
俺は凄まじい空気抵抗で呼吸が困難になるが、上空に到達するまでの僅かな時間我慢するだけだ。
「くっ、我々も続け!」
「マール殿は作戦があると言った。ならばそれを信じよう!」
アレス殿下や兵士達もユフィーアを見習って上空へ向かう。
あっという間に俺達は魔王軍の真っ只中に入った。
「マールとかいいましたっけ。噂通り行動が読めない男ですね。でもただの自殺行為にしか見えませんよ。さあお前達、やっておしまい!」
デメテルの命令で鳥型魔族達が一斉に俺達に襲い掛かってきた。
それをかわしつつ、次の作戦を皆に伝える。
「いいか、この鳥型魔族は相手にするな。俺の合図で弓兵はフレガータに矢を放ちまくれ! そして魔法が使える者はフレガータに爆裂魔法を放て!」
「は、はい!」
この極限状態では兵士達は俺の作戦に疑問や意見を持つ余裕はなく、逆に俺の指示に素直に従ってくれる。
フレガータは俺達の周囲を旋回しながら攻撃のタイミングを伺っている。
まずは本当に上手くいくかの実験だ。
俺はフレガータを見据えながらカウントを取る。
「3、2、1、今だ!」
「うおおおおおおっ、当たれーっ!」
「いきます! 爆炎魔法バーニングフレア!」
「爆裂魔法バルーンボム!」
「究極爆砕魔法、ワールドクラッシャー!」
フレガータに向かって矢の雨が降り注ぎ、激しいエフェクトと共に周囲の大気が爆発する。
「ふん、そんなもの目を瞑っていても避けられるぞ」
フレガータはまたしても超反応で矢と爆風を回避する。
「どうだ、この俺様の動きについてこれるか?」
フレガータは余裕の笑みを浮かべて俺達の周囲を飛翔する。
しかし様子がおかしい。
「お、おい見ろよ……」
「俺にはフレガータの動きがはっきり見えるぞ」
「俺にもだ。あいつ、どうしてこんなにゆっくりと飛んでいるんだ?」
その時、俺達の目にはフレガータの動きがスローモーションのように映っていた。
しかしそれは僅か数秒間の出来事で、気が付いた時には元の速さに戻っていた。
「何だ? こいつら今何をしやがった!?」
フレガータも今自分の身に何が起きたのかを理解できていない。
いや、正確にはフレガータだけではなく、俺達全員の動きがスローモーションになっていた。
そして今の現象を理解しているのは俺だけだろう。
これだけ画面上のキャラクター数が多くて、さらに派手なエフェクトの魔法をぶっ放せば起きて当然だ。
処理落ちがな。
「よし、もう一度俺の合図でフレガータに向けて同じ攻撃を仕掛けろ! ただしユフィーアは魔法を放つのを待て」
「はい、マール様」
「3、2、1、今だ!」
再びフレガータに向け矢の雨と爆裂魔法が放たれる。
フレガータはそれを超反応で回避するが、やはり処理落ちが発生して動きがスローモーションになる。
「ユフィーア、フレガータの進行方向に電撃魔法だ!」
「はい! ライトニングアンペア!」
ユフィーアの指先から強力な雷が放たれる。
雷の速度は秒速約200キロメートルといわれている。
如何にフレガータといえど、雷を避ける事はできない。
高速で飛びまわる相手に狙いを定めて電撃魔法を放つ事は困難だが、殆ど動きが止まって見える相手に命中させる事はユフィーアにとっては造作もなかった。
「ぐあっ!」
強力な電撃をその身に受けたフレガータは、全身を焼け焦がしながら落ちていく。
電撃で身体が痺れて動けないフレガータはそのまま地上に激突し、断末魔の叫び声をあげる間もなく絶命した。
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