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第56話 消える冒険者達
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冒険者ギルドで護衛の依頼という名目で協力者を募るとあっという間に三人の冒険者が名乗り出てくれた。
戦士のガルーシ。
弓使いのリングゥ。
マスターモンクのヤンゼル。
皆俺が冒険者になった頃からの知り合いばかりだ。
しかし当然だが彼らには護衛の依頼料を支払っている。
現在の彼らのレベルは約40で、可もなく不可もない中級の冒険者に該当する。
討伐クエストに行く訳ではないのでそれでも十分だ。
「これがあの竜殺しの勇者様ねえ」
「でもこんな見た目でもレベル30相当だそうだよ」
「それマールより強いじゃん、あははは」
「うるせえよ」
ユフィーアは俺におんぶされながらすやすやと眠っている。
三人は楽しそうにユフィーアの柔らかい頬をつついたりして遊んでいる。
「お前ら、夜の散歩に来たんじゃないぞ」
「はい、はい」
「魔物ならともかく、ならず者からの護衛クエストじゃあやる気が出ないってもんだよ」
「まあ貰ったお金の分は働くから安心してくれ」
本当に頼むぞ。
レベル10の俺はならず者相手でも勝てるかどうか分からないんだからな。
夜の路地裏は治安が悪く、絶えず危険と隣合わせだ。
ならず者達がじろじろとこちらの様子を伺っている。
隙あらば荷物の一つでも強奪してやろうと企んでいるんだろう。
しかしレベル40の冒険者三人が俺を護衛している以上、簡単には手が出せないはずだ。
今回の目的は夜の路地裏に偶に現れるシンディア姫に接触してバグを発生させ、子供に戻ったユフィーアを元に戻す事だ。
上手くいくかどうかは分からないが、他に手がないのでそのバグに賭けるしかない。
別のバグが発生する恐れもあるので、アイテムの消失バグ回避の為に貴重品などは予め冒険者ギルドの預り所に保管して貰っている。
「それでマール、本当にこんな所にシンディア姫が現れるのか?」
戦士のガルーシが疑問を投げ掛けるが、その辺りに抜かりはない。
俺は予めアナログで乱数調整を行い、シンディア姫が現れやすい状態にしておいた。
「ああ、俺の調べではそろそろ現れるはずだ」
「一国のお姫様がこんな所にねえ。なにやら陰謀の匂いがするな」
いえ、ただのバグです。
「もし姫さまと会えなくても受け取った金は返さないぞ」
「それは勿論構わないよ。でもシンディア姫がどこから現れるか分からないから、周囲の警戒は怠らないでね。もし現れたらそれで護衛の依頼は終了だから帰っていいよ。決してシンディア姫には近づかないように!」
俺は三人をバグに巻き込みたくないから念を押す。
「ヤンゼル、リングゥ、無事に終わったらこの金で一杯やろうぜ。朝まで開いているいい酒場があるんだ」
「お、いいねガルーシ。俺は行くぜ。ヤンゼル、お前はどうする?」
……。
返事がない。
「おい、ヤンゼル? 聞いてるのか?」
振り向くと、さっきまで一緒に歩いていたヤンゼルの姿が消えていた。
「あいつどこへ行ったんだ?」
その時、周囲の空気が変わった。
「ヤバい、奴が来た!」
「くそ、巻き込まれちゃ適わねえ。お前ら行くぞ!」
さっきまで遠巻きにこちらを見ていたならず者達もバタバタと退散をする。
間違いない、シンディア姫が現れたんだ。
「ガルーシ、リングゥ、様子がおかしい。俺から離れるな!」
「おいマール、いったい何が起きてるんだよ……説明してくれよ。ヤンゼルはどこへ行ってしまったんだよ」
恐らくバグに巻き込まれたんだろう。
しかしどんなバグかは分からないので説明ができない。
「う、うわああああああああ!?」
突然俺の後ろを歩いていたリングゥの叫び声が聞こえた。
「リングゥ、どうした!? どこにいる!?」
今度はヤンゼルに続いてリングゥの姿も消えていた。
足下には、リングゥがいつも装備している弓だけが落ちていた。
もう彼の声は聞こえない。
「なんだよこれ……魔族の呪いってヤツじゃないのか……? も、もういやだ……俺にはまだ年老いた母が……」
「ガルーシ、だめだ、うかつに動くな!」
「こんな所でじっとしていられるか、俺はひとりでも家に帰るぞ! あっ……あああああああああ!?」
叫び声と共に今度は俺の目の前でガルーシが消滅した。
周囲にシンディア姫の姿は見えない。
でもこの不可思議な現象は間違いなくバグだ。
バグの原因であるシンディア姫は間違いなくこの近くにいる。
「シンディア姫、どこにいらっしゃるんですか!? 出てきて下さい!」
……。
俺の呼びかけに対して返事はない。
考えろ、何が起きているのかを。
原作で発生したバグを思い出せ。
「……あっ」
該当するバグを見つけた。
考えれば簡単な事だった。
俺はこの場を一歩も動かずに足元の小石を拾い、ガルーシが消えた場所の付近に投げる。
小石は地面に落ちる直前に何かに当たって跳ね返った。
「痛っ……なんですの?」
姿は見えないが、それは間違いなくシンディア姫の声だ。
「姫様、そこにいらっしゃったのですね」
シンディア姫を見つけられなかったのは、彼女自身がバグによって透明になっていたからだ。
HPという概念が存在しない姫は石をぶつけても怪我をする事はないが、痛覚は普通にあるようだ。
「そこにいるのは誰ですか?」
「マールです。姫様は今のご自分の状況を把握しておられますか? どこまで覚えています?」
「……ベッドの上で横になったところまでは覚えていますけど……ここはどこでしょう?」
なるほど、寝ていたのか。
返事がなかった訳だ。
シンディア姫は無意識の内に転移バグを発動してここへやってきたという事だろう。
ならず者達の反応を見る限りでは、今までバグに巻き込まれた者もいたんだろうな。
ユフィーアを元に戻す為にはもう一度年齢変更バグを起こす必要がある。
そのヒントを掴む為にもまずはシンディア姫に話を聞いてみよう。
「姫様、ここは王都の裏路地ですよ」
「どうしてそのような所に……あっ、もしかしてあなた……」
「ご……誤解なさらないで下さい! 誘拐してきたのではありません!」
「冗談です。私にはよくある事です。どうやらまたやってしまったみたいですね」
戦士のガルーシ。
弓使いのリングゥ。
マスターモンクのヤンゼル。
皆俺が冒険者になった頃からの知り合いばかりだ。
しかし当然だが彼らには護衛の依頼料を支払っている。
現在の彼らのレベルは約40で、可もなく不可もない中級の冒険者に該当する。
討伐クエストに行く訳ではないのでそれでも十分だ。
「これがあの竜殺しの勇者様ねえ」
「でもこんな見た目でもレベル30相当だそうだよ」
「それマールより強いじゃん、あははは」
「うるせえよ」
ユフィーアは俺におんぶされながらすやすやと眠っている。
三人は楽しそうにユフィーアの柔らかい頬をつついたりして遊んでいる。
「お前ら、夜の散歩に来たんじゃないぞ」
「はい、はい」
「魔物ならともかく、ならず者からの護衛クエストじゃあやる気が出ないってもんだよ」
「まあ貰ったお金の分は働くから安心してくれ」
本当に頼むぞ。
レベル10の俺はならず者相手でも勝てるかどうか分からないんだからな。
夜の路地裏は治安が悪く、絶えず危険と隣合わせだ。
ならず者達がじろじろとこちらの様子を伺っている。
隙あらば荷物の一つでも強奪してやろうと企んでいるんだろう。
しかしレベル40の冒険者三人が俺を護衛している以上、簡単には手が出せないはずだ。
今回の目的は夜の路地裏に偶に現れるシンディア姫に接触してバグを発生させ、子供に戻ったユフィーアを元に戻す事だ。
上手くいくかどうかは分からないが、他に手がないのでそのバグに賭けるしかない。
別のバグが発生する恐れもあるので、アイテムの消失バグ回避の為に貴重品などは予め冒険者ギルドの預り所に保管して貰っている。
「それでマール、本当にこんな所にシンディア姫が現れるのか?」
戦士のガルーシが疑問を投げ掛けるが、その辺りに抜かりはない。
俺は予めアナログで乱数調整を行い、シンディア姫が現れやすい状態にしておいた。
「ああ、俺の調べではそろそろ現れるはずだ」
「一国のお姫様がこんな所にねえ。なにやら陰謀の匂いがするな」
いえ、ただのバグです。
「もし姫さまと会えなくても受け取った金は返さないぞ」
「それは勿論構わないよ。でもシンディア姫がどこから現れるか分からないから、周囲の警戒は怠らないでね。もし現れたらそれで護衛の依頼は終了だから帰っていいよ。決してシンディア姫には近づかないように!」
俺は三人をバグに巻き込みたくないから念を押す。
「ヤンゼル、リングゥ、無事に終わったらこの金で一杯やろうぜ。朝まで開いているいい酒場があるんだ」
「お、いいねガルーシ。俺は行くぜ。ヤンゼル、お前はどうする?」
……。
返事がない。
「おい、ヤンゼル? 聞いてるのか?」
振り向くと、さっきまで一緒に歩いていたヤンゼルの姿が消えていた。
「あいつどこへ行ったんだ?」
その時、周囲の空気が変わった。
「ヤバい、奴が来た!」
「くそ、巻き込まれちゃ適わねえ。お前ら行くぞ!」
さっきまで遠巻きにこちらを見ていたならず者達もバタバタと退散をする。
間違いない、シンディア姫が現れたんだ。
「ガルーシ、リングゥ、様子がおかしい。俺から離れるな!」
「おいマール、いったい何が起きてるんだよ……説明してくれよ。ヤンゼルはどこへ行ってしまったんだよ」
恐らくバグに巻き込まれたんだろう。
しかしどんなバグかは分からないので説明ができない。
「う、うわああああああああ!?」
突然俺の後ろを歩いていたリングゥの叫び声が聞こえた。
「リングゥ、どうした!? どこにいる!?」
今度はヤンゼルに続いてリングゥの姿も消えていた。
足下には、リングゥがいつも装備している弓だけが落ちていた。
もう彼の声は聞こえない。
「なんだよこれ……魔族の呪いってヤツじゃないのか……? も、もういやだ……俺にはまだ年老いた母が……」
「ガルーシ、だめだ、うかつに動くな!」
「こんな所でじっとしていられるか、俺はひとりでも家に帰るぞ! あっ……あああああああああ!?」
叫び声と共に今度は俺の目の前でガルーシが消滅した。
周囲にシンディア姫の姿は見えない。
でもこの不可思議な現象は間違いなくバグだ。
バグの原因であるシンディア姫は間違いなくこの近くにいる。
「シンディア姫、どこにいらっしゃるんですか!? 出てきて下さい!」
……。
俺の呼びかけに対して返事はない。
考えろ、何が起きているのかを。
原作で発生したバグを思い出せ。
「……あっ」
該当するバグを見つけた。
考えれば簡単な事だった。
俺はこの場を一歩も動かずに足元の小石を拾い、ガルーシが消えた場所の付近に投げる。
小石は地面に落ちる直前に何かに当たって跳ね返った。
「痛っ……なんですの?」
姿は見えないが、それは間違いなくシンディア姫の声だ。
「姫様、そこにいらっしゃったのですね」
シンディア姫を見つけられなかったのは、彼女自身がバグによって透明になっていたからだ。
HPという概念が存在しない姫は石をぶつけても怪我をする事はないが、痛覚は普通にあるようだ。
「そこにいるのは誰ですか?」
「マールです。姫様は今のご自分の状況を把握しておられますか? どこまで覚えています?」
「……ベッドの上で横になったところまでは覚えていますけど……ここはどこでしょう?」
なるほど、寝ていたのか。
返事がなかった訳だ。
シンディア姫は無意識の内に転移バグを発動してここへやってきたという事だろう。
ならず者達の反応を見る限りでは、今までバグに巻き込まれた者もいたんだろうな。
ユフィーアを元に戻す為にはもう一度年齢変更バグを起こす必要がある。
そのヒントを掴む為にもまずはシンディア姫に話を聞いてみよう。
「姫様、ここは王都の裏路地ですよ」
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