この世界はバグで溢れているのでパーティに捨石にされた俺はそのバグを利用して成り上がります

かにくくり

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第70話 魔を討つ聖剣

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「マール・デ・バーグ……そうか、貴様が正体不明な呪術で我が配下の者を次々と降したという男か」

「ああ、順番的に次はお前の番だな」

「ほざけ! 出でよ、魔剣ファザナード!」

 イブリースが右手に魔力を集中させると、青い炎を纏った漆黒の剣が現れた。

「さあ行くぞ!」

 イブリースは俺目掛けてその巨大な剣を振り下ろし、さらに右に身をかわした俺の動きを追尾するように薙ぎ払ってくる。

「くっ!」

 俺はそれを素早いバックステップでぎりぎりかわす。
 剣で受け止める事は全く考えていない。

 その刃に触れたもの全てを焼き尽くすといわれる魔剣ファザナードは、原作ではこちらの装備している武器や防具を破壊してくる厄介な剣だ。

 店売りではないレアな武具でも容赦なく破壊されるので、原作プレイヤーは必然的にアイテムや魔法で回避率を高める戦法をとる。

 しかし俺は素早さをアップする魔法は覚えないし、パラメータを強化させるアイテムも所持していない。
 どうせ魔王なんて禁断のバグ技で瞬殺させてやると高をくくって魔王城までやってきた結果がこれである。

 今この場には援護してくれる仲間もいない。
 俺は素のパラメータのままでイブリースの斬撃を避け続けるしかない。

 逃げてばかりでは倒せないのは分かっているが、逃げ続けていればそのうち魔王に隙が生まれるはずだ。
 その時に起死回生のカウンターをぶちかましてやる。

 そしてその好機は直ぐにやってきた。

 イブリースが剣を逆袈裟に切り上げた瞬間、僅かにできた隙を俺は見逃さなかった。
 俺はすかさず懐に飛び込んで斬りつける。

「ぐあっ……!?」

 イブリースは一瞬たじろいだが、俺の一撃は明らかに浅かった。

 俺が今装備しているガーディアンソードは自身の防御力をアップさせる特殊効果があるが、その反面攻撃力は雀の涙ほどしかない。

「ふん、カウンター狙いとは考えたな。あやうく足をすくわれるところだったぞ」

 これでイブリースは更に警戒を強めるだろう。
 もう同じ手には引っ掛かりそうにない。

「これ以上うろちょろされるのは目障りだ」

 イブリースは突然玉座の間の入り口の扉に向かって走り出す。

「何をするつもりだ!?」

 もちろん逃げているのではない。
 イブリースの狙いは外で倒れているユフィーアだ。

「おい、止めろ!」

 俺を誘い出す罠だと分かっていても、ユフィーアを見捨てる事はできない。
 俺は咄嗟に扉の前に立ちはだかり、振り下ろされる魔剣ファザナードをガーディアンソードで受け止める。

 その瞬間、ガーディアンソードは青い炎に包まれた。
 このままではこの炎は剣を握る俺の手から身体へと燃え移ってくる。
 もうこのガーディアンソードは捨てるしかない。

「ふははは、人間とは愚かな生き物よのう。足手まといの女など見捨ててあのまま逃げ続けていればいつか勝機が生まれたかもしれないものを。……死ねい!」

 剣を捨てて丸腰となった俺にイブリースは執拗な攻撃を繰り返す。

 俺はそれでもその攻撃を必死でかわし続けるが、さっきとは状況が全く違う。
 武器を持っていない以上、俺はカウンターを仕掛ける事ができない。

 俺の魔力はイブリースと互角である以上、魔法で攻撃をしても相殺されるだけなのは目に見えている。

 永遠に避け続ける事などできるはずがない。
 俺のスタミナが切れるのは時間の問題だ。

 魔王を倒す為には武器が必要だ。

 どこかに武器の代わりになるものはないか……。

 爆弾魔道具程度の爆発では魔王の肉体には傷一つつける事はできないだろうし、俺は他に戦闘向けのアイテムは何一つ持っていない。

 ここは一旦退いて再起を狙うか……。

 いや、満身創痍のユフィーアを背負ってイブリースから逃げ切れる自信はない。

「マール様!」

 その時、俺の背後の扉が開いてユフィーアが玉座の間に入ってきた!?

「ユフィーア、どうしてここに来た!? 早く逃げろ」

「私の事はいいので、この剣をお使い下さい!」

 ユフィーアは一振りの剣を俺に投げる。

 俺は剣を受け取り鞘から抜くと、その刃から白く眩しい光が溢れ出した。

「これは、まさか……」

「うぬ、しぶといやつめ! これでも喰らうがいい」

 イブリースは俺とユフィーアをまとめて切り裂くべく、魔剣ファザナードを横に薙ぎ払う。
 しかしその剣には先程までの勢いはない。

 さっきまで満身創痍だったはずのユフィーアは軽い身のこなしでそれをかわす。
 当然俺にも当たらない。
 魔剣ファザナードの一閃をかわした俺は剣を握りしめて飛び上がり、イブリースの額に振り下ろした。

「ぐ……ぐわああああああああああああああ」

 白く輝く剣はイブリースの頭部に深々と突き刺さり、イブリースの断末魔の悲鳴が玉座の間に鳴り響いた。

 やがてその身体はボロボロと崩れ落ち、灰となった。

 俺の……いや、俺達の勝利だ。

「マール様、やりましたね!」

「ユフィーア、もう怪我はいいのか?」

「はい、ヘステリアさんに治療をして頂きました」

「ヘステリアさんが?」

 振り向くと、ヘステリアやアレス殿下達の姿があった。

「はぁ、はぁ……何とか間に合いましたね」

「ははは、私はもう体力の限界だ。少し休ませてくれ」

「殿下、ヘステリアさん、どうしてここに? それに、ヴェパルさんまで」

「ヴェパルさんがね、傷だらけの私達を見つけてエリクサーを分けてくれたんですよ。おかげで何とか動ける程度には回復しました」

「いくら魔王といえどヘステリアの破邪の力には抗えまい」

 そうか、最後の瞬間魔王イブリースには破邪の力による弱体化デバフがかかっていたのか。

「さすがに魔王城というだけあって宝物庫の中には色々珍しい物が入っていたよ。金銀財宝だけでなく、エリクサーやレアな魔道具とか、さっきの剣とかね」

 俺がユフィーアから受け取った白く輝く剣は俺も原作で装備していたので知っている。

 聖剣エクスカリバーだ。

 あれ、でも少し形が違うな?

「マール様、折角だから私が強化しておきました」

「強化……? あっ」

 俺は以前モバイルクォーツで受信したメッセージを思い出した。

 聖剣エクスカリバーEXのレシピだ。

 聖剣エクスカリバーにオリハルコン10個、ミスリル20個、塩と胡椒を少々加えて錬成する事で完成するこの剣は、ラスボスである魔王すら一撃で倒す事ができるという。

「ユフィーア、いつの間に錬成したんだよ」

「私、鍛冶のスキルにも自信がありますのでレシピを思い出しながら急いで作りました」

 前回のアップデートでバグは粗方修正されたはずだが、ユフィーアの各種スキルが最初からカンストしているのはバグではなく仕様だったらしい。

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