パーティを追放された鈺魔導士はパラメータチェンジ魔法を覚えたら誰にも負けなくなった

かにくくり

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第54話 深緑の悪魔

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 山道を進むこと半日。
 漸くフルーレ村に到着した。

「ここがマリーニャの故郷……」

 そこは村というよりも、原始的な小さな集落だった。
 村の家屋には狩りに使うであろう弓矢や槍が立てかけてある。

「チェイン、驚いたかい? あたしも最初はそうだった」

「ここの住民は普段は狩猟生活をしていますの」

「普段のマリーニャのイメージからは程遠いね」

 村の入り口でそんな会話をしていると、マリーニャの姿を確認した村民達が集まってきた。

「やあマリーニャちゃん、冒険者の仕事は順調かね?」

「ええ、おかげさまで。今日はこの付近に現れたという悪魔討伐に来ました」

「ああ、先日この近くを通りがかった冒険者が襲われたという話だね。厄介な事にならなければいいが」

「大丈夫ですよ。直ぐに片づけてきますから」

 俺達は村民に挨拶をすると、悪魔討伐へ向かった。

 フルーレ村から南へ獣道を少し進んだ場所にそれはいた。

 全身が緑色の鱗に覆われ、背中には蝙蝠に似た大きな翼を生やし、その手足には鋭い爪を持つ。
 その特徴的な見た目は物語に出てくる悪魔そのものだ。

 俺達の接近に気付いた悪魔は背中の翼を羽ばたかせて大きく飛び上がり、両足の爪で斬り裂こうと急降下する。
 しかしその爪は俺達には届かなかった。

「≪リプレイス≫」

 俺とパラメータを交換されたその悪魔は空中で体勢を崩し、その隙にシズハナの投げた手裏剣で喉を貫かれて絶命する。

 テレッテレレー♪

 ピロリロリロリロリ……ロリン♪

 【魔法珠】からファンファーレと経験ポイント獲得の音が鳴る。

 獲得した経験ポイントは300。
 実に呆気なかったが、レベル80の悪魔ともなればかなりのポイントが入ってくる。
 そろそろ貯まっている経験ポイントが8000近くになる。
 後2000ポイントと少々貯めれば次の最上位魔法を覚える事ができる。

 こんなに楽なクエストならいつでも受けたいものだ。

 その時、肌を刺すような風が吹いた。

「やけに冷えるな」

 俺は違和感を覚えた。
 ギルガリア王国の南は温暖な気候だ。
 クリムドからフルーレ村への道中も南下するにつれて気温が上がり、俺のローブは汗でぐっしょりだ。
 それなのにこの辺りは不自然に寒い。
 気温差で風邪を引きそうだ。

「チェイン、こっちです」

 俺はマリーニャに手を引かれてさらに南へ進むと、小さな洞穴が見えてきた。
 気温はさらに低くなる。
 どうやら冷気はこの中から流れてきている様だ。

「ここは……氷室かな?」

 冬や寒冷地で作られた氷を持ち運び、貯蔵しておく施設があると書物で読んだ事がある。
 洞穴の中へ入ると、巨大な氷の塊があった。

「な、なんだこれは……?」

 その氷の中には、一体の悪魔が氷漬けで眠り続けていた。
 その姿は見覚えがある。
 俺達の魔法珠に浮かび上がっている冒険者パーティ【フルーレティ】の紋章と同じだ。

 俺は確信を持って答えた

「これが……フルーレティ?」

 マリーニャは頷き、ゆっくりと話を始める。

「他の冒険者には……特に冒険者ギルドには知られたくありませんでした。この付近に冒険者がやってきたら、フルーレティの存在を探知される可能性があります」

「いつ見ても凄い圧力を感じる」

 シズハナの見立てでは、レベル400は下らないという。
 シズハナの様な優れた探知スキルを持つ冒険者なら、この付近に立ち寄っただけでフルーレティを見つけるのは容易いだろう。

「もしこの悪魔を他の冒険者が見つけたらどうなると思う?」

 マリーニャが俺に問いかける。

「かつて世界中を荒らしまわった伝説の悪魔フルーレティか。間違いなく討伐クエストが発生するだろうね。いや、このランクならレイド戦か。でも、俺の≪リプレイス≫なら勝てる。なんなら今すぐにでも……」

 しかしマリーニャは悲しそうな顔をして首を振る。

「それをして貰いたくないの」

「何故?」

「フルーレ村に伝わる昔話を話します。まだギルガリア王国が誕生する前の話。この土地には狩猟を生業とした名もない部族が暮らしていました」

 マリーニャの話はこうだ。

 かつて世界で暴れまわったフルーレティは人間の連合軍との戦いで負傷し、この地に逃れた。
 それを通りがかった族長の娘が介抱し、フルーレティは一命を取り留めたという。
 いつしか二人は種族を超えて恋仲となり、子を授かった。

 そして人の心に触れる内にフルーレティは己の過ちを悔いるようになり、自らを氷漬けにして眠りについた。

「フルーレ村という地名は、この土地が王国に併合された時に、フルーレティに因んでつけられた名前です。それ以降、族長の家系はフォン・フルーレという姓を名乗っています」

「つまりマリーニャ、君は……」

「はい、私の身体には悪魔フルーレティと人間の血が流れています。とはいっても、何世代も前の話ですから悪魔フルーレティの血は殆ど残っていませんけどね」

「……」

 洞窟内に沈黙が流れる。

「こんな化け物の子孫だなんて、失望させてしまいましたか?」

 マリーニャは俯く。

「いや、マリーニャはマリーニャだ。これが化け物だって言うなら……≪リプレイス≫」

 俺は氷の中のフルーレティに≪リプレイス≫をかけ、パラメータを交換する。

 たちまち、俺の身体にはかつてない程の力がみなぎってくる。
 俺はポーズを決めて一言。

「今の俺の方が間違いなく化け物だよ」

「なんだそりゃ」
「チェインらしいですわ」
「意味が分からない」

「うふふ、それ慰めてくれているんですか?」

 マリーニャに笑顔が戻って何よりだ。

 後はギルドへの対策を考えないといけないな。
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