パーティを追放された鈺魔導士はパラメータチェンジ魔法を覚えたら誰にも負けなくなった

かにくくり

文字の大きさ
59 / 93

第59話 嘆きの渓谷

しおりを挟む
「全員整列!」

 翌朝、冒険者ギルドクリムド支部の前にはレイド戦に参加をする後輩冒険者達が集まっていた。

「右向け、右!」

 マリーニャの号令で、後輩冒険者達は一糸乱れぬ動きをする。

「レイド戦で重要なのは全体で統率のとれた動きです。統率が乱れるとどれだけ人数が多くても烏合の衆に過ぎません」

「はい、マリーニャ先輩!」

 後輩冒険者達はマリーニャの言う事をよく聞き、はっきりとした声で返事をする。
 マリーニャには教官の才能もありそうだ。

「それでは嘆きの渓谷へ向けて出発!」

 まずはギルドがクリムド商会からレンタルした20台の馬車で嘆きの渓谷付近まで移動する。

 途中で休憩を挟みながら。昼過ぎには渓谷の入り口に到着した。

 そこで簡単に昼食を取ると、ここからは徒歩だ。

 マリーニャが先頭に立ち、その後ろを後輩冒険者達がついてくる。
 ルッテとプリンは後輩冒険者を守る様にその左右につく。
 シズハナは列の中央で周囲の気配を探りながら進む。
 最後方は俺とプラリスとホリックさんの三人だ。

 今回のレイドの参加者は総勢八十名になる。
 死霊使いの鴉ネクロマンシーレイヴン討伐の倍の人数だ。
 しかしあの時とは違い大半は戦力にならない。
 俺達【フルーレティ】は彼らを守りながら戦わなければならない。
 いつでも≪リプレイス≫を使える様に準備をしておこう。

「シズハナ、敵の気配はありますか?」

「何も感じない。いるとしたらもっと先だと思う」

 このまま進むと、古代の寺院跡と言われている建築物がある。
 魔獣の住処にはぴったりの場所だ。
 フェンリルはおそらくそこにいる。

 俺がプリンと離れた位置にいるのはマリーニャの配慮であろう。
 俺はあれからプリンの顔をまともに見られない。
 きっとプリンも同じだ。
 まあ戦闘が始めってしまえばそれどころではなくなるだろうが。


 この辺り一帯はかつて戦争によって破壊されたと思われる住居跡が並んでいる。
 渓谷のあちこちに、古代人と思われる人骨が散乱している。
 これが嘆きの渓谷と呼ばれる所以だ。

「この辺りで発掘される遺物は現存するどこの文明のものとも異なります。ギルガリア王国以前に栄えた文明のものでしょうね」

 渓谷内の様子を見ながら、ホリックさんが解説をしてくれる。

 俺はふと、以前俺達が洞窟で回収した古文書についての話を振ってみた。

「それは興味深いですね」

 予想通りホリックさんは喰いついてきた。
 俺は歩きながら、以前シズハナがホーロウの屋敷で描いた古文書のスケッチをホリックさんに見てもらう事にした。

「なるほど、ここに描かれている狼の様な魔獣が今回の討伐対象ですか」

 ホリックさんはスケッチの細部を舐め回す様に見る。

「この古文書に書かれている文字は、今の我々が使っている文字と同じですね」

「それが何か?」

「今私達が使っている文字は、1000年程前から使われ始めたんですよ。それまでは象形文字といわれる原始的な文字を使用していました」

「つまりこの古文書は今から1000年以内に書かれた物という事ですか」

「いえ、そうとは限りません」

 ホリックさんは自分の頭の中を整理する様に少し間を置き、話を続ける。

「文字というものは時代と共に少しずつ形が変化していくものです。しかし、かつて使われていた象形文字と今使われている文字には関連性が認められない。今私達が使っている文字は、ある時期から突然世界中で使われ始めている」

 難しい話はよく分からないが、俺は相槌を打って話の続きを待つ。

「私はこう考えています。元々は私達とは別の文明人が使用していた文字がある時期に私達に伝わり、それを私達も使い始めるようになったのではないかと」

 外国から新たな文化が入ってくる事は良くある話だ。
 ホリックさんの仮説もあながち間違っていないかもしれない。

「つまり、古文書を書いた人物は俺達とは別の文明の人間の可能性があるという事ですね」

「はい。ひょっとするとここの遺跡にその文明のヒントがあるかもしれません。フェンリル討伐が終わったら、私は少しこの遺跡を調査したいと思います」

「ええ、それはもちろん構いませんよ」

 ホリックさんがこの遺跡の調査に時間をかけてくれれば、その分フルーレ村付近の調査が後回しになる。
 計算通りだ。
 我ながら小賢しいと思った。


 古代の寺院跡に近付くにつれて辺りの空気がピリピリと張り詰める。

 そしてシズハナが寺院跡の中に巨大な魔獣の気配を察知した。

「あそこの柱の陰にいる。推定レベル295。間違いなくフェンリル」

「有難うシズハナ。全員この場で戦闘態勢をとりながら待機! 後は私達【フルーレティ】が戦います」

 マリーニャの指示で、後輩冒険者達は歩みを止める。

「それじゃあ行ってくる」

 シズハナが煙幕弾を手に、先行して寺院跡に近付く。
 フェンリルを煙でいぶり出す作戦だ。

 その後ろにマリーニャとプリンの二人が得物を構える。
 ルッテは魔法障壁を張る準備をする。
 俺は≪リプレイス≫の詠唱を始める。

「シズハナ、やって!」

 マリーニャの指示でシズハナが煙幕弾を寺院跡に放り投げるとするも、直前で手が止まる。

「シズハナ、どうしたの?」

 シズハナはこちらを振り向いて言った。

「もう一匹いる……」
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

処理中です...