414 / 785
第二部 宰相閣下の謹慎事情
491 続・元王族の風格
しおりを挟む
「いや、大公、私は『バリエンダールでやるとなれば、陛下が出て来る』と言っただけであって、まだ、バリエンダールで会談の場を設けようと提案している訳では――」
何だかちょっぴり「悪いお顔」になっていたテオドル大公を、止めようとしたのかどうか、エドヴァルドの方が珍しく抑えの側に回っている。
「確かに最初は、アンジェスとバリエンダールとの会談をアンジェス王宮でと言う話ではあったがな」
「ええ」
「だが、サレステーデの宰相が、おいそれと国を空けられぬのと同様に、バリエンダールとて、フォサーティ宰相家が謹慎させられている現状、王と王太子が政治の矢面に立つ状態であろう?」
言われてみれば、特にミラン王太子が、今は宰相相当の権限を持って、舵取りにあたっている筈だ。
エドヴァルドも、否定が出来なかったのか、微かに眉根を寄せた。
「翻ってみれば、我がアンジェスは其方と陛下が両輪となって政務を回しておろう?フォルシアンやコンティオラあたりでも次点にはなり得る。どう見ても三国の中で、今、一番安定しておるからな」
…どうやらテオドル大公の中でも、エドヴァルドの「謹慎」は頭の片隅にもないらしい。
同じ謹慎でも、身内がやらかしているフォサーティ家と違い、管轄領下、しかも子爵家がしでかした事とあっては、被る責も薄いと思われているのかも知れなかった。
多分アンジェスの王宮側にしても、ベルセリウス将軍よりは額が多い程度の給与返上で済ませたかったところが、エドヴァルドが力づくで謹慎処分に持っていったが為に、すきあらば有耶無耶にしたいと思っているフシさえある。
「大公、お言葉ですが――」
恐らくは、自分の「謹慎」処分の話をしようとしたエドヴァルドを、そこでテオドル大公が、片手を上げて遮った。
「イデオン公。今、この国において『使者』としての役割を持つのは、誰ぞ?」
「……っ」
「多少は儂の事もあったにせよ、其方は言わば『私用』で婚約者の安否を確かめに来たのではなかったか?」
「私は……此処へ来る前、陛下に『王である以上は自ら乗り込むのではなく、相手に来させてこその権威。陛下に他国の土は踏ませません』と言い含め――ゴホン、説得して来ているのですが」
「陛下の事だ。自分が説教をしに行った方が、話が早くまとまる――くらいは仰っていたのではないかな」
私用、のところから離れての説得を試みようとしたエドヴァルドに、テオドル大公はまたしても別方向で、ちゃんとそれを打ち返して見せた。
この辺り、やっぱりテオドル大公もアンジェス王家の人なんだな…と思う。
エドヴァルドが再び言葉選びに困ったところからすると、きっと陛下は、テオドル大公が言った通りの言葉を口にしたんだろう。
…私ですら、言いそうだと思うくらいだし。
苦い表情を見せるエドヴァルドに、テオドル大公は「ただ」とそこで舌鋒を収めた。
「この話は、メダルド国王が『バリエンダール王宮を、どこぞの公爵家の血で染めてしまっても良い』と決断をするのでなければ、成り立たぬ話だ。ミラン王太子に、将来の国王としての研鑽を積ませるべく、敢えて国王がアンジェスに赴くと言うのであれば、それはそれで受けるべきであろうと思うしな。今、ここで決める話ではなかろうよ」
フィルバートの行幸が、そのまま血塗れ粛清一直線になっているのはどうなのかと思うんだけど、何せサイコパス陛下サマ、まあきっと、私の知らない前科がてんこ盛りにあって、周辺諸国にもそれが認識されているんだろう。
「儂としては、陛下に行幸いただき、次期聖女としてボードリエ伯爵令嬢に、バリエンダールの当代聖女、ノヴェッラ女伯爵との交流を図って貰うべく同行して貰えたら――との思いもあるのだがな」
「宝石による治癒法……でしたか」
エドヴァルドの表情は、複雑そうなままだ。
フィルバートを行かせる事に気は進まない、だけどシャルリーヌに宝石による治癒の話を聞いて、会得出来るものなら会得して貰う事は、決してアンジェスにとって悪い話ではない。
「それは……逆もまたしかりでしょう。もし、メダルド国王陛下がアンジェスに来られるとなれば、こちらから同行を乞うても良いのでは?」
「うむ……」
一見するとエドヴァルドが不利ではあるけれど、結局完全に白旗を上げる事がなかった為に、結論は持ち越しになった。
メダルド国王とミラン王太子の判断に委ねると言う事なんだろう。
一長一短だなぁ……なんて思いながら、私はそれを口には出せなかった。
*******************************************************
いつも読んで頂いて有難うございます!
昨日は副反応に苦しみ……待っていて下さった方には大変申し訳ない事をしました(´;ω;`)
ただ、平熱35度台の私に、36.6度はまだちょっとキツイので、今日は少し短めですがご容赦下さいませ。
明日からちゃんと復帰出来ればと思っています……m(_ _)m
引き続き読んで頂けると嬉しいです。
何だかちょっぴり「悪いお顔」になっていたテオドル大公を、止めようとしたのかどうか、エドヴァルドの方が珍しく抑えの側に回っている。
「確かに最初は、アンジェスとバリエンダールとの会談をアンジェス王宮でと言う話ではあったがな」
「ええ」
「だが、サレステーデの宰相が、おいそれと国を空けられぬのと同様に、バリエンダールとて、フォサーティ宰相家が謹慎させられている現状、王と王太子が政治の矢面に立つ状態であろう?」
言われてみれば、特にミラン王太子が、今は宰相相当の権限を持って、舵取りにあたっている筈だ。
エドヴァルドも、否定が出来なかったのか、微かに眉根を寄せた。
「翻ってみれば、我がアンジェスは其方と陛下が両輪となって政務を回しておろう?フォルシアンやコンティオラあたりでも次点にはなり得る。どう見ても三国の中で、今、一番安定しておるからな」
…どうやらテオドル大公の中でも、エドヴァルドの「謹慎」は頭の片隅にもないらしい。
同じ謹慎でも、身内がやらかしているフォサーティ家と違い、管轄領下、しかも子爵家がしでかした事とあっては、被る責も薄いと思われているのかも知れなかった。
多分アンジェスの王宮側にしても、ベルセリウス将軍よりは額が多い程度の給与返上で済ませたかったところが、エドヴァルドが力づくで謹慎処分に持っていったが為に、すきあらば有耶無耶にしたいと思っているフシさえある。
「大公、お言葉ですが――」
恐らくは、自分の「謹慎」処分の話をしようとしたエドヴァルドを、そこでテオドル大公が、片手を上げて遮った。
「イデオン公。今、この国において『使者』としての役割を持つのは、誰ぞ?」
「……っ」
「多少は儂の事もあったにせよ、其方は言わば『私用』で婚約者の安否を確かめに来たのではなかったか?」
「私は……此処へ来る前、陛下に『王である以上は自ら乗り込むのではなく、相手に来させてこその権威。陛下に他国の土は踏ませません』と言い含め――ゴホン、説得して来ているのですが」
「陛下の事だ。自分が説教をしに行った方が、話が早くまとまる――くらいは仰っていたのではないかな」
私用、のところから離れての説得を試みようとしたエドヴァルドに、テオドル大公はまたしても別方向で、ちゃんとそれを打ち返して見せた。
この辺り、やっぱりテオドル大公もアンジェス王家の人なんだな…と思う。
エドヴァルドが再び言葉選びに困ったところからすると、きっと陛下は、テオドル大公が言った通りの言葉を口にしたんだろう。
…私ですら、言いそうだと思うくらいだし。
苦い表情を見せるエドヴァルドに、テオドル大公は「ただ」とそこで舌鋒を収めた。
「この話は、メダルド国王が『バリエンダール王宮を、どこぞの公爵家の血で染めてしまっても良い』と決断をするのでなければ、成り立たぬ話だ。ミラン王太子に、将来の国王としての研鑽を積ませるべく、敢えて国王がアンジェスに赴くと言うのであれば、それはそれで受けるべきであろうと思うしな。今、ここで決める話ではなかろうよ」
フィルバートの行幸が、そのまま血塗れ粛清一直線になっているのはどうなのかと思うんだけど、何せサイコパス陛下サマ、まあきっと、私の知らない前科がてんこ盛りにあって、周辺諸国にもそれが認識されているんだろう。
「儂としては、陛下に行幸いただき、次期聖女としてボードリエ伯爵令嬢に、バリエンダールの当代聖女、ノヴェッラ女伯爵との交流を図って貰うべく同行して貰えたら――との思いもあるのだがな」
「宝石による治癒法……でしたか」
エドヴァルドの表情は、複雑そうなままだ。
フィルバートを行かせる事に気は進まない、だけどシャルリーヌに宝石による治癒の話を聞いて、会得出来るものなら会得して貰う事は、決してアンジェスにとって悪い話ではない。
「それは……逆もまたしかりでしょう。もし、メダルド国王陛下がアンジェスに来られるとなれば、こちらから同行を乞うても良いのでは?」
「うむ……」
一見するとエドヴァルドが不利ではあるけれど、結局完全に白旗を上げる事がなかった為に、結論は持ち越しになった。
メダルド国王とミラン王太子の判断に委ねると言う事なんだろう。
一長一短だなぁ……なんて思いながら、私はそれを口には出せなかった。
*******************************************************
いつも読んで頂いて有難うございます!
昨日は副反応に苦しみ……待っていて下さった方には大変申し訳ない事をしました(´;ω;`)
ただ、平熱35度台の私に、36.6度はまだちょっとキツイので、今日は少し短めですがご容赦下さいませ。
明日からちゃんと復帰出来ればと思っています……m(_ _)m
引き続き読んで頂けると嬉しいです。
995
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
継子いじめで糾弾されたけれど、義娘本人は離婚したら私についてくると言っています〜出戻り夫人の商売繁盛記〜
野生のイエネコ
恋愛
後妻として男爵家に嫁いだヴィオラは、継子いじめで糾弾され離婚を申し立てられた。
しかし当の義娘であるシャーロットは、親としてどうしようもない父よりも必要な教育を与えたヴィオラの味方。
義娘を連れて実家の商会に出戻ったヴィオラは、貴族での生活を通じて身につけた知恵で新しい服の開発をし、美形の義娘と息子は服飾モデルとして王都に流行の大旋風を引き起こす。
度々襲来してくる元夫の、借金の申込みやヨリを戻そうなどの言葉を躱しながら、事業に成功していくヴィオラ。
そんな中、伯爵家嫡男が、継子いじめの疑惑でヴィオラに近づいてきて?
※小説家になろうで「離婚したので幸せになります!〜出戻り夫人の商売繁盛記〜」として掲載しています。
事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。
木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。
彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。
しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。