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第三部 宰相閣下の婚約者
809 これぞ正しきおもてなし
到着日は、頭と身体を休めましょうということで、ミルテ王女の理想のブレンド探しは翌日に持ち越された。
明日、せっかくだから我が家のコレクションでじっくり勉強しましょうーーなどと言われてしまえば、王女どころか私にもシャルリーヌにも為になることなのだから、誰も異を唱えられなかったのだ。
特に勢い込んでいたミルテ王女がちょっと残念そうだったけど、ガゼボでのお茶会の後に案内された「茶葉の保管庫」を見て、絶句して頷くしかなかったみたいだった。
ここに来てから口にしているアンディション侯爵邸の紅茶は、イデオン公爵邸ともフォルシアン公爵邸とも違う味がしている。
エリィ義母様が、各家各自がオリジナルブレンドを作り上げているというのは、こういうことかと目の当たりならぬ舌で実感した。
しかも驚くことに、王族だった頃から、どこにも角が立たないよう、二十強の主要茶園の茶葉を全て仕入れていたそうだ。
それがファーストフラッシュ、セカンドフラッシュ……と、時期毎に仕入れられているときては、保管庫はどこかの紅茶専門店を彷彿とさせるほどだった。
「これ、シーズン中に全部飲み切れるんですか……?」
思わず口を開けて保管庫に立つ私に、ユリア夫人はクスリと笑った。
「普段使い、来客用、それ以外でも料理やサシェなんかに使い道がありますのよ? さすがに全種同量ではないから、その辺りは調整出来ているのではないかしら」
「そうなんですね……」
なるほど、好みと実用性の間で適切な在庫管理が為されているらしい。
「公爵家としてなら、全てに顔を立たせる必要はないと思いますわ。交流、政略……必要と思われる地域の物を、お好みに応じて仕入れていかれれば充分ではないかしら」
「ありがとうございます。まだフォルシアンの義母に教わり始めたばかりなので、明日も勉強させて頂きます」
「わ、私も勉強させて下さいませ、お祖母様!」
「ユリア様、ぜひ私も……」
ミルテ王女は前のめりに、シャルリーヌはおずおずと片手を上げている。
「……では、色々と菓子も用意させましょうね」
明日の予定が確定したことに、ユリア夫人は満足げに微笑んでいた。
私も、刺繍だなんだと「淑女の嗜み」的なことを言われても困るところだったので、明日紅茶でお腹いっぱいになるくらいは、喜んで許容しようと思ったのだった。
ガゼボでのお茶会のお菓子は、一口サイズのものばかりだったので、夕食に響くような量ではなかった。
きっとそのあたりも計算されているのだろうな――と思いながら、それぞれの部屋で着替えてひと息ついた頃には、すぐに夕食の時間になっていた。
アンディション侯爵邸の料理人は、元王宮料理人で占められているらしい。
単に定年になった人やら、政争の影響で実家が取り潰された人やら、理由は千差万別。
ただ、過去、家として第一王子派や第二王子派であったとしても、本人の資質次第では裏でひっそりと拾い上げられているらしいことが、私にも分かってきた。
夕食は、脂っこさを極力排除した、ヘルシーかつ上品なコース料理だった。
「ごめんなさいね? あまり味の濃いお料理は最近食べられなくて……」
なんてことをユリア夫人は言っているけれど、充分に手がこんでいることは私でも分かる。
「そんな! 美味しいですわ、お祖母さま!」
ミルテ王女の声に、お世辞ではないと私とシャルリーヌも大きく頷いて賛意を示す。
食べながら話すのではなく、一つの料理が終わり、次の料理が運ばれてくる間に、邸宅の女主人であるユリア夫人が話題を振る。
そんな、とても穏やかな食事の時間が流れていく。
「おもてなしの見本を見ているよう……」
ほう、と息を吐くシャルリーヌに、私も、ミルテ王女ですらもハッとなったくらいだ。
「ふふ……長く、王宮で色々な方と交流しましたもの」
ユリア夫人はそう言って静かに微笑む。
確かに見本だけじゃなく、反面教師も色々あっただろうなと思わせる笑みだ。
「ミルテ様、一から十まで真似をするのではなく、お国で通用しそうと思うものを取り入れなさいませ。その見極めも、また勉強ですわ」
「はい!」
なるほど、既に祖母どころか母親となる女性もいないバリエンダール王家だ。
テオドル大公と共に夫人もよく訪れていたのであれば、慕いたくなるのもさもありなんと思えた。
料理自体がヘルシーでも、ケーキのデコレーションやお皿にソースで可愛らしい模様が書かれていたところを見ると、ミルテ王女が喜ぶようにとの配慮がそっとこめられているんだろう。さすがである。
(多分、ミルテ王女だけじゃなく私の為にもなるようにしてくれているんだろうなぁ……)
これぞ、正しきおもてなし。
「ユ、ユリアお祖母さま……あの、今夜は……」
そうして食事が終わった頃、ミルテ王女がもじもじしながら、ユリア夫人にチラチラと視線を向けていた。
その姿はまさに小動物。
十五歳だから許される所業だと呟くシャルリーヌさん、私も賛成デス。
「……そうね。メダルド国王陛下もミラン王太子殿下もここにはいらっしゃいませんものね。さすがに社交界デビューをすれば、そんなことも出来なくなるでしょうから……今日は一緒に寝ましょうか?」
「!」
ぱあっ……と、擬声語を付けたくなるのがぴったりの表情を、ミルテ王女が見せている。
子供の添い寝は小学生くらいまでじゃなかろうかと思ったものの、小柄なミルテ王女とユリア夫人。元王族が住まう邸宅のベッドともなれば、物理的には全然可能なんだろうな、とも思える。
「お二方も、そうさせていただいてもよろしいかしら?」
何よりミルテ王女が、久しぶりにユリア夫人と会えて嬉しいのだということは全身から溢れ出ていたので、私とシャルリーヌは一度だけ顔を見合わせて「もちろんです」と、二人の交流に快く賛成したのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『まあ、結果的に私たちでパジャマトーク出来るからいいのかしら?』
ユリア夫人が、自分たちも二人で話をするのだからと、私とシャルリーヌがどちらかの部屋で話が出来るようにとセッティングを侍女に命じてくれていた。
結果、私に割り当てられた部屋でシャルリーヌと日本語による夜の女子会が開催されることとなったのである。
『まだ着替えてないけど……趣旨としては、まあそうよね』
口火を切るシャルリーヌに、私は苦笑いだ。
『純粋培養すぎて、なんだかこちらがむずがゆくなっちゃったわ』
『あら、王族なんて箱入りに育つか捻じくれて育つか我儘に育つかの三択よ? 立派な箱入り王族じゃない』
ギーレンで、婚約破棄をやってのけた元第一王子や、粘着質に育った第二王子を見てきたシャルリーヌの発言には微妙に説得力がある。
『ああ、でも別にディスってるわけじゃないのよ?』
『分かってるってば。イコール立派なヒロインだってことでしょう?』
そう言って肩をすくめる私に、今度はシャルリーヌが微笑う。
『そうそう。大丈夫よ、レイナ。あれなら仕込みがいがありそうだって、サイアス様も思って下さるわ』
『だといいんだけど……』
だんだんと、不良品の在庫処分をしているようで、良心がうずかないと言えば嘘になる。
だけど「何もかもがうまくいくと思わない方がいい」――そう言ったのは、エヴェリーナ妃なのだ。
舞菜か、エドヴァルドか、親友か。
エヴェリーナ妃の側にだって呑みこむことはあるのだから、今以上の最適解が出てこない限りは、こちらも色々と吞みこむしかない。
「……ゲルトナーだ。ちょっといいか」
「「⁉」」
まだ会話も始まったばかりというところで、不意に部屋の扉が軽く音を立てた。
予期しないタイミングだったこともあり、二人して椅子から軽く腰が浮いたほどだ。
「ああ、とりあえずそのままで大丈夫だ。一応確認。王宮の〝草〟と接点は?」
「え?」
ここにはシャルリーヌもいるけれど、ゲルトナーはしれっと会話を続けている。
もはや「こちら側」の人間だと〝鷹の眼〟にも認識されているらしい。
どう返すのが最適か分からず、思わず語尾が上がってしまった。
「ないなら叩き出すだけだ、気にせず答えてくれ」
いやいやいや。
ヘルマン長官の指揮下にある、王宮側の諜報組織、通称〝草〟を、シャルリーヌは知っているのか?
そう思ったものの、シャルリーヌの表情を見る限り、養父であるボードリエ伯爵から知識として授けられているようにも見える。
そもそも〝草〟とてそれなりの実力者がいるはずなのに、しれっと「叩き出す」と言えるゲルトナーのこの強気。
マズいならマズいで、後で暗示が得意なルヴェックにでも任せればいい……くらいに思っているのかも知れない。
どうやら血の気が多いのは、ファルコやフィトだけじゃなかったらしい。
「……ちなみに〝草〟の誰、とか名乗ってる?」
まあ、普通は名乗らない。
名乗らないだろうけど、名乗りそうな約一名には心当たりがある。
「……名乗ってるな」
一瞬考えた後の、ゲルトナーの答えがそれだった。
今の「間」は、また霊媒師よろしくどこかと交信したのだろうか……。
「……自分は〝草〟のリーシン。サレステーデとバリエンダールの情報はいりませんか? などとふざけたことを言いながら邸宅の周辺をウロついているらしい。やっぱ消すか……?」
「いやいや待って待って!」
何言ってんだ。そしてなぜ、ここへ。
色々と思うことはあれど、情報が要らないかと言われれば……要る。
「ベランダから誘導してもらおうかな?」
ミルテ王女の存在がある以上、客として正面玄関から招き入れるのも差し障りがありそうだ。
後でユリア夫人にだけ、来客の存在が伝わるようにしておけば何とかなるだろう。
「…………分かった」
とても不本意そうな声の後、気配が遠ざかっていく。
『……私は下がった方がいいのかしら』
『えっ、宰相閣下の氷の吹雪に晒されないためにも、証人として残ってよ』
『氷漬けはないわよー、せいぜいベッドから二、三日出られなくなる程度でしょ』
『シャーリー!』
『夜のパジャマトークなんて、こんなもんでしょうー? 分かってるって、ちゃんと残りますって!』
――どうやら夜の女子会は、思わぬ方向に話題が転がろうとしていた。
明日、せっかくだから我が家のコレクションでじっくり勉強しましょうーーなどと言われてしまえば、王女どころか私にもシャルリーヌにも為になることなのだから、誰も異を唱えられなかったのだ。
特に勢い込んでいたミルテ王女がちょっと残念そうだったけど、ガゼボでのお茶会の後に案内された「茶葉の保管庫」を見て、絶句して頷くしかなかったみたいだった。
ここに来てから口にしているアンディション侯爵邸の紅茶は、イデオン公爵邸ともフォルシアン公爵邸とも違う味がしている。
エリィ義母様が、各家各自がオリジナルブレンドを作り上げているというのは、こういうことかと目の当たりならぬ舌で実感した。
しかも驚くことに、王族だった頃から、どこにも角が立たないよう、二十強の主要茶園の茶葉を全て仕入れていたそうだ。
それがファーストフラッシュ、セカンドフラッシュ……と、時期毎に仕入れられているときては、保管庫はどこかの紅茶専門店を彷彿とさせるほどだった。
「これ、シーズン中に全部飲み切れるんですか……?」
思わず口を開けて保管庫に立つ私に、ユリア夫人はクスリと笑った。
「普段使い、来客用、それ以外でも料理やサシェなんかに使い道がありますのよ? さすがに全種同量ではないから、その辺りは調整出来ているのではないかしら」
「そうなんですね……」
なるほど、好みと実用性の間で適切な在庫管理が為されているらしい。
「公爵家としてなら、全てに顔を立たせる必要はないと思いますわ。交流、政略……必要と思われる地域の物を、お好みに応じて仕入れていかれれば充分ではないかしら」
「ありがとうございます。まだフォルシアンの義母に教わり始めたばかりなので、明日も勉強させて頂きます」
「わ、私も勉強させて下さいませ、お祖母様!」
「ユリア様、ぜひ私も……」
ミルテ王女は前のめりに、シャルリーヌはおずおずと片手を上げている。
「……では、色々と菓子も用意させましょうね」
明日の予定が確定したことに、ユリア夫人は満足げに微笑んでいた。
私も、刺繍だなんだと「淑女の嗜み」的なことを言われても困るところだったので、明日紅茶でお腹いっぱいになるくらいは、喜んで許容しようと思ったのだった。
ガゼボでのお茶会のお菓子は、一口サイズのものばかりだったので、夕食に響くような量ではなかった。
きっとそのあたりも計算されているのだろうな――と思いながら、それぞれの部屋で着替えてひと息ついた頃には、すぐに夕食の時間になっていた。
アンディション侯爵邸の料理人は、元王宮料理人で占められているらしい。
単に定年になった人やら、政争の影響で実家が取り潰された人やら、理由は千差万別。
ただ、過去、家として第一王子派や第二王子派であったとしても、本人の資質次第では裏でひっそりと拾い上げられているらしいことが、私にも分かってきた。
夕食は、脂っこさを極力排除した、ヘルシーかつ上品なコース料理だった。
「ごめんなさいね? あまり味の濃いお料理は最近食べられなくて……」
なんてことをユリア夫人は言っているけれど、充分に手がこんでいることは私でも分かる。
「そんな! 美味しいですわ、お祖母さま!」
ミルテ王女の声に、お世辞ではないと私とシャルリーヌも大きく頷いて賛意を示す。
食べながら話すのではなく、一つの料理が終わり、次の料理が運ばれてくる間に、邸宅の女主人であるユリア夫人が話題を振る。
そんな、とても穏やかな食事の時間が流れていく。
「おもてなしの見本を見ているよう……」
ほう、と息を吐くシャルリーヌに、私も、ミルテ王女ですらもハッとなったくらいだ。
「ふふ……長く、王宮で色々な方と交流しましたもの」
ユリア夫人はそう言って静かに微笑む。
確かに見本だけじゃなく、反面教師も色々あっただろうなと思わせる笑みだ。
「ミルテ様、一から十まで真似をするのではなく、お国で通用しそうと思うものを取り入れなさいませ。その見極めも、また勉強ですわ」
「はい!」
なるほど、既に祖母どころか母親となる女性もいないバリエンダール王家だ。
テオドル大公と共に夫人もよく訪れていたのであれば、慕いたくなるのもさもありなんと思えた。
料理自体がヘルシーでも、ケーキのデコレーションやお皿にソースで可愛らしい模様が書かれていたところを見ると、ミルテ王女が喜ぶようにとの配慮がそっとこめられているんだろう。さすがである。
(多分、ミルテ王女だけじゃなく私の為にもなるようにしてくれているんだろうなぁ……)
これぞ、正しきおもてなし。
「ユ、ユリアお祖母さま……あの、今夜は……」
そうして食事が終わった頃、ミルテ王女がもじもじしながら、ユリア夫人にチラチラと視線を向けていた。
その姿はまさに小動物。
十五歳だから許される所業だと呟くシャルリーヌさん、私も賛成デス。
「……そうね。メダルド国王陛下もミラン王太子殿下もここにはいらっしゃいませんものね。さすがに社交界デビューをすれば、そんなことも出来なくなるでしょうから……今日は一緒に寝ましょうか?」
「!」
ぱあっ……と、擬声語を付けたくなるのがぴったりの表情を、ミルテ王女が見せている。
子供の添い寝は小学生くらいまでじゃなかろうかと思ったものの、小柄なミルテ王女とユリア夫人。元王族が住まう邸宅のベッドともなれば、物理的には全然可能なんだろうな、とも思える。
「お二方も、そうさせていただいてもよろしいかしら?」
何よりミルテ王女が、久しぶりにユリア夫人と会えて嬉しいのだということは全身から溢れ出ていたので、私とシャルリーヌは一度だけ顔を見合わせて「もちろんです」と、二人の交流に快く賛成したのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『まあ、結果的に私たちでパジャマトーク出来るからいいのかしら?』
ユリア夫人が、自分たちも二人で話をするのだからと、私とシャルリーヌがどちらかの部屋で話が出来るようにとセッティングを侍女に命じてくれていた。
結果、私に割り当てられた部屋でシャルリーヌと日本語による夜の女子会が開催されることとなったのである。
『まだ着替えてないけど……趣旨としては、まあそうよね』
口火を切るシャルリーヌに、私は苦笑いだ。
『純粋培養すぎて、なんだかこちらがむずがゆくなっちゃったわ』
『あら、王族なんて箱入りに育つか捻じくれて育つか我儘に育つかの三択よ? 立派な箱入り王族じゃない』
ギーレンで、婚約破棄をやってのけた元第一王子や、粘着質に育った第二王子を見てきたシャルリーヌの発言には微妙に説得力がある。
『ああ、でも別にディスってるわけじゃないのよ?』
『分かってるってば。イコール立派なヒロインだってことでしょう?』
そう言って肩をすくめる私に、今度はシャルリーヌが微笑う。
『そうそう。大丈夫よ、レイナ。あれなら仕込みがいがありそうだって、サイアス様も思って下さるわ』
『だといいんだけど……』
だんだんと、不良品の在庫処分をしているようで、良心がうずかないと言えば嘘になる。
だけど「何もかもがうまくいくと思わない方がいい」――そう言ったのは、エヴェリーナ妃なのだ。
舞菜か、エドヴァルドか、親友か。
エヴェリーナ妃の側にだって呑みこむことはあるのだから、今以上の最適解が出てこない限りは、こちらも色々と吞みこむしかない。
「……ゲルトナーだ。ちょっといいか」
「「⁉」」
まだ会話も始まったばかりというところで、不意に部屋の扉が軽く音を立てた。
予期しないタイミングだったこともあり、二人して椅子から軽く腰が浮いたほどだ。
「ああ、とりあえずそのままで大丈夫だ。一応確認。王宮の〝草〟と接点は?」
「え?」
ここにはシャルリーヌもいるけれど、ゲルトナーはしれっと会話を続けている。
もはや「こちら側」の人間だと〝鷹の眼〟にも認識されているらしい。
どう返すのが最適か分からず、思わず語尾が上がってしまった。
「ないなら叩き出すだけだ、気にせず答えてくれ」
いやいやいや。
ヘルマン長官の指揮下にある、王宮側の諜報組織、通称〝草〟を、シャルリーヌは知っているのか?
そう思ったものの、シャルリーヌの表情を見る限り、養父であるボードリエ伯爵から知識として授けられているようにも見える。
そもそも〝草〟とてそれなりの実力者がいるはずなのに、しれっと「叩き出す」と言えるゲルトナーのこの強気。
マズいならマズいで、後で暗示が得意なルヴェックにでも任せればいい……くらいに思っているのかも知れない。
どうやら血の気が多いのは、ファルコやフィトだけじゃなかったらしい。
「……ちなみに〝草〟の誰、とか名乗ってる?」
まあ、普通は名乗らない。
名乗らないだろうけど、名乗りそうな約一名には心当たりがある。
「……名乗ってるな」
一瞬考えた後の、ゲルトナーの答えがそれだった。
今の「間」は、また霊媒師よろしくどこかと交信したのだろうか……。
「……自分は〝草〟のリーシン。サレステーデとバリエンダールの情報はいりませんか? などとふざけたことを言いながら邸宅の周辺をウロついているらしい。やっぱ消すか……?」
「いやいや待って待って!」
何言ってんだ。そしてなぜ、ここへ。
色々と思うことはあれど、情報が要らないかと言われれば……要る。
「ベランダから誘導してもらおうかな?」
ミルテ王女の存在がある以上、客として正面玄関から招き入れるのも差し障りがありそうだ。
後でユリア夫人にだけ、来客の存在が伝わるようにしておけば何とかなるだろう。
「…………分かった」
とても不本意そうな声の後、気配が遠ざかっていく。
『……私は下がった方がいいのかしら』
『えっ、宰相閣下の氷の吹雪に晒されないためにも、証人として残ってよ』
『氷漬けはないわよー、せいぜいベッドから二、三日出られなくなる程度でしょ』
『シャーリー!』
『夜のパジャマトークなんて、こんなもんでしょうー? 分かってるって、ちゃんと残りますって!』
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