クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです

こたろう文庫

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大惨事

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「こんな感じになります」
ロンデル子爵領に残った僕は、昨日と同じ店の二部屋借りている内の一部屋でルイナさんに事の顛末を説明する。

「はい。わかりました」

「子爵はルイナさんが休んだ理由に理解を示していましたので悪いようにはならないはずですが、万が一今回の件で不利益を被ることになれば、遠慮せずに騎士団に言ってください」

「ありがとうございます」

「こんなお礼で申し訳ないですが、家族で美味しいものを食べて下さい」
説明は済んだので、ルイナさんには旦那さんと子供を待たせている隣の部屋へと行ってもらい、1人で食事をしてから店を出て、魔法都市へ向かう。

子爵には騎士を連れて先に出発してもらったけど、ファストトラベルを使って移動した僕は、先に魔法都市に到着する。


「とりあえず、子爵が到着する前にクロウトがどんな人物か確認しておくか」
ロンデル子爵が息子の罪を隠蔽するような人物ではなさそうなことは確認出来てはいるけど、親である以上、その時になって情が出てしまうかもしれない。
別にクロウトを処刑するつもりはないが、ネロ君にちょっかいを出せないように、弱みを握るなり、権力や財力を奪うなりしておきたい。

子爵はクロウトが犯人と思っているようだけど、クロウトのことを何も知らない僕からすると、ネロ君がいじめに遭っていたことで、孤児院に対する嫌がらせをクロウトのせいだと勘違いしている可能性もある。
そうなると、別の誰かを探さないといけないので、僕としてはクロウトが犯人であってくれた方が手間が省けてありがたい。

何にしてももう夜も遅いので、一度自室に戻り寝ることにする。

翌朝、クロウトについて調べるために魔法学院へと向かう。
クロウトはネロ君と一緒の時期に魔法学院に入学しているはずで、事件があったのは3年前くらいだと言っていたから、クロウトは4年生だろうか。

まずは学院長に挨拶と説明だけしておいた方がいいかな。

「お久しぶりです」
学院に特待生として通っていたこともあり、今回はすんなりと学院長室まで通してもらう。

「お久しぶりです。クオンさん。騎士団長になられたようで驚きましたよ。本日はどのようなご用件でしたでしょうか?」

「以前教えて頂いた占い師のネロ君に先日会ってきまして、ここの生徒であるクロウトという人物からいじめを受けていたと聞きました。孤児院に嫌がらせをされることがあるようで、ネロ君はクロウトがまだ恨みを持っていて嫌がらせをしていると思っているようです。ネロ君は第1騎士団の庇護下に置くことにしましたので、ネロ君の安全の為にその辺りを確認しにきました。学院長は当時のことを覚えていますか?」

「もちろん覚えていますよ。忘れることは出来ません」

「詳しく教えてください」

「ネロ君が学院に通い始めて1か月経った頃に、生徒の1人が慌ててこの部屋に駆け込んで来ました。彼はひどく怯えた様子で、すぐに訓練場まで助けに来て欲しいと言われました。訓練場に行った私は信じられない光景を目にしました。訓練場にはおびただしい量の血が飛び散っており、何人もの生徒と、訓練を担当していた教員が倒れていました。空にクロウト君の首を掴んでいるネロ君の姿があり、あの光景は物語に出てくる悪魔のようでした」
思っていたより、クローネは暴れていたようだ。

「ネロ君からはクローネという精霊が暴れたと聞いています」

「私もそう聞きました。とりあえず騒ぎを収めるためにネロ君を拘束しようとしましたが、私の力では拘束することが出来ず、駆け付けた教員の力を借りても無理でした。あれは発動した魔法を無効化されていたのだと思います」

「それは、なかなかの強敵ですね」
魔法を無効化する相手か……。
どうやって相手にするのがいいのだろう。一度手合わせ願いたいな。

「なんだか楽しそうですね?」
顔に出てしまっていたようだ。

「失礼しました。強敵と聞くとどうしても戦ってみたくなるんです。それで、そんな相手をどうやって鎮めたんですか?」

「説得しました。クローネという精霊がネロ君の体を操っていたというのは後から知ったことですが、まるで二重人格のようにいつものネロ君とはかけ離れていましたので、『暴れれば暴れるだけネロ君に迷惑が掛かりますよ』と半信半疑のまま言ってみた所、クロウト君をこちらに投げ捨ててから降りてきて、そのまま気を失いました」

「なるほど。その後はどうなったんですか?」

「意味があったのかわかりませんが、気を失ったネロ君を縛って反省室に閉じ込めた後、怪我をした生徒達を治療して、ネロ君が暴れることになった経緯を聞き取りました。そこで、日頃からクロウト君を中心としたグループがネロ君をいじめていたことと、ネロ君が暴れる直前に、クロウト君がネロ君に向けて火魔法を放っていたことを知りました。初めは遊び半分で実際には魔法を当ててはいなかったようですが、制御が乱れたのかわざとかはわかりませんが、ネロ君に火球が直撃して、そのすぐ後にネロ君が豹変したようです。ネロ君がクローネという精霊と契約しているという話を聞いたのもこの時ですね。ネロ君はクローネが体を動かしている時の記憶は無いみたいです」

「クロウト君側に問題があったことが判明したのはわかりましたが、聞く限りだとネロ君が処刑されてもおかしくないように聞こえます。学院の教員が一斉に掛かっても手も足も出ない相手を孤児院に戻したのも不可解です」

「これは一部の者しか知らないことなので内密にお願いします。元々はネロ君は処刑することになるはずでした。孤児だということは関係なく、平民が貴族の御子息を死ぬ寸前まで痛めつけたのです。衛兵に引き渡せば間違いなく処刑されるでしょう。ただ、ネロ君を衛兵に引き渡して処刑しようとした場合、また豹変して暴れるのではないかという不安がありました」

「間違いなく暴れるでしょうね」
いじめられているのに腹を立ててクラスメイトを半殺しにしたんだ。処刑しようとすれば、魔法都市を破壊し尽くしてでも阻止するかもしれない。

「どうしようか悩んでいる時に、クローネの方から取引を持ちかけられたのです。取引と言うには一方的なものでしたが……」

「その取引というのはなんだったんですか?」

「あれはクローネが負うべき罪であり、ネロ君が負うものではないというものです。私に確認する手立てはありませんでしたが、クローネは自ら命を絶ちました。取引を持ちかけられた後から、ネロ君がクローネと連絡が取れなくなったと慌てていたので、実際に命を絶ったのだと思います」

「そんなことがあったんですね」
思いがけずクローネが死んだ理由を知ることになったな。

「後はクオンさんも知っての通りです。いじめを受けていたという事情も考慮して、ネロ君は衛兵に引き渡さずに卒業させたのです。卒業というのは形だけで、実際には退学処分ですね。ロンデル子爵から許しが出たことが幸いでした。御子息に原因があったとはいえ、子爵が処刑を望めば免れることは出来ませんでしたから」

「え?ロンデル子爵は息子が大怪我をしたことしか知りませんでしたよ?クロウト君がネロ君をいじめていたことも知りませんでした。子爵への説明は学院長自らがしたんですか?」

「それは本当ですか?あの時は私が学院を離れることの出来る状況ではありませんでしたので、連絡は教員に任せましたが……」

「どこかで話が歪められているみたいですね」
どうせクロウトが親にいじめをしていた相手に返り討ちにあったことを言いたくなくて、その教師を権力で脅したか、金で釣ったのだろう。
子爵と話した限りだと、以前からクロウトは問題を起こしていて、更生させるという目的もあって魔法学院に通わせているみたいだからな。
魔法学院でも問題を起こせば、廃嫡されるとでも思ったのだろう。
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