クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです

こたろう文庫

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「騎士団長様。お、お久しぶりです」
少しではあるけど話をしたことのあるアルトに声を掛けたわけだけど、アルトからは緊張した返事が返ってきた。

「そんなに畏まらなくてもクオンでいいよ。前にそう言っただろ?騎士を目指していたと記憶しているけど、調子はどう?」
まずは世間話から始めることにする。

「全然駄目です。結局暗号も解けないまま、募集が終わってしまいました。学院ではまだ4年生ですが、もうすぐ16になってしまうので、そろそろ仕事を決めないといけません」
この世界では16で成人となる。
16歳になる前から働いている人も多いが、16歳を超える頃には皆働き始める。
仕事をせずに学ぶことの出来るリミットと考えるのは普通だ。

「そっか。あの暗号を作った人に会ったけど、あれは解読系のスキルでもないと無理な内容だったよ。魔法の訓練はうまくいってる?アルトはどの属性の魔法が使えるの?」
鑑定したから知ってはいるが、それをアルトは知らないので聞く。

「基本の4属性魔法と治癒魔法のスキルを獲得しました」

「訓練を見てたけど、あまり制御が出来てないみたいだね」

「はい。お恥ずかしい限りです。これでは騎士どころか、衛兵隊にも入れないです。冒険者になったとしても、どこまでやれるか不安しかありません」

「治癒魔法はどの程度扱える?基本属性を扱える人はたくさんいるけど、治癒魔法を使える人はそこまで多くはないから、アルトが自身をアピールするなら治癒魔法だと思うけど」

「程度にもよりますが、骨折くらいまでなら治癒出来ます。ただ、あまり魔力量が多くないので、何度も使うことが出来ないんです」

「魔力量はレベルを上げれば増えるからあまり気にすることはないと思うよ。使っているところを見せてもらえる?」

「はい。どうすればいいですか?」

「そうだね……あ、あそこの女の子を呼んできてもらえる?」
また自分の腕でもナイフで切ろうかと思ったけど、ちょうど転倒したのか足を擦りむいている女の子がいたので、アルトに呼んできてもらう。

「どどうしましたでしょうか?」
呼ばれた女の子のルクナちゃんに声を震わせながら聞かれる。
7歳くらいだろうか。このクラスで明らかに1番幼い。
これが英才教育というやつだろうか。

「足を怪我してるね」

「さっき転んでしまって……」

「アルトに治癒魔法を見せてもらおうと思ってね。その怪我をアルトに治させてもいいかな?」

「あ、はい。あありがとうございます」

「それじゃあ、この子の怪我を治して」

「わかりました」
アルトがルクナちゃんに治癒魔法を掛ける。
少しして傷が完全に塞がった。

「うん、傷跡も残ってないね。ありがとう、訓練に戻っていいよ」

「ありがとうございました」
ルクナちゃんがお礼を言ってから訓練に戻る。

「治癒魔法は悪くないんじゃないかな?魔力量がって言ってたけど、同じことが後どれくらい出来る?」

「訓練で消費してなければ、後2回くらいです。今はもうほとんど魔力は残ってません」

「そっか。このままだと訓練に支障がでるからこれをあげるよ。市販のものとは違うけど魔力回復薬だよ」

「そんな高級品を貰ってしまっていいのですか?」

「僕が作ったやつだから、気にせずにもらっていいよ。材料費しか掛かってないから」
その材料費も果実水の銭貨3枚しか掛かっていない。

「…………。」
アルトは飲むのを躊躇っている。

「アルトにあげたものだから、今飲まなくてもいいよ。何かの時の為にとっておいてもいいけど、腐るから早めに飲むか、防腐魔法の掛かった瓶に移し替えて保管してね」

「あ、ありがとうございます」

「アルトはずっとこのクラス?」

「そうです」

「それなら、3年前に事件が起きた時もその場にいたのかな?」
世間話もこのくらいでやめて、本題に入る。

「はい。いました」

「いじめられてた子が暴れたみたいだね。アルトに怪我はなかったの?」

「あの子がいじめられていたことを僕は知らなかったので後から聞いた話になりますが、怪我をしたのはいじめをしていた人と、教員だけみたいです。我を忘れているように見えましたが、案外冷静だったのかもしれません」
なるほど。いじめをしていた者への報復と、監督義務を怠った教員へ怒りをぶつけた形だな。
本当に我を忘れていたのであれば誰も生き残っていないはずだから、冷静な部分は残ってはいたのだろう。

「そのいじめをしていたのが誰か教えてもらえる?」

「それは……ごめんなさい。個人を貶めることになるので、言いたくありません。任務に必要なことであれば学院長に聞いてください」
噂好きであるのは前に話して知ってるけど、陰口は好きではないということか。
前に話をした時も、アルトが僕の噂を広めてるわけじゃないって言ってたな。

「…………学院長からは教えてもらえなくてね。そうだ!教えてくれるなら、アルトが騎士団に入れるように推薦状を書いてあげるよ。推薦状があっても必ず入団出来るわけではないけど、大分有利にはなるよ」

「魅力的すぎる提案だけど、それで騎士になれても、それは僕の憧れた騎士ではないから断らせてください」
好感の持てる返事が返ってきたな。
欲しい情報は手に入らなかったけど……。
まあ、学院長にさっき聞き忘れたと正直に言えばいい話ではあるんだけど、どうせ聞き忘れたなら、情報収集を楽しみたい。

「意地悪な質問をして悪かったよ。正直言うと、アルトの人となりを確認したくて聞いただけで、実際にはいじめをしていたのが誰か知りたかったわけじゃないんだ。アルトは治癒士として騎士団に入る気はあるかな?第1騎士団で治癒士が不足していてね。騎士という扱いではないけど、実力を付ければ間違いなく評価される立場ではあるよ。将来的には騎士になれるかもしれない」
さっきの質問に意味はないことにして、アルトを勧誘する。
実際に、レイハルトさんから治癒士が足りていないという話は聞いている。
探してはいるけど、良い人材が見つからないようだ。

「嬉しい話だと思うけど、さっきも言ったとおり魔力量が少ないから、治癒士として力になれるかと言われると自信はないよ」

「魔力量のことはレベルを騎士団で上げるから問題ないよ。嫌でも鍛えてくれるから」
第1騎士団の訓練は、治癒士に対するメニューでも厳しい。
だから、治癒士を目指している人を入団させても長く続かず、人員が不足する事態に陥っている。
しかし、これは任務に同行させた時に身を守る術がなくては命を落とす危険が増す、というレイハルトさんの優しさからくるもので、強く当たっているわけではない。

「僕を誘ってくれた理由を聞いてもいいですか?」

「騎士として相応しくない人を勧誘するつもりはないけど、理由を付けるならさっきも言った通り、第1騎士団で治癒士が不足しているからだね。アルトにとって悪い話ではないと思ったから話をしただけで、アルトだから勧誘したわけではないから、変な期待はしないでね」

「そうだよね……。うん。よろしくお願いします」

「いい返事が聞けてよかったよ。それじゃあ、推薦状を用意しておくよ」
治癒士の確保に成功したので、アルトとの話はここまでにして、訓練に戻ってもらう。

さて、アルトと話している間にだいぶ生徒の実力も確認出来たし、そろそろクロウトには恥をかいてもらうとするか。
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