上 下
68 / 147
奔走編

逃亡者、選択する

しおりを挟む
翌日、ミアが到着したので姫野さんに紹介する。

「昨日言ってた、ミアだよ。色々あって、僕を兄のように慕ってくれてるんだよ」

「ミアです。初めまして。お兄ちゃんに助けてもらって妹になりました」

「……。え?」
姫野さんが驚く

「ちょっと、ミア。打ち合わせと違うよ」

「だって、本当の事だよ」

「さっきは今だけお兄ちゃんって呼ばないって言ったよね?」

「隠す必要ないと思って」

「必要はなかったかもしれないけど、なんか恥ずかしかったんだよ」

「えっと、影宮君。結局どうゆう事なの?城にいたメイドの子よね?」

「城で暗殺されそうになってたから助けたんだよ。そしたら懐かれて、いつの間にか…………妹になってた」

「……深く聞かない事にするわ」
気を使われてしまった

「やましい事はしてないからね!」
これだけは伝えとかないといけない

「ミア、この人が姫野さん。覚えてるかわからないけど、一緒に召喚されたクラスメイトの1人だよ」

「ごめんなさい。覚えてない」

「話したこともなかったんだからしょうがないわよ」

「それでお兄ちゃん、これからどうするの?」

「迷ってるんだよね。魔王様に会う方法を探しに行きたいけど、このまま王国を放置するのもなぁ。兵士がやられて黙ってるとは思えないし」

「先に王国潰すの?お兄ちゃんならできると思うけど」
ミアが物騒な事を言い出した

「いやいや、怖い事言わないで。王国にも良い人はいたよ。カルロさんとか村の人にはお世話になったよね?僕は殺人鬼じゃないよ?」

「別に王国の人を皆殺しにしようなんて言ってないよ!」
よかった。僕の早とちりだったようだ。

「…それはわかってるけど、王国を潰すって事は、王国に住んでる人の生活を変えるってことだからね。やるなら慎重に進めないと」

「本当にわかってた?」
なんでこんなに鋭いんだろうか?

「モチロンダヨ」

「はぁ。」
ため息を吐かないでほしい

「あの、私も話に入れてくれないかな?」
姫野さんが恐る恐る手を挙げる

「ああ、うん。ごめんね」

「私こそ、なんか邪魔してごめんなさい」

姫野さんは何か勘違いしている気がする
「姫野さんが思ってるような事はないからね」

「わかってるから大丈夫よ」

こうやって言う人は大体わかってないと僕の経験則が言っている

「まぁ、いいや。姫野さん、王国に残ってるクラスメイトはどんな感じ?」

「…高村君に支配されてるわ。女の子は私みたいに部屋に閉じこもってる子が多いかな。逃げたいけど逃げる勇気がないの。男の子は何考えてるかわかんない。ごめんなさい」

「他のみんなは城にいるの?」

「変わってなければ城にいるのは17人よ」

「1人足らないね」

「篠塚君が、影宮君が処刑されてすぐに姿を消したわ」
篠塚君の職業はなんだったけな……確か忍者だったな

「何でいなくなったかはわかる?」

「みんなは逃げ出したって言ってたよ」

「まぁ、タイミング的にはそうか…忍者だし逃げようと思えば逃げれるだろうし」
篠塚君はあまり話した事ないし、よく知らないんだよなぁ。
休み時間も1人で本を読んでた記憶がある

「篠塚君って忍者なの?武道家だったはずだよ」
姫野さんに指摘されるけど、僕も記憶が確かではない。
記憶違いしてたかな?そもそも武道家なんていたかな?

「僕の記憶違いかもしれない。それで、姫野さんみたいに本当は逃げたいけど逃げなかった人はわかる?」

姫野さんから誰がそうなのか確認する

結構多いな。助けたいけど…穏便に全員を連れ出すのは難しいかな

「とりあえず、情報がもっと欲しいから委員長達と合流したい所だけど……どこにいるかわからないな。この街に向かってるのかな?」

「お兄ちゃん、結局どうするの?」

僕は迷う。王国に干渉しすぎるのは危険な気がする。周りを巻き込みかねない。
危険を承知で王国に乗り込むか
このまま街で委員長達を待つか
当初の予定通り帝都に向かうか

「委員長達が逃げのはいつ?」

「2ヶ月くらい前かな」

「そうなると、順調に行けばもう街には着いてるはずだよね。街にいたら気づくと思うんだけどな」

「お兄ちゃんはその頃ダンジョンの攻略に行ってたよ。委員長さんの顔は私も覚えてるけど、あの頃はあまり家から出ないようにしてたから……」

「そうだった。どこか他の所に向けて、既に出発してる可能性もあるのか」

「順調に旅してるならそうなるね」

「だったら帝都に向かうのがいいのかな。一応、ミハイル様に僕を探している人がいたら、念話で伝えてもらえるようにお願いだけして」

「クラスメイトはいいの?」

「良くはないけど、もう少し辛抱してもらおう。可哀相とは思うけど、姫野さんにも言った通り、残る選択をしたのは彼女達だからね。準備が不十分のまま助けに行ったら、関係ない人を巻き込む事になる可能性が高いよ」

「お兄ちゃんがそれでいいなら私はどこでも付き合うよ」
選択が良かったのかはわからないけど、行き先は決めた。
また王国が攻めてくるかもしれないし、この街の戦力を上げる手伝いをしてから出発するか

「ねぇ、やっぱり影宮君ってその子と付き合ってるんでしょ?」
姫野さんは勝手にそんな事を言うけど、もちろん違う

「違うからね」

「隠さなくてもいいのに…」
やっぱり聞く耳をもたないらしい
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

俺の妹になってください

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,114pt お気に入り:9

誰得☆ラリクエ! 俺を攻略するんじゃねぇ!? ~攻略!高天原学園編~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:235pt お気に入り:13

異世界転移したので、のんびり楽しみます。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:92pt お気に入り:406

もどかし遊戯

BL / 連載中 24h.ポイント:127pt お気に入り:2

ほろ甘さに恋する気持ちをのせて――

恋愛 / 完結 24h.ポイント:553pt お気に入り:17

【短編】わかたれた道

恋愛 / 完結 24h.ポイント:362pt お気に入り:22

妖精のいたずら

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,350pt お気に入り:393

ラグナロク・ノア

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:276pt お気に入り:3

私がこの株を買った訳 2023

経済・企業 / 連載中 24h.ポイント:71pt お気に入り:13

ホロボロイド

SF / 連載中 24h.ポイント:234pt お気に入り:0

処理中です...