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国盗り編

逃亡者、使用人に気を使う

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魔王と戦った後、委員長に部屋に案内される。

「この2部屋を使って」

「ありがとう。後で桜先生達とも話をしたいんだけど、どうしたらいいかな?」
今まで何をしていたのか聞きたいし、これからのことも相談したい。帝国と王国の戦のことも話さないといけないと思うし……

「私の方でみんなに声を掛けておくから、部屋で待ってて」

「うん、わかったよ」

僕は案内された部屋に入る。

「部屋は2つ借りてるんだから、ミアはそっちの部屋だよ」
ミアが一緒に入って来たので、分かれるように言う

「2つとも使えとは言われてないよ」

「言われてはいないけど、そう言う意味だよ。委員長達もいるし今はちゃんと部屋は分かれよう」
僕はミアを説得する

「でも、知らない場所で魔力も消費してて心配だから、お兄ちゃんと一緒の部屋がいいなぁ」
それっぽい理由をつけて頼んでくる。確かにそう言われると断りにくい。
案内された部屋はかなり広いので問題はないけど、委員長達にどう思われるかが心配だ。

王国で別れた時もそういう風に見られていた節があるし……

コンコン!
僕が悩んでいると部屋がノックされる。

僕がドアを開けると桜先生がいた。

「影宮君、元気そうで良かったわ。ミアちゃんも久しぶり」

「先生、お久しぶりです。何か用ですか?委員長に後でみんなで集まるれるようにお願いしてはあったんですが…。」

「私も影宮君に色々と聞きたいことはあるんだけど、今は別の用件で来たのよ。魔王様の指示で影宮君の使用人をすることになったの。そういうわけだから、何かあったら私に言ってくれればいいからね」
そういうわけって……どういうわけだ?
先生を使用人扱いって気を使いますよ?魔王は何を考えているのだろうか?

「困惑させてごめんね。魔王様からはお給料をもらってるし、生活もさせてもらってるから断れないのよ。先生相手だと頼みにくいかもしれないけど、遠慮せずに言ってね」

「あ、はい」

「それから、ミアちゃんの部屋にも別の使用人の人が行ってるはずだけど、こっちの部屋に呼んだ方がいい?ここは日本じゃないし、今の私が言うことじゃないかもしれないけど、まだ若いんだからちゃんと考えて行動してね」
先生は完全に誤解している。

「先生、誤解です。ミアとはそういう関係ではないです。ミアは妹みたいな存在で、知らない所に急に連れてこられて心配だって言うから一緒の部屋にいただけですよ」

「……そうなんですね。それでミアちゃんもこの部屋を使うの?」
信じてはいない様子だ。

「あ…はい」
先生に見られて拒否する理由もなくなってしまったので、了承してしまった。

「やった」
ミアが喜ぶ

「もう1人の方も呼んできますね」
先生はそう言って部屋から出て行った

「はぁ、今回だけだからね」
僕はミアに言う

「うん」
ミアは笑顔で頷く。この約束は果たされないと悟った。

少しして戻ってきた先生と一緒に入ってきたのは魔族の女性だった。

「この度、ミア様の身の回りのお手伝いをさせていただくことになりましたサトナと申します。なんなりとお申し付け下さい」
僕の方に先生を付けた魔王に作為的なものを感じる。

「あ、はい。よろしくお願いします」
ミアは困惑しながら返事をする。

多分ミアも思っていることだけど、使用人とか要らないから断ってもいいのだろうか?
好意で付けてくれてるんだろうから断るのは失礼なのかな……

「何かあればお願いするので、自由にしていて下さい。それから先生、魔王様に話をしたいんだけど会うことって出来ますか?」
泊まることになったのであれば、1つ頼まないといけないことがある。

「少し待っててね」
先生はそう言って部屋を出ていった。

僕とミアがゆったりしている間もサトナさんは部屋の隅で立っている。
正直落ち着かない。

「あの、サトナさんも適当に座ってゆっくりしていて下さい」
僕は声を掛ける

「いえ、私はこのままで大丈夫です」
仕事熱心で真面目なんだと思うけど、こっちが大丈夫じゃないんだよなぁ。

「こういうのに慣れていなくて、僕達が落ち着かないので、気にせずに休んでて下さい」
言うか迷ったけど、言わないとずっとこのままな気がしたので、勇気を出して言うことにした。

「……わかりました。ご配慮が足りず申し訳ありませんでした」
サトナさんは頭を下げた後、壁際に椅子を移動させてちょこんと座った。

『どうしたらいいのかな?』
僕はミアに念話で助けを求める

『私にもわからないよ』
そうだよね

気まずい空気のまま過ごしていると、先生が戻ってきた。

「魔王様、今から会えるって。魔王様の部屋に案内するわ」
先生の案内で向かうと、この部屋にはミアとサトナさんの2人になる。
それはミアが可哀想だ

「先生はミアの事見ててもらえますか?サトナさん、すいませんが魔王様の部屋に案内をお願いします」
なので先生に部屋に残ってくれるようにお願いする

「かしこまりました」
サトナさんが立ち上がる。
私はミア様の使用人なのでとか言われなくてよかった。

僕はサトナさんの案内で魔王の部屋に行く。
ミアから念話でお礼を言われた。

「魔王様、ハイト様をお連れしました」
サトナさんがドアを開ける

「ハイト君、話があるんだって?何かな?」

「あ、はい。サトナさん、すみませんが魔王様と2人で話したいので出ていてもらっていいですか?」

「かしこまりました」
サトナさんには部屋から出てもらう

「僕が地球に帰れる事はミアには言わないで下さい」
僕は魔王に口止めをしにきた

「やっぱり自分でも帰れるってわかってるんだね」

「試したわけではありませんけど……」

「問題なく帰れるはずだよ。世界を分ける壁をどうにか出来れば、行き先が地球だろうと、神界だろうと行ったことがある場所なら転移は発動するだろうからね」

「魔王様もそう思いますか?」

「そうだね。絶対ではないけど問題ないだろうね。それで妹ちゃんに黙ってればいいんだね?言っちゃえばいいのに……」

「お願いします。気持ちの整理がついたら自分で話すつもりではいるので」

「そっか。まあその辺りに干渉する気はないけど、困ったことがあったら相談してよ。これでも君のことは気に入ってるからね」

「ありがとうございます。早速で申し訳ないんですけど、魔王様のスキル……前にみせてもらったものだと転送がありますよね?あれでみんなまとめて地球に送る事は出来ないんですか?」

「あのスキルは色々と制約があってね。結果的に言えば無理だね。あのスキルは一度の発動で1つのものしか送れないんだよ。君がなにを迷っているのか、大体予想がついてはいるけど、アドバイスをするなら全てを叶えることは不可能に近いよ。何かを求めるなら何かを捨てる覚悟が必要だと僕は思うよ。……僕が仲間を守るために地上を捨てたようにね」
最後の言葉が気になったけど、聞かない方がいいだろう。

「そうですか。また相談に乗ってもらっていいですか?」

「もちろんだよ。あと僕からのお願い兼アドバイス。もっとステータスを上げるといいよ。レベルを上げる以外でもステータスを上げる方法はあるでしょ?もっと強くなって楽しませてよね。僕のことは置いておいても、ステータスが上がれば出来る事は増えるはずだよ」

「わかりました。考えてみます」

「うん、楽しみにしているよ」
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