2 / 18
02 勇者の手紙(一)
×××××××××××××××××××××××××××××××
《選ばれし者の剣》
アトスに伝わる聖剣。選ばれし勇者にしか手にすることは出来ず、魔王を唯一傷つけることのできる武器。主が居ないときは王都の主神殿に預けられる。
四年周期で勇者選定式が行われ、アトスの成年男子は生涯に一度は必ず選定に挑まねばならない。
×××××××××××××××××××××××××××××××
親愛なるエーファへ
王都は人が多くて疲れます。お察しの通り、一度迷子になってしまいました。この年で情けない。
荷物が大変そうなご婦人と、道に迷っているところを助けて頂いた娘さんと知り合いましたが、別にフラグなどは立てていません。おかしな心配はしないでください。
選定式の前に買った土産が無事届いてほっとしています。出来れば自分で渡したかったのですが、すでにご存じの通りの訳で、しばらくは帰れそうにありません。
髪飾りですが、それは君のために俺が選んだのだから、余計な気を回さずに使ってもらえるとうれしい。
あと、髪飾りのことがなくても戸締まりはきちんとしなさい。すぐに駆けつけられる距離に俺がいるわけではないので、気をつけて。くれぐれも、過剰防衛にはならないように。半分の半分くらいで勘弁してやることです。
一緒に選定式に来た皆は、この手紙が届く頃には村に帰っているだろうから、選定式の詳しいことは彼らが話すと思うけれど――マジだ。大マジだ。
根性なしのこの聖剣がうっかり俺なんかに抜かれたもんだから、もう大変だったんだよ……。
怪しいなと思ったときに抜けないふりでもすればよかったと後悔しきりだ。本当なら今ごろ村に帰って……ああくそ、とっとと魔王ぶっ飛ばして帰る!
と、俺としてはすぐさま旅に出るつもりだったんだが、陛下の野郎が激励会を! とか神殿長のメタボが加護の儀式を! とか言い出しやがってまだ城だよ。
おう、城だぞ城。城の一室に滞在中ですよ。騎士だの侍女だのあちこちに人がいてウゼエ。聖剣に呪われてるんだから逃げねえっつうの。
田舎モンだからウカツに出歩けないしよ。迷子は一度で十分だ。城、アホみてえに広いんだよ。
で、パーティーやらお祈りやらの合間合間に魔王討伐のメンバーを決めているらしいんだが、これがまた辛気くさいのなんの。足手まといだから口ばっかりの貴族の坊っちゃんやら実戦経験が乏しい神官なんていらないんだが。
あと一日待ってまだ決まらないようなら勝手に出発しようと思っている。何なら、城下で冒険者雇ってもいいしな。
そうそう、勇者には給料は出ないが、支度金や援助として金貨50000枚頂いたぞ。その日にギルドの金庫に預けておいた。いまいち神殿は信用出来ないっぽい。使い慣れているところの方がいいだろ。
締まり屋のエーファが金に困ることはないだろうが、もし何か入り用のことがあれば多少は使ってもいいぞ。暗証番号は知っているだろ?
ああ、そうだ薬助かった! 城の飯旨いんだけど量は多いわ味は濃いわで胃薬貰ったらまんまと中ったよ……。また送って。
もう王宮料理はいいや、エーファの野菜シチューが食いたい。
水の月十七日 すでにうんざりクロードより
あなたにおすすめの小説
〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。
藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。
どうして、こんなことになってしまったんだろう……。
私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。
そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した……
はずだった。
目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全11話で完結になります。
我慢しないことにした結果
宝月 蓮
恋愛
メアリー、ワイアット、クレアは幼馴染。いつも三人で過ごすことが多い。しかしクレアがわがままを言うせいで、いつもメアリーは我慢を強いられていた。更に、メアリーはワイアットに好意を寄せていたが色々なことが重なりワイアットはわがままなクレアと婚約することになってしまう。失意の中、欲望に忠実なクレアの更なるわがままで追い詰められていくメアリー。そんなメアリーを救ったのは、兄達の友人であるアレクサンダー。アレクサンダーはメアリーに、もう我慢しなくて良い、思いの全てを吐き出してごらんと優しく包み込んでくれた。メアリーはそんなアレクサンダーに惹かれていく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた
アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。
高校生くらいから何十回も告白した。
全て「好きなの」
「ごめん、断る」
その繰り返しだった。
だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。
紛らわしいと思う。
彼に好きな人がいるわけではない。
まだそれなら諦めがつく。
彼はカイル=クレシア23歳
イケメンでモテる。
私はアリア=ナターシャ20歳
普通で人には可愛い方だと言われた。
そんなある日
私が20歳になった時だった。
両親が見合い話を持ってきた。
最後の告白をしようと思った。
ダメなら見合いをすると言った。
その見合い相手に溺愛される。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
俺の可愛い幼馴染
SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。
ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。
連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。
感想もご自由にどうぞ。
ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。