彼女と勇者と往復書簡

深月織

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04 勇者の手紙(二)

 
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《勇者の従者》
魔王討伐に付き従う、勇者の補助役。大抵、法術士である神官、攻も守もこなせる武官、治癒術の使える白魔術士、精霊と通づる精霊術士が選ばれる。
魔王に対することができるのは勇者のみなので、その他の折衝、交渉、露払いをこなすことが役目。

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親愛なるエーファへ

 現在、ルッキスの宿でこれを書いています。そういえば、無理矢理拉致されて魔獣の山の中に放置された修行から十年立つんですね。人生であの三ヶ月ほど死んだ日々はないので、魔王討伐など昼飯前です。いえ、油断はしませんが。気を抜いた瞬間どこからか師匠が岩を投げてきそうで、常に臨戦態勢を保っています。あのジジイこそ真の魔王だと思います。
 エーファが手紙を書いてくれるお陰で、遠く離れた地でもあまり寂しさは感じません。目覚めのボディプレスがないのは物足りないけれど、なんとか起きています。それから、忙しい君の手を煩わせるのも悪いので、魔窟を片付けていただくのは謹んで辞退します、と言っておきます。エロ本なんて隠していません。屋根裏にも壁の中にもベッドの下にも隠してないので破壊するまで家捜しするのはやめてくださいお願いします泣くぞ。
 届けてくれた酒も、ありがとう。大事に飲む。薬のことだけれど、予備があれば二日酔いの薬をまた送ってください。町や村へ寄るたびに、そこの有力者から酒宴に招かれて少し辟易ぎみなんだ。……だから俺は一人で旅に出たかったっつうのにクソ。
 エーファがお訊ねの王国通信の写真についてですが、お察しの通り、あれは俺ではありません。写真が撮られたとき、俺はすでに王都から南の街に到着していたから。多分、対外的に格好をつけるために似たような人物を身代わりにしたんじゃないかな? ご苦労様だね。華々しく出発して欲しかったんだろうが、いい加減面倒なのでとっとと城抜け出したあとでした。
 ついでだからギルドで二、三簡単な依頼をこなしながら進んでいたんだが、二つ目の街を通過したときにお仲間さんに追いつかれた。現在一緒に移動中。ウゼエ。マジウゼエ。あいつらいるだけで目立つのなんの。こっそり魔王んとこまで行ってさっくり殺ってトンズラするつもりが、あいつらのせいでいちいち足止め食らってスピードが落ちたわ。マジウゼエ。無駄に美男美女、ぜってぇ職業間違ってるし。
 面倒なので一言で紹介してやる。神官は鬼畜眼鏡のストーカー。武官は硬派なロリコン。巫女は僕っ子で不思議っ子の二重苦。魔女はクールな天然ボケ。
 ………………エーファが激励するまでもなくすでに死亡フラグが立っているような気がするのは俺だけか。
 一人で旅したい…………。

 村に帰れた野郎共がうらやましい、が、ここでもう一度言っておく。戸締まりはきちんとしろ。前言を撤回するが、手加減しなくていい。人がいない間に怪しい行動をするやつらは剪定鋏でちょん切っていい。俺が許可する。特にロゲールは帰ったら風車小屋の裏に呼び出してやるから覚悟しておけと伝えてくれ。
 王都でのことは、俺が色々話してやるよ。
 あといちいち勇者に(笑)カッコワライつけてんじゃねぇ。

 風の月一日 (あいつら絶対撒いてやる……)クロードより
 
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