彼女と勇者と往復書簡

深月織

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 玉座の間は、彼が数刻前までいた地下に似て、生のない静けさに満ちていた。その場にいるのはただ二人。彼はぐるりと周りを見回したあと、真正面に呆れた視線を向けた。
「わざわざこの場所まで来る必要があったのか?」
 彼の問いかけに、玉座に座った人物は肩を竦める。
「特に場所は関係ないよ、わかりやすくしただけで。ただ、『それ』が目覚めるためには経験が必要だから。邪魔なオマケがいなければ、途中で確かめられたんだけどね」
「ああ……おかげでエライ手間だったよ。どうよ?」
 彼は手にした剣を掲げた。剣の刀身が赤に黒に色を変えて瞬きを返す。領域に入ってからずっとこの調子だった。まるで、眠りと目覚めの狭間にいるかのように。
「どうかな……もうそろそろだと思うんだ。駄目だったとしても、いつも通りに力を引き上げるだけだし、――――」
 剣の名を呼ぶ。赤い輝きが力を増したかのように見えたが、またすぐ収縮する。
 ふ、と瞳に寂しげな色を過らせ、青年は首を振る。
「お願いするよ。ちょっと大変かもしれないけどね」
「今更。俺とお前の仲だろ」
 彼の軽口に、ゆったり立ち上がった玉座の人物は肩を揺らす。
「そんなこと言ったら大事な彼女が誤解するんじゃない?」
「……てめえ、ありそうなこと言うな」
 いつまでたっても、こちらの真意をわかってくれない幼なじみを思って渋面になった彼は、剣を構え直した。

 
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