ヒロインかもはみだし番外編集

深月織

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一年目◆秋 【紅葉狩りだよ鈴鹿ちゃん】

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「あたし、ちっちゃい頃ねえ、紅葉狩りのことを、“もみじまんじゅう食べ放題”のことだと思ってたんだ」

 秋晴れの休日。
 同期のみんなで車を借りて、郊外までドライブをすることになった。
 二台に別れて車に乗り込み、到着地のキャンプ場ではバーベキューをする予定だ。
 山の中に入るにつれ、緑の中に黄橙、鮮やかな赤が混じるのを楽しみながら、のんびりと車を走らせて、他愛もない会話を交わし。
 ふと、助手席の窓にへばりついて外を眺めていた木内が、クルリと振り向いたかと思ったら、相も変わらず阿呆なことを発言した。
 やめろ笑かすな。ハンドル操作誤るだろうが。
「お父さんが休みの日に、よし、紅葉狩りに行くか! って言って、出掛けることになって、ウキウキしながらついてったの。いろいろな味食べたいから、弟と、半分こずつしようねー、とか言ってさ」
 弟まで間違った知識に巻き込んでいたのか。
 堪えきれなかった数人が肩を震わせ始める。
「なのに、いつまでたってもまんじゅう屋さんには着かないし、何故か山ん中ズンズン入って行くし、え~、お父さん、紅葉狩り(イコールもみじまんじゅう食べ放題)は~? って文句言ったら、」

 ――ん? ほれ紅葉。
 ちび木内をヒョイと抱き上げて、父親が目の前に差し出したのは――紅く色づいた手のひらの形の葉。
「葉っぱかよ! て、弟と二人でブーイングだよ!」
 みんなの限界はそこまでだった。

 乗員6名のワゴン車は、木内を除く全員の爆笑で揺れた。
 いや、俺は爆笑とまでは行かなかったが。運転してるしな。我慢しましたよ。
 尚も俺の腹筋を試すかのような木内の思い出話は続く。
「しかも紅葉狩りの意味が解ってなかったのか、なんてお父さん言ってさ、帰ったら勉強させられるしー。だってイチゴ狩りもブドウ狩りもナシ狩りも食べ物じゃん! 紅葉もそうだと思うでしょ!」
 少なくとも“もみじまんじゅう食べ放題”だとは思わないだろう。
「この話にはオマケがあって、紅葉狩りが本物の紅葉だとしたら、紅葉おろしは紅葉のすりおろしたのが入ってるんだ! って更に間違った知識があたしの中にインプットされちゃったんだよね……」
 やめろ腹筋が! 腹筋が痛ぇ!
「紅葉って辛いのかー、だから赤いんだー、って、かなり長いこと誤解してたよ」
 しみじみ言うな!
 腕を組んで頷きながら話を締めくくった木内に、全員息も絶え絶えに座席や隣の者の肩をバシバシ叩いていた。
「も、もう勘弁して鈴ちゃん……」
「たしかに、紅葉狩りだけ違うけども!」
「な、長いことって……いつまで?」
 やめとけばいいのに、そう訊ねたヤツにきょとりと目を瞬いて、木内は答える。
「中3くらい?」
「……っ、……っ、……っ!」
 気持ち悪いから声に出して笑え、みんなー。
 もぉ、笑いすぎだよみんなー、と頬をふくらませた木内がのんきな声を出して。
 何とか事故らずに目的地に着いたときには、こちらの車に乗っていたみんなは笑いすぎで疲労困憊だった。
 腹筋イテェ。


(初出:2010/12/19)
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