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雪の降る午後にナタリーはやって来た。
「こんな寒い日に来るなんて、ナタリーも風邪ひくわよ」
「今夜雪が高く積もりそうね。早く帰るわ」
「お見舞いありがとう。すっかり元気よ」
「肺炎だなんて、やっぱりクレアは普通の体じゃないわね」
ナタリーは昔から私を病弱だと言い続けている。
実際わたしは弱い体ではあるが『普通の体じゃない』は少々カチンと来た。
「病弱でなければクロード様とお付き合い出来たかもしれないわね」
「・・・クレアはお店の後継者でしょ?クロード様は婿入りしてもいいそうよ」
「あの方は騎士になりたいのよ。邪魔したくないわ」
全く、婿入りまで二人で話し合ってるのね、本人抜きで。
「それに私は後継者は辞退するわ。病弱だもの」
「え、そうなの? クレアはお店一筋だと思ってたわ」
今回店を守ったのはマックスさんや従業員の為で『愛されたくて』死神さんが過去に連れてきてくれたのよ。(夢が覚めたら消えちゃうけどね)
「えーっと、今日はね、カフェの外でアスラン様に声を掛けていたでしょう? 実はあれが気になっていたの。クレアは親しいの?」
「親しくなんかないわ。事件の事を聞いていただけよ。まさか貴方アスラン様の事も好きだなんて言わないわよね」
「そんなんじゃないわ。クレアはアスラン様の事知らないの?」
「何を?」
「あの方ローラング侯爵家の次男よ」
「なんで警備隊に・・・王宮騎士になれそうなのに」
「あの方は第一王子殿下の側近だったの、でも殿下の不敬を買ってお顔を切り付けられたのよ。それで侯爵家はアスラン様を家から追い出したの」
「知らなかったわ。酷い話ね」
「2年前に王族の婚約破棄事件があったわよね」
「それは知ってるわ。公爵家のご令嬢と第一王子殿下ね」
「そそ、第一王子殿下が浮気したのよ。それを諫めたのがアスラン様」
「アスラン様は悪くないじゃない」
その後、陛下の怒りを買った第一王子殿下は他国に婿入りさせられて、第二王子殿下のエドガー様が王太子候補だ。今は王立学園に通われてセシリーも追っかけをしていたが相手にされなかった。ローラング侯爵令嬢ロザリア様はエドガー王子殿下の婚約者候補となっているそうだ。
「侯爵家はアスラン様を家に戻そうとしているけど、拒否されてるのよ」
「ふーん そうなのね」
「クレアはアスラン様とは関係ないのね?」
「あるわけないじゃない、むしろ悪い噂のせいで嫌われていたわ」
「あらまぁ」とナタリーは嬉しそうな顔をした。
矜持の高いナタリーは私が侯爵家の次男と付き合うのは許せないのだろう。
常識で考えてありえない話なのに。
「スッキリしたから帰るわね。ねぇ、お茶がぬるかったわよ。いい茶葉使ってるのに勿体ないわね」
「男爵家だからいいメイドを雇えないの、悪かったわね」
「ふふふ、教育しないとダメよ」
ナタリーはご機嫌で帰っていった。
ご令嬢達のお茶会にも参加しているのにナタリーは積極的に私の悪評を訂正してくれなかったわ。
学園でもそう、前回の私は特に気にしていなかった。
所詮は噂でいつか消えるだろうし、ナタリーが好きだったから彼女がいればいいと思っていた。
私の噂はクロードと結婚したら消えていったけど、クロードとミモザ様との噂は消えずに細々と続いたわね。ナタリーが操作していたのかもしれない。
「ところで私の愛されたい願望はどうなってるの? 今の所は候補者がいないのですけれど?」
「お元気になられましたね。候補者はご自分で探してください」
いつの間にか死神は部屋のソファーに座っていた。
「はぁ~ 共学の王立学園に通えば良かったかしら。出会いが無さ過ぎるわ」
「世界は広い。もっと視野を広げれば良いのですよ」そう言って消えた。
「世界は広いか・・・そうね私の世界は狭すぎたわね」
でもどうやって広げたらいいのか分からない。
とりあえず出来る事からやるしかないわね。
「こんな寒い日に来るなんて、ナタリーも風邪ひくわよ」
「今夜雪が高く積もりそうね。早く帰るわ」
「お見舞いありがとう。すっかり元気よ」
「肺炎だなんて、やっぱりクレアは普通の体じゃないわね」
ナタリーは昔から私を病弱だと言い続けている。
実際わたしは弱い体ではあるが『普通の体じゃない』は少々カチンと来た。
「病弱でなければクロード様とお付き合い出来たかもしれないわね」
「・・・クレアはお店の後継者でしょ?クロード様は婿入りしてもいいそうよ」
「あの方は騎士になりたいのよ。邪魔したくないわ」
全く、婿入りまで二人で話し合ってるのね、本人抜きで。
「それに私は後継者は辞退するわ。病弱だもの」
「え、そうなの? クレアはお店一筋だと思ってたわ」
今回店を守ったのはマックスさんや従業員の為で『愛されたくて』死神さんが過去に連れてきてくれたのよ。(夢が覚めたら消えちゃうけどね)
「えーっと、今日はね、カフェの外でアスラン様に声を掛けていたでしょう? 実はあれが気になっていたの。クレアは親しいの?」
「親しくなんかないわ。事件の事を聞いていただけよ。まさか貴方アスラン様の事も好きだなんて言わないわよね」
「そんなんじゃないわ。クレアはアスラン様の事知らないの?」
「何を?」
「あの方ローラング侯爵家の次男よ」
「なんで警備隊に・・・王宮騎士になれそうなのに」
「あの方は第一王子殿下の側近だったの、でも殿下の不敬を買ってお顔を切り付けられたのよ。それで侯爵家はアスラン様を家から追い出したの」
「知らなかったわ。酷い話ね」
「2年前に王族の婚約破棄事件があったわよね」
「それは知ってるわ。公爵家のご令嬢と第一王子殿下ね」
「そそ、第一王子殿下が浮気したのよ。それを諫めたのがアスラン様」
「アスラン様は悪くないじゃない」
その後、陛下の怒りを買った第一王子殿下は他国に婿入りさせられて、第二王子殿下のエドガー様が王太子候補だ。今は王立学園に通われてセシリーも追っかけをしていたが相手にされなかった。ローラング侯爵令嬢ロザリア様はエドガー王子殿下の婚約者候補となっているそうだ。
「侯爵家はアスラン様を家に戻そうとしているけど、拒否されてるのよ」
「ふーん そうなのね」
「クレアはアスラン様とは関係ないのね?」
「あるわけないじゃない、むしろ悪い噂のせいで嫌われていたわ」
「あらまぁ」とナタリーは嬉しそうな顔をした。
矜持の高いナタリーは私が侯爵家の次男と付き合うのは許せないのだろう。
常識で考えてありえない話なのに。
「スッキリしたから帰るわね。ねぇ、お茶がぬるかったわよ。いい茶葉使ってるのに勿体ないわね」
「男爵家だからいいメイドを雇えないの、悪かったわね」
「ふふふ、教育しないとダメよ」
ナタリーはご機嫌で帰っていった。
ご令嬢達のお茶会にも参加しているのにナタリーは積極的に私の悪評を訂正してくれなかったわ。
学園でもそう、前回の私は特に気にしていなかった。
所詮は噂でいつか消えるだろうし、ナタリーが好きだったから彼女がいればいいと思っていた。
私の噂はクロードと結婚したら消えていったけど、クロードとミモザ様との噂は消えずに細々と続いたわね。ナタリーが操作していたのかもしれない。
「ところで私の愛されたい願望はどうなってるの? 今の所は候補者がいないのですけれど?」
「お元気になられましたね。候補者はご自分で探してください」
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「はぁ~ 共学の王立学園に通えば良かったかしら。出会いが無さ過ぎるわ」
「世界は広い。もっと視野を広げれば良いのですよ」そう言って消えた。
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でもどうやって広げたらいいのか分からない。
とりあえず出来る事からやるしかないわね。
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