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11 クロードの求婚
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店を襲った強盗団の黒幕も義母の関りも分からないまま日々は過ぎて行った。
1度だけアスラン様が私に声を掛けて下さったが、元気そうな私を見て安心したのかそれっきりだ。
毎日警備隊員が商店通りの見回りをしてくれている。
度々アスラン様も見かけたがロザリア様の牽制もあったので、恐れ多くて迂闊に話しかけられなかった。
***
その日は父の執務室に呼ばれていた。
「ハリソン子爵家からクレアに縁談がきている」
「お断りしてください」
「婿入りしてもいいと申し出てくれてるぞ。良縁じゃないかお受けしなさい」
クロードは浮気をした以外は素晴らしい人だった、感謝もしてる。
でも人妻のナタリーを抱いたのよ。気持ち悪い。
「クロード様は騎士志望なの。お断りしてお詫びに私の籍を抜いて下さい」
「何を言ってるんだ。 ────私はお前が分からないよ」
「分からないのはお父様の方だわ。あんな人を後妻にして!」
「クレア!」
「新しい家族と仲良く暮らして下さい。私は一人で生きていきます」
「ああもういい。部屋に戻っていなさい」
部屋に戻ればクロードから明日の午後に訪問したいと先ぶれの手紙が来ていた。
「縁談の話ね。きっぱり断るわ」
モテるんだから私なんかよりも素敵な女性を選べるはずよ。
何かナタリーに吹き込まれているのかしら。
私達夫婦はナタリーに間違った潜在意識を植え付けられていた。
どうして信じていたのかしら。
惨めだわ・・・
***
翌日訪れたクロードは真っ赤な薔薇の花束を抱えてやって来た。
真っ直ぐな瞳に思わず心が揺らいだ。
サロンに案内して私が自らお茶の用意をしていると──
「クロード様!お待ちしていました」
バタバタとセシリーが着飾って突撃してきた。
お喋りなメイドから聞いたのね。
「貴方のお客様じゃないわ。出て行きなさい」
「酷いわお姉様。いつも意地悪ばかり言って虐めるんですよ~」
同じ王立学園の1年先輩だけどセシリーの悪評はクロードも知ってるのよ。
「あ、申し訳ないが大事な話があるので退室願いたい」
「二人っきりなんてダメですわ。私もご一緒します!」
「扉を開けておくから大丈夫よ。なんなら廊下で立ってなさい」
そう言って扉を開けるとミリアが立っていた。
「はぁ~もう 何をしてるのよ」
諦めてクロードが「今日はクレア嬢にプロポーズをしに来た」と告白した。
「なんですって!」叫んだのはセシリーだ。
「もしよければ婿入りしても構わないと思っている」
「父からお話は聞いています。でも私は家を出て平民になりたいのです」
「平民?・・・ならば騎士の妻になってくれないだろうか」
貴方が前回浮気してなきゃ喜んで受けたわよ。
私が淋しい思いをしている時に貴方はナタリーと寝ていたんだわ。
「それはナタリーが望んでいるからですか」
「いや、俺の望みだ。ナタリー嬢が何を望んでも関係ないが?」
「申し訳ないですが、お断りします」
「そうか、・・・ダメなのか」
ああ、そんな傷ついた顔をしないで欲しい。
クロード、心から貴方を愛していたのよ。
「はぁ?なんですって!」
「セシリーには関係ないでしょう、下がってなさい」
「ばかねぇこんな優良物件を・・・私が貰ってあげるわ!」
「妹のミリアです。クロードさま私ではいけませんか? お店も継ぎたいからお婿さんになって欲しいです。」
「ミリアも部屋に戻っていなさい!」
「姉は病弱なので子どもが産めないんです!」
パァ────ン 思わずセシリーの頬を打った。
「2回よ!子どもが出来ても過労でわたしは・・うぅぅ」
「いたぁぁぁい! お姉様が殴ったぁぁぁ!」
「ひどい!クレアおねえさまは意地悪なんですよ。クロードさま」
三姉妹の修羅場にクロードは呆気にとられていたが────
やがて我に返って「クレア嬢、今日のところは失礼するよ」そう言って帰って行った。
その夜また父の執務室に呼ばれた。
「ハリソン子爵家の縁談は断るんだね?後悔しないね?」
「はい、後悔はありません」
「わかった」
父は片手でこめかみを押さえながら「セシリーを殴ったそうだね。お前らしくもない」と私を非難した。
「子どもが産めないって・・・許せない、私がどんなに苦しんだか」
「暴力はいけないよ、セシリーに謝りなさい」
「この家と縁を切ってくれるなら謝ります。娘が増えたから私はいらないでしょう?」
「はぁ~ どうしてしまったんだいクレア」
「それはお父様の事だわ。あんな女を後妻にして」
「っ!」
「今殴ろうとしましたね。私はあんな人たちを家族と認めません」
「いい加減にしないか!」
「私・・・好きな人がいるんです。だからクロード様は断って下さい。籍を抜いて私を追い出して!」
私を睨む父とは分かり合えない。
私を無視して再婚した時点で父も義母の側なのだから。
1度だけアスラン様が私に声を掛けて下さったが、元気そうな私を見て安心したのかそれっきりだ。
毎日警備隊員が商店通りの見回りをしてくれている。
度々アスラン様も見かけたがロザリア様の牽制もあったので、恐れ多くて迂闊に話しかけられなかった。
***
その日は父の執務室に呼ばれていた。
「ハリソン子爵家からクレアに縁談がきている」
「お断りしてください」
「婿入りしてもいいと申し出てくれてるぞ。良縁じゃないかお受けしなさい」
クロードは浮気をした以外は素晴らしい人だった、感謝もしてる。
でも人妻のナタリーを抱いたのよ。気持ち悪い。
「クロード様は騎士志望なの。お断りしてお詫びに私の籍を抜いて下さい」
「何を言ってるんだ。 ────私はお前が分からないよ」
「分からないのはお父様の方だわ。あんな人を後妻にして!」
「クレア!」
「新しい家族と仲良く暮らして下さい。私は一人で生きていきます」
「ああもういい。部屋に戻っていなさい」
部屋に戻ればクロードから明日の午後に訪問したいと先ぶれの手紙が来ていた。
「縁談の話ね。きっぱり断るわ」
モテるんだから私なんかよりも素敵な女性を選べるはずよ。
何かナタリーに吹き込まれているのかしら。
私達夫婦はナタリーに間違った潜在意識を植え付けられていた。
どうして信じていたのかしら。
惨めだわ・・・
***
翌日訪れたクロードは真っ赤な薔薇の花束を抱えてやって来た。
真っ直ぐな瞳に思わず心が揺らいだ。
サロンに案内して私が自らお茶の用意をしていると──
「クロード様!お待ちしていました」
バタバタとセシリーが着飾って突撃してきた。
お喋りなメイドから聞いたのね。
「貴方のお客様じゃないわ。出て行きなさい」
「酷いわお姉様。いつも意地悪ばかり言って虐めるんですよ~」
同じ王立学園の1年先輩だけどセシリーの悪評はクロードも知ってるのよ。
「あ、申し訳ないが大事な話があるので退室願いたい」
「二人っきりなんてダメですわ。私もご一緒します!」
「扉を開けておくから大丈夫よ。なんなら廊下で立ってなさい」
そう言って扉を開けるとミリアが立っていた。
「はぁ~もう 何をしてるのよ」
諦めてクロードが「今日はクレア嬢にプロポーズをしに来た」と告白した。
「なんですって!」叫んだのはセシリーだ。
「もしよければ婿入りしても構わないと思っている」
「父からお話は聞いています。でも私は家を出て平民になりたいのです」
「平民?・・・ならば騎士の妻になってくれないだろうか」
貴方が前回浮気してなきゃ喜んで受けたわよ。
私が淋しい思いをしている時に貴方はナタリーと寝ていたんだわ。
「それはナタリーが望んでいるからですか」
「いや、俺の望みだ。ナタリー嬢が何を望んでも関係ないが?」
「申し訳ないですが、お断りします」
「そうか、・・・ダメなのか」
ああ、そんな傷ついた顔をしないで欲しい。
クロード、心から貴方を愛していたのよ。
「はぁ?なんですって!」
「セシリーには関係ないでしょう、下がってなさい」
「ばかねぇこんな優良物件を・・・私が貰ってあげるわ!」
「妹のミリアです。クロードさま私ではいけませんか? お店も継ぎたいからお婿さんになって欲しいです。」
「ミリアも部屋に戻っていなさい!」
「姉は病弱なので子どもが産めないんです!」
パァ────ン 思わずセシリーの頬を打った。
「2回よ!子どもが出来ても過労でわたしは・・うぅぅ」
「いたぁぁぁい! お姉様が殴ったぁぁぁ!」
「ひどい!クレアおねえさまは意地悪なんですよ。クロードさま」
三姉妹の修羅場にクロードは呆気にとられていたが────
やがて我に返って「クレア嬢、今日のところは失礼するよ」そう言って帰って行った。
その夜また父の執務室に呼ばれた。
「ハリソン子爵家の縁談は断るんだね?後悔しないね?」
「はい、後悔はありません」
「わかった」
父は片手でこめかみを押さえながら「セシリーを殴ったそうだね。お前らしくもない」と私を非難した。
「子どもが産めないって・・・許せない、私がどんなに苦しんだか」
「暴力はいけないよ、セシリーに謝りなさい」
「この家と縁を切ってくれるなら謝ります。娘が増えたから私はいらないでしょう?」
「はぁ~ どうしてしまったんだいクレア」
「それはお父様の事だわ。あんな女を後妻にして」
「っ!」
「今殴ろうとしましたね。私はあんな人たちを家族と認めません」
「いい加減にしないか!」
「私・・・好きな人がいるんです。だからクロード様は断って下さい。籍を抜いて私を追い出して!」
私を睨む父とは分かり合えない。
私を無視して再婚した時点で父も義母の側なのだから。
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