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16 寮にきました
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バーンズ男爵家が大変な事になっている最中に私は寮にやって来た。
なんて薄情な娘だろう。でも捨てたのは父だ。
カイトは『用があれば連絡して、いつでも会いに来る』と別れ際に言ってくれたが、いつまでも彼に甘えるわけにはいかない。サーレン夫人も望まないだろう。
彼は大事な一人息子だ。前回なぜミリアとの婚姻を夫人が許可したのかは謎だったが、策士の夫人は離婚を見越していたのではないか?それで慰謝料をたっぷり取られた・・・なんて考え過ぎだろうか。
古い木造の建物は階段もギシギシと音をたてて床板を踏み抜きそうだ。
寮母さんはふっくらした年配のシスターで優しそうに見える。
与えられた部屋に入ると4人部屋をカーテンで仕切られ、ベッドと机に棚とロッカー、小さな窓には鉄枠がしてあった。
どうやら一番乗りのようだ。ベッドに彫られた番号を確かめて私は荷物を解き始めた。
「復讐を果たした気分はいかがですか?」
「うっ、人聞きの悪いことを言わないで下さる。急に現れると心臓に悪いわ」
神出鬼没な死神に毎度驚かされる。
「ふふ、失礼しました。顔色も良くなりましたね」
「ええ、体は軽いわ」
「そうでしょうね、貴方は毒を盛られていましたから」
「へぁえ? 知っていたなら教えてよ!」
「自室で夕飯を召し上がった時だけ少々盛られていたのですよ」
「シャーリーね。いつから盛られてたの?」
「今はまだ、気にする程ではありませんよ。ではごきげんよう」
少量だとしても毒でしょう?納得いかないわ。
一度医者に検査してもらおうかしら。
暫くしてノックがあって、入ってきた人物を見て驚いた。
天使のように美しい人── 銀色の長い髪、バイオレットの瞳に魅入ってしまった。
セシリーも美人だったが比ではない。
ただ、背が高くて肩幅も女性にしては広い。
「初めましてノエルです」
そう言うと自分のテリトリーに入るなりシャーーッとカーテンを引いた。
「クレアです。よろしくお願いします」
返事は無かった。
しまった~不躾に見過ぎてしまったわね。
後で知ったのだがノエル様は第一王子の元婚約者だったお方。
殿下よりも体格が大きかった為に婚約破棄されたと巷の噂だ。
婚約を破棄されてノエル様は公爵家から除籍されたという理不尽な話。
アスラン様といいノエル様といい高位貴族のお家事情は理解できないわね。
後からきた二人は近郊の街の商家の娘さんでメアリーとスーザン。
三人で直ぐに仲良くなれたけどノエル様は殆ど顔を見せず静かに過ごしていた。
平民の教育は職業訓練みたいなものだった。
他にも計算や各国共通語の時間もあったが前回勉強済みだ。
週3回調理の授業もあって夕飯の支度を全員で行うのは楽しかった。
ノエル様は特別に読書コースを設けられて、いつも図書室で読書をされていた。
元貴族なので平民の生徒にすれば煙たいのかもしれない。
なので私も読書コースを希望したら学園に渋々受け入れられた。
その後、除籍コンビと生徒たちに揶揄されていたらしい。
前回死ぬほど苦労して働いたので今回は投資でもして財産を増やそうと思う。
死神さんに許されるなら50年の経験を生かして経営コンサルタントを目指すのもいいわね。
貴族のご令嬢達が図書室に来て時々ノエル様を嘲笑うような態度だったが、彼女は全く気にしていなかった。
離れた場所でノエル様を眺めながら読書するのは至高の時間で、凛とした姿が美しく私が男性なら間違いなく恋をしていただろう。
目が合うとスーッと逸らされ、それでも目が離せなかった。
父からは毎日のように懺悔の手紙が来て鬱陶しい。
マックスさんからも絶えず『戻って欲しい』と手紙が来て断りの返事を出していた。
アスラン様にはお礼のお手紙を出した。
『仕事なのでお気になさらず。第二警備隊長の指示で動いていただけです』という素っ気ない内容と『寮に入ったから安心した』とも書かれていて嬉しくなった。
セシリーとミリアは子爵の親類に大金を払って引き取ってもらったようだ。
二人は最後までバーンズ家に残りたいと泣き喚いて難儀したとか。
全く信じられない事にセシリーはお父様の妻になりたいとまで言ったそうだ。
即刻、追い出されたらしいがお父様の頭がまだ正常で良かった。
週末は帰宅を許されて他の三人はいそいそと帰宅していた。
私は父が会いに来そうなので戻らない。
寮生活も1か月が過ぎると、番頭のマックスさんから『嬉しい知らせがあるから会いたい』と手紙が来たので、近くのカフェで会うことになった。
なんて薄情な娘だろう。でも捨てたのは父だ。
カイトは『用があれば連絡して、いつでも会いに来る』と別れ際に言ってくれたが、いつまでも彼に甘えるわけにはいかない。サーレン夫人も望まないだろう。
彼は大事な一人息子だ。前回なぜミリアとの婚姻を夫人が許可したのかは謎だったが、策士の夫人は離婚を見越していたのではないか?それで慰謝料をたっぷり取られた・・・なんて考え過ぎだろうか。
古い木造の建物は階段もギシギシと音をたてて床板を踏み抜きそうだ。
寮母さんはふっくらした年配のシスターで優しそうに見える。
与えられた部屋に入ると4人部屋をカーテンで仕切られ、ベッドと机に棚とロッカー、小さな窓には鉄枠がしてあった。
どうやら一番乗りのようだ。ベッドに彫られた番号を確かめて私は荷物を解き始めた。
「復讐を果たした気分はいかがですか?」
「うっ、人聞きの悪いことを言わないで下さる。急に現れると心臓に悪いわ」
神出鬼没な死神に毎度驚かされる。
「ふふ、失礼しました。顔色も良くなりましたね」
「ええ、体は軽いわ」
「そうでしょうね、貴方は毒を盛られていましたから」
「へぁえ? 知っていたなら教えてよ!」
「自室で夕飯を召し上がった時だけ少々盛られていたのですよ」
「シャーリーね。いつから盛られてたの?」
「今はまだ、気にする程ではありませんよ。ではごきげんよう」
少量だとしても毒でしょう?納得いかないわ。
一度医者に検査してもらおうかしら。
暫くしてノックがあって、入ってきた人物を見て驚いた。
天使のように美しい人── 銀色の長い髪、バイオレットの瞳に魅入ってしまった。
セシリーも美人だったが比ではない。
ただ、背が高くて肩幅も女性にしては広い。
「初めましてノエルです」
そう言うと自分のテリトリーに入るなりシャーーッとカーテンを引いた。
「クレアです。よろしくお願いします」
返事は無かった。
しまった~不躾に見過ぎてしまったわね。
後で知ったのだがノエル様は第一王子の元婚約者だったお方。
殿下よりも体格が大きかった為に婚約破棄されたと巷の噂だ。
婚約を破棄されてノエル様は公爵家から除籍されたという理不尽な話。
アスラン様といいノエル様といい高位貴族のお家事情は理解できないわね。
後からきた二人は近郊の街の商家の娘さんでメアリーとスーザン。
三人で直ぐに仲良くなれたけどノエル様は殆ど顔を見せず静かに過ごしていた。
平民の教育は職業訓練みたいなものだった。
他にも計算や各国共通語の時間もあったが前回勉強済みだ。
週3回調理の授業もあって夕飯の支度を全員で行うのは楽しかった。
ノエル様は特別に読書コースを設けられて、いつも図書室で読書をされていた。
元貴族なので平民の生徒にすれば煙たいのかもしれない。
なので私も読書コースを希望したら学園に渋々受け入れられた。
その後、除籍コンビと生徒たちに揶揄されていたらしい。
前回死ぬほど苦労して働いたので今回は投資でもして財産を増やそうと思う。
死神さんに許されるなら50年の経験を生かして経営コンサルタントを目指すのもいいわね。
貴族のご令嬢達が図書室に来て時々ノエル様を嘲笑うような態度だったが、彼女は全く気にしていなかった。
離れた場所でノエル様を眺めながら読書するのは至高の時間で、凛とした姿が美しく私が男性なら間違いなく恋をしていただろう。
目が合うとスーッと逸らされ、それでも目が離せなかった。
父からは毎日のように懺悔の手紙が来て鬱陶しい。
マックスさんからも絶えず『戻って欲しい』と手紙が来て断りの返事を出していた。
アスラン様にはお礼のお手紙を出した。
『仕事なのでお気になさらず。第二警備隊長の指示で動いていただけです』という素っ気ない内容と『寮に入ったから安心した』とも書かれていて嬉しくなった。
セシリーとミリアは子爵の親類に大金を払って引き取ってもらったようだ。
二人は最後までバーンズ家に残りたいと泣き喚いて難儀したとか。
全く信じられない事にセシリーはお父様の妻になりたいとまで言ったそうだ。
即刻、追い出されたらしいがお父様の頭がまだ正常で良かった。
週末は帰宅を許されて他の三人はいそいそと帰宅していた。
私は父が会いに来そうなので戻らない。
寮生活も1か月が過ぎると、番頭のマックスさんから『嬉しい知らせがあるから会いたい』と手紙が来たので、近くのカフェで会うことになった。
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