最後に愛してくれる人を探したい

ミカン♬

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17 ミハイルとの再会 

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 寮の門を出るとマックスさんと、なんと!彼の長男のミハイルが一緒にいた。
 彼は王立学園を卒業後、父が出資して隣国に商売の修行に出ていた。

 前回はバーンズの店が傾き、ミハイルはそのまま隣国の店で働き続けたが、23歳の若さで船の事故で亡くなっている。
 今回は早くこっちに戻るよう私からも相談する予定の矢先だった。

「クレア、3年ぶりだ、綺麗になったね。僕のお姫様」

「ミル兄さんも素敵よ。私の王子様」

 幼い頃、私のお姫様ごっこに付き合ってくれた優しいお兄さんだ。
 現在21歳、金髪を短く刈り上げたイケメンだ。きっと素敵な恋人もいるわね。


「ゲイリーの希望でミルが戻ってバーンズ商店で働くことになったんだよ」
 親子で働けるからか、マックスさんが嬉しそうだ。

「嬉しいわ。お店の事をよろしくお願いします」

「クレアも戻って来るよね? 一緒にお店を盛り立てよう」

「私は戻らないわ。もうお店とは関係ないのよ」

「クレアは頑固な所があったよね。でもきっと戻してみせるよ」

 私は力なく笑顔を返して、ミハイルの熱い視線に戸惑っていた。


「ゲイリーはミルとお嬢さんが一緒になって店を継いで欲しいと思っているんだよ。お嬢さんどうだろう、考えてみてくれないだろうか」

「父さん、いきなりそんな話はクレアも困るよ」

「お前だってお嬢さんをずっと慕っていただろう?」

「そんなんじゃない、妹みたいに思っていたんだ」

「恋人はいないの?学園時代に付き合ってた人がいなかったかしら?」

「隣国に行ったので恋人とは別れたんだ。それからは一人だよ」

「そうだったの・・・ごめんなさい。父はいつも人を困らせるわね」

「いや、修行は僕の希望でもあったんだ。人脈も広がったし、行かせてもらって感謝してるよ」

 マックスさんは前回もミハイルを婿にと希望していた。でも私はクロードを選んだ。
 心が揺れる、前回、目の前の二人を不幸にしてしまった。償うべきなのか。

「そんな困った顔しないで。今日は帰るよ、また会おうねクレア」



 二人と別れて寮の部屋に戻ると男がいた。

「店に戻りますか?」

「前回マックスさん親子は不幸だったわ。今回幸せになって欲しい」

「また自分を犠牲にするのですか?」

「ミル兄さんはいい人よ」

「誰でも裏の顔がありますからね」

「やめて! 聞きたくないわ」

「毒」

「え?・・・毒?」

「ご主人と結婚してからも盛られていたんですよ」

「まさか、離れに二人で住んでいたのよ?」

「ええ、メイドも信頼できる人物でしたね」

「家じゃない、お店?」

「貴方の幸せが許せない人物がいたのですよ」


 死神は腕を伸ばすと私の顔を両手で挟み込んだ。
 その手は凍ったように冷たい。

「お・・・思いつかないわ」

「いいえ、認めたくないだけだ。黒い糸はまだ絡まっています」

「もう消えて! さっさとあの世に送ってよ!」

 私の額にキスをして憐れむような眼差しを注ぎつつ死神は消えた。

 私の予想通りなら、絶対にミハイルとは結婚できない。

「知りたくなかったのに」

 父に手紙を書いた。
 ミハイルを養子にして彼の望む女性と結婚させてあげて欲しいと。
 私には好きな人がいるからミハイルとは結婚しない。
 私は絶対に家にも店にも戻るつもりは無いと 認めしたためて寮内のポストに投函した。


 部屋で横になっていると食事の時間になっていた。
 休日の夕飯は食堂で自由に食事ができる。
 平日は食前に揃って長いお祈りタイムがあるのだ。

「カフェでお見合いしていたの?」昼間の再会をスーザンに見られていた。
「ううん、そんなんじゃないわ」
「元気ないね。そろそろ緊張も解けて疲れが出る時期よね」

「なんだか張り詰めていた気持ちが崩れたの。夕飯はパスするわ」
「少しでも食べた方がいいわ。クレア、食堂に行こう!」

 背を押されて食堂にいくと隅でノエル様がボソボソと食事をしていた。
 1か月彼女をみつめ続けているが時々違和感を感じる。
 私と目が合うと、サッと食事を切り上げて逃げるように食堂を出て行った。

「人見知りが激しいからね。1年の時からあの調子よ」
「声も最近は聞いたことないわね」
「クレアは知らないのか・・・」とスーザンが頭を寄せて来た。

 ノエル様は婚約破棄のショックで記憶を失くして1年間寝込んで治療したが記憶は戻らなかった。
 それで公爵令嬢として生きていけないから除籍されてこの学園寮に放り込まれたと話してくれた

「まぁ お気の毒に知らなかったわ」
「みんな知ってるよ? 除籍と言ってもサウザー公爵家には面倒見て貰ってるんだもん幸せだわ」

 幸せには見えないが、生活には困らない・・・私と同じ。
 寮という檻の中に自身を閉じ込め、外敵から身を守っているのね。

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